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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1866/2244

1849.妖魔神と煌阿の関係性

 エヴィと耶王美が『結界』から逃れる手立てを探し始めた頃、その『結界』を張った張本人である煌阿は、自分が長年居た洞穴の中に戻ってきていた。


 そしてそこに今度は、煌阿の代わりにシギンの姿があった。


 奇しくもこのシギンは煌阿を『結界』と『封印式札』を用いて閉じ込めた『卜部官兵衛』の血を引く子孫であり、先祖によって封印された妖魔に、今度は同じ場所、同じ術を用いられて今度はその『卜部官兵衛』の子孫が封印されてしまうのだった。


「――これは驚いたな。煌阿よ、お前が相当の『魔』の理解者だとは思っていたが、まさか妖魔召士としての『術』だけではなく、阻害系統の呪符の扱いまで行えたのか。それも意識阻害級どころか、それは認識阻害に至っている。お前は今すぐにでも胸を張って自分を妖魔召士と名乗れるぞ」


 自分の置かれている状況をしっかりと理解しているのかいないのか、封印された『結界』の内側から外側に居る煌阿にそう言葉を吐き捨てたシギンだった。


「あまり俺を馬鹿にするなよ? 妖魔召士などという人間共が至っている『魔』の領域など、卜部(うらべ)の奴を除けばその大半が児戯に過ぎぬ。そしてその卜部の『魔』の理解度すら、この数百年の内に俺は越えて見せたのだ。今更そこいらに居る有象無象の妖魔召士共が使う『魔』の技法など、一目見れば全て完璧に使いこなせて見せようぞ」


「ふふっ、ではその有象無象の中に俺も入っているという事か?」


 何処か自虐的とも呼べるような言い方でそう告げるシギンに、阻害の札を元々あったように設置しようとしていた煌阿の手がピタリと止まった。


「卜部の奴を除けばと俺は言った筈だ。卜部の血筋を引きつつ、その卜部の至っている『魔』の概念領域に程近く、卜部を遥かに上回る『魔力』を有しているお前はもう俺の中で卜部官兵衛と遜色はない。残念だが、お前だけはもう二度と外に出すつもりはないぞ」


 そう言って、そこでようやく彼に合う邪悪な笑みをシギンに見せるのだった。 


「ふっ、どうやら本当に俺はここまでのようだな。では最後にお前に聞いておきたい事がある」


 その言葉に煌阿は浮かべていた笑みを消したかと思うと、訝しむように眉を寄せた。


「何だ……?」


「お前が今乗っ取っているその身体の本来の持ち主である神斗とお前の関係だ。お前程の強さを持つ者が俺の先祖に封印される前までこの山で生きてきたというのに、お前より遥かに弱い神斗や悟獄丸が妖魔神を名乗ってこの山の主であるかのように過ごしてきていた。つまりお前は神斗達と行動を共にしてもいいと思える程に仲は悪くなかったとみえるが、この洞穴で再会を果たした時にお前は神斗を本気で殺めようとしている風に見えた。現実に俺が『空間』をイジって神斗を助けなければ、今頃神斗の奴が死んでいたのも間違いない。このまま俺が死ぬ前に、せめてお前達の関係性だけでも教えてはくれぬか?」


 シギンが神斗の名を出した瞬間、この洞穴に封印を施した『卜部官兵衛』の話をしていた時以上の憎悪に歪んだ表情を見せる煌阿だった。


 数秒間に渡って、口に出すのも憚られると言わんばかりにシギンを睨みつけていた煌阿だったが、そこでようやく表情を戻すと同時に小さく息を吐いた。


「ふんっ、卜部の血筋の者にならば教えてやっても構わんか。冥途への土産代わりに話をしてやる」


 そう言って煌阿は式札を吊るし終えると、ゆっくりとシギンの方へと歩いてくる。


 やがて『結界』のすぐ前まで辿り着くと、シギンの前で煌阿は腰を下ろして胡坐をかきながら語り始めた。


「お主が何処まで知っているのかは存ぜぬが、確かに俺は神斗や悟獄丸を仲間だと思って当時はよくツルんでいた。その時から種族としての『翼族』や『鬼人族』は俺達『鵺』という種族をよくは思っていなかったようだが、種族の長としての立場だった『神斗』や『悟獄丸』はそんな態度を一切見せなかったし、俺も気の合う奴らだと信じていた」


「だったら何故神斗を殺そうと?」


「それは簡単な話だ。神斗達が俺を裏切ったからだ」


「何だと?」


 溜息を吐いた後に少し間を置いてから煌阿は口を開いた。


「神斗に呼び出されて行った場所に、お前の先祖が待ち受けていやがったんだよ」


 シギンは不可解だとばかりに眉を寄せた後に少し首を傾げた。


「どういう事だ? もう少し分かりやすく、順を追って話せ」


 その言葉に忌々しそうに顔を歪める煌阿(こうあ)であった。

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