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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1853/2233

1836.気高さをみせる妖狐

※誤字報告ありがとうございます。

 先程まで見慣れた景色が広がっていた妖魔山の頂から、まるで神々が張る『固有結界』と見紛う程の無機質な空間へと閉じ込められた耶王美は、小さく舌打ちをしながら辺りを見回しながら歩き始めていく。


(やはり実際にこうして歩いて確かめてみたけど、幻術の類ではないようね。特有の綻びや違和感というものを全く感じられない。それにそもそも妖狐の私に対して幻術を使うのは得策じゃないという事は煌阿殿も重々承知でしょうし、最初に考えた通りに『結界』もしくはあの妖魔召士が使っていたような『空間魔法』といった『魔』の技法を用いられたと見るのが自然でしょうね。全くこれだから煌阿殿のような他者の力を使う御仁は嫌いなのよね。扱いづらいったらないわ)


 歩きながら胸中で煌阿に対する愚痴を吐いた彼女は、閉じ込められてから一度も姿を見せない煌阿に苛々を募らせ始めるのだった。


(不安感を煽っているつもりかしら? それとも……ん?)


「この空間の景色はどうだ? 楽しんでもらえたかね」


 耶王美がこの無機質な空間の景色に慣れ始めた頃、遂にこの場に彼女を閉じ込めた張本人が唐突に目の前に現れ始めたのであった。


「残念だけど私の好みではないわね。さっさと外に出してもらえないかしら?」


 下賎な者を見るような視線を煌阿に向けた耶王美は、うんざりしているというのが伝わるような声色で煌阿に告げるのだった。


「ふふっ、それは出来ぬな。こうして神斗の身体を乗っ取り、邪魔であった妖魔召士共の問題も解決した今では、この山で面倒になりそうなのはお前達妖狐の存在くらいのものだからな」


「ちっ」


 その言葉に耶王美は、これみよがしに大きく舌打ちをしてみせた。


「カカカカッ! お前は本当にいい女だ。その冷酷な視線にどこまでも強気な態度。他種族共を圧倒的な強さで制圧出来る程の実力によく見合っている。どうだ? 今からでも遅くはないぞ耶王美。王琳のようなつまらぬ男ではなく、この俺に仕えぬか?」


 ――その煌阿の言葉に耶王美の表情が豹変したかと思えば、一瞬の内に『金色』のオーラが纏われ始めた。


 そしていつの間にか彼の近くまで接近を果たした耶王美が、煌阿の顔を殴り飛ばそうと手を前に出してくるのだった。


 しかし実際にその拳が煌阿の顔を殴り飛ばすことは叶わず、逆にその腕を掴まれた耶王美は、その身体を無理やり煌阿に引き寄せられて身体を抱きしめられてしまうのだった。


 そして無遠慮にその耶王美の唇を奪おうと顔を寄せてくる煌阿に、遂に耶王美は我慢の限界を迎えた。


「――殺してやる」


「むっ……!」


 煌阿は自分の胸の中に引き入れた耶王美の身体が唐突に変貌していく姿を見て、慌てて抱きしめていた身体を離してその場から後退った。


「ククククッ! 気高いお前がそんな生娘のような反応を見せるのがまた格別でたまらぬのだ!」


 現在の妖狐本来の姿となった耶王美は、その金色に輝くオーラも相まって非常に神秘的な生物のように感じられた。


 煌阿はその姿に魅了されたかのように唸ると、小さく溜息を吐いた後に再び口を開くのだった。


「まぁ、そう慌てるなよ耶王美。全てが片付いた後にまたゆっくりとお前の相手をしてやる。その時をこの空間内で楽しみに待っているがよい」


 耶王美に恐ろしい程の殺意を向けられている煌阿は、舌なめずりをしたすぐ後に、この場にやってきた時のようにその場から姿を消すのだった。


 ……

 ……

 ……


「お前らが今も当たり前のように張っているその『結界』は、いったい誰が用いたモノなのだ?」


 明らかにこの場に居る者達が用いたものではない『結界』に疑問を抱いた王琳が、そう言葉を発すると鬼人族の集落へと向かおうとしていたウガマ達の足が止まった。


「こ、これか……? こ、これは、イダラマ様が意識を失う前に我々を案じて張ってくれた『結界』だ!」


「う、ウガマ殿……!」


 咄嗟にそう言い返してしまったウガマの言葉に、イダラマの護衛の退魔士の一人が慌てて声を掛けようとするが、その前に王琳が笑い始めるのだった。


 退魔士ですらない『予備群(よびぐん)』のウガマは、術者が意識を失った時点で『結界』の効力が消え去るという事実がぱっと頭に浮かばなかったようで、妖魔召士や退魔士といった『魔』の概念に理解があれば誰でも直ぐに見抜ける嘘をついてしまったようだ。


「そのように誤魔化さなくともその『結界』を張った奴をどうこうしようというつもりはない。単に興味が湧いたから尋ねただけで他意はないさ」


 そしてようやく自分の発言が如何に失言だったかに気づいたウガマは、観念するように一人の妖魔召士の名をこの場で口にするのだった――。


 ……

 ……

 ……

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