1843.エヴィの行方と、神斗という妖魔神
「それでどうなんだよ? てめぇらはエヴィの野郎と一緒に居やがった筈なんだろ? 何であの野郎だけここに居やがらねぇ、エヴィは今何処に居やがるんだ?」
大魔王ヌーはまた放っておけばさっきの二の舞になるだけだろうと判断し、代わりに自分がエヴィの行方を知る者達であろうウガマに問うのだった。
「そ、それは……。さっきも言った通りなんだが、妖魔神の『神斗』にイダラマ様がやられかけた時、エヴィが俺達を逃す為の囮になってくれて――」
「それじゃエヴィの野郎はその神斗って野郎にやられちまったってのか!? どうなんだよ、あぁっ!?」
「うぐっ……!!」
「――」(お、おい! 落ち着けよヌー! 今のお前はバリバリ殺意出してるよっ! さっきのソフィさんの威圧よりよっぽどタチ悪いって!!)
「ちっ! クソ雑魚共はこれだからめんどくせぇ! ちっと話しただけで勝手に泡吹きやがる。ちっとは堪える努力をしろや、ゴミ屑がよぉっ!」
「あわ、あわわわ……!」
「ひ、ひぃぃっ!!」
「うぁっ――」
今度はウガマではなく、そのウガマを後ろから倒れないように支えていた数人の退魔士が、ヌーに対しての恐怖心から怯えてしまい、その内の一人は目を剥きながら泡を吹いて倒れてしまうのだった。
支えていた一人が床に伏して倒れてしまってから、ドミノ倒しをするように他の連中もフラフラと倒れそうになり、仕方なくヒノエやキョウカが彼らを更に後ろから支えると、副総長のミスズは泡を吹いて倒れている退魔士の傍に膝をついて駆け寄って介抱し始める。
そして気道確保の末、無事に息を吹き返させてみせるのだった。
ようやくウガマ達がまともに話が行える状態になると、ようやく彼は続きを話し始めた。
「しょ、勝敗の行方は、途中で山を下ってきた俺達には分からない。し、しかし先程も申したが、シギン殿がもう一体の方の妖魔神の悟獄丸を倒して我々と合流を果たした時、意識を失っていたエヴィをその腕で抱えて無事なのだと見せてくれたのだ! い、今もシギン殿の元にエヴィは居ると思われる!!」
恐怖の象徴と呼べるような『大魔王』両名に注目されている中、何とか奮い立たせるように声を張り上げながらウガマは、知っている内容をしっかりと纏めて伝える努力を行うのだった。
「つまり、エヴィの野郎はそのシギンって人間の野郎と一緒に居やがるって事か」
「お主は意識を失っていると言ったな……? それは神斗という妖魔と戦った事による影響だろうか」
「オイ、いいから落ち着けよ? どういう状況になって意識を失ったのかまだ分からねぇんだ。神斗とかいう奴を倒すのに『魔力』を大幅に消費しちまったところを……、そこに居るイダラマって奴みたいに助けられたのかもしれねぇだろ? だから抑えろよ、な?」
大魔王ヌーは先程まで苛々していたが、今のいつキレてもおかしくないソフィの様子に、慌てて冷静さを取り戻しながらそう口にするのだった。
「ああ……。そうだな。シギン殿がエヴィを連れて歩いていたという事は、身の安否という点では無事なのだという考え方が出来る。だが、もし『魔力枯渇』を引き起こして単に意識を失っているのではなく、その神斗という妖魔の膨大な『魔力』にあてられて精神面に影響を受けての気絶だったとすれば、最悪の場合は『魔』の技法そのものが使えなくなってしまっている可能性もある」
そのソフィの言葉を聞いたゲンロクは、かつて自分がシギン達と山の調査に来た時、妖狐の『王琳』に同じ理由で『魔力』をあてられてしまい、強制的にシギン達の調査を切り上げてしまった挙句に山を下りる事となった時の事を思い出した。
あの時にシギンの決断と、その後のサイヨウ達のフォローがなければ、今頃は今のソフィの話にあったように、自分は妖魔召士として生きていく事が出来なくなっていたかもしれない。
それ程までに『魔力』というものは恐ろしく、膨大な『魔力』を有する相手と戦う時は、直接攻撃を加えられる事以外にも気をつけなくてはならない事は多いのである。
――そしてこれこそが、ソフィ達の世界の『理』にある『魔法』の『漏出』を、使用する事に大きな懸念を覚えさせる理由でもあった。
『漏出』は相手の『魔力値』を正確に数値化出来る優れた『魔法』だが、相手の『魔力』をあてられるだけでこれだけの危険性を伴うというのに、それを直接脳内に情報として伝達させようとするのだから、脳がその相手の『魔力』の情報に耐えきれず、脳が焼き切れて絶命してしまう事すらも当然にある。
「もし、エヴィの身そのものが無事であったとしても、今後の生涯を含めたあやつの『魔』そのものを奪うような真似をされていたその時は……――」
――『神斗』をこの世から消してやる。
……
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