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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1868/2220

1851.人間の厄介さを知る大魔王

 シギンに説明を終えた煌阿だが、ふと今の話を聞いてどういった表情をしているかを確認しようと顔を上げてみると、全くその目に自分の姿が入っていないかのように思案を行っているその姿を見て苦笑いを浮かべた。


(コイツは本当に卜部官兵衛の血筋を継いでいるのか? あの卜部と同じ『魔力』を宿してはいるようだが、その性格は全く異なっているどころか、対極に位置しているではないか……)


 直接両方の人間と手を合わせた煌阿は、目の前のシギンという妖魔召士と過去の卜部官兵衛の印象が全く繋がらず、交わりの気薄さすら感じ始めているのだった。


(卜部官兵衛は誠に臆病な人間であったが、ここぞという時に見せたあの気迫だけは侮れなかった。俺達鵺だけではなく、普段は互いに牽制し合うような『翼族』や『鬼人族』達でさえ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だが、この目の前の男はこうして閉じ込められた後も飄々としている。育った環境の違いだけでは血脈というものは簡単には変えられぬ筈だが、その枠にあてはまらぬ特殊な個体だというのだろうか? それともこの状況下にあっても何とか出来る力をひた隠している事による余裕なのだろうか?)


 煌阿はシギンという人間の本質を測り損ねているようで、勝手に想像を膨らませて疑念に陥るのだった。


(まぁいい……)


「さて、俺はこの山に居る妖魔共を再び纏め始めなければならぬ。お主はそこで大人しく見ているがいい。また様子を見に来る」


 勝手に思案の海に潜り込んだシギンに、煌阿はもう付き合いきれぬとばかりにそう言い残して、洞穴を出て行こうとする。


 しかし入り口付近に差し迫った頃に、再び煌阿の背中に声が掛けられるのだった。


「今この山には、お前であっても決して侮ってはいけない存在が現れている。これまでのように、何でも思い通りに行くとは思わぬ事だ」


「ふっ、またその負け惜しみか? 思い通りに行かぬのはお前の方だろう。精々、俺が戻るまでその卜部官兵衛の『結界』に抗ってみせていろ」


「ああ、そうだな。素晴らしい経験をさせてもらって感謝しているぞ」


「ちっ、何処までも口の減らぬ奴だ……」


 その会話を最後に完全に煌阿の『魔力』は掻き消えた。どうやら本当にこの場を去ったのだろう。


 この場に一人残されたシギンは、ひとまず他の事を考えるのはここまでにして、この先祖が生み出した厄介な『空間結界』の解除を試み始めるのだった。


 ……

 ……

 ……


 時を同じくしてシギンと同様に煌阿の『結界』に閉じ込められているエヴィ達もまた、何とか抜け出そうと出来得る限りの方法を試していたが、やはりそう簡単には『卜部官兵衛』の『空間魔法』の解除が出来ずに中断せざるを得なくなっていた。


「全く、観察対象だった煌阿殿を長らく外側から見ていた時の『結界』が、まさか今度は自分達を苦しめるとは思わなんだぞ……。エヴィ、無理はするなよ? アンタは魔力枯渇からようやく目を覚ましたばかりなんだからな?」


 エヴィの事を同類と理解して親しい気持ちを抱き始めた妖狐の『耶王美』は、自分と同じく『結界』を抜け出す為に『魔力』を使い始めたエヴィにまた『魔力枯渇』に陥らぬようにと忠告を行うのだった。


「うん、分かっているよ。少しだけやり残しがないかを試しただけだ」


 耶王美が妖狐としての攻撃主体の『魔』の技法を試している間、エヴィは耶王美がこれまで見た事のない力を行使して『魔力』を使い続けていた。


 それは何やら『(ことわり)』とやらを用いる『魔法』という概念であるらしく、この自分達を閉じ込めている『結界』に対して攻撃を行っているというよりは、何やら淡い光を伴った自分の手で『結界』そのものに触診を行うように手をあてたりしているのだった。


 しかし最初はあまり消費をしないようにみえたエヴィの『魔法』だが、どんどんとやつれていく姿を目の当たりにした耶王美は、慌てて彼に忠告を行ったというわけである。


 エヴィが行っていたのは『神斗』や『シギン』が用いていた『透過』であり、その領域は『魔力干渉』の区分にあたるモノを試みていた。


 細かく分けて六つの領域がある『透過』だが、その『魔力干渉』にあたる領域は四つ目とかなりの練度の先にある区分で、既に発動されている『魔』の事象、及び技法に干渉して打ち消しや貫通を目的としたものである。


 しかし期待する効力としては使用する事に間違いはない『魔力干渉』領域の『透過』ではあるのだが、どうやらエヴィの『魔力』が足りないというわけではなく、この『結界』技法そのものの位階が高すぎて『魔力干渉』の領域の『透過』程度では解除は不可能だとエヴィは結論を下した。


「こんな『魔』の技法を下界の存在が用いるなんて、とてもじゃないけど信じられないや。ねぇねぇ耶王美、この『結界』を張った奴って『魔神』とかじゃないよね?」


「いや、これを張ったのは煌阿という『鵺』の種族なのだが、実際には人間が編み出した『技法』を使っているんだろう。そもそも煌阿もこの『結界』に長く封じ込められていたのだがな……」


「人間……か。やっぱりソフィ様の言う通り、人間という種族は侮れないんだね? 大賢者エルシスにしても煌聖の教団のミラとかいう奴にしても、いつも僕を苛々させるのは人間だ」


 そう口にするエヴィは忌々しそうに表情を歪めながら『結界』を睨みつけるのだった。


 ……

 ……

 ……

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