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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1836/2220

1819.冷静に戦闘準備を進める者

※誤字報告ありがとうございます。

 神斗が山の頂にある自分の小屋の中で『魔』の概念についての考えを纏め始めていた頃、シギンと煌阿の戦闘に変化が生じ始めていた。


 これまでの戦闘では一方的に仕掛けていたのがシギンであり、それに対応する形で動いていたのが煌阿だったが、そのシギンが今度は自身の周囲に『スタック』を展開し始めながら、相手の動きを観察するように防御の姿勢を取り始めたのである。


 どうやら先程までのように、いくら『空間魔法』を織り交ぜた上で畳みかけていても、難なくいなされる(さま)にシギンも思うところがあったのだろう。


 今のシギンは先程までの圧倒的な『魔力』と『理』を用いた『空間魔法』で相手に何もさせない間に勝負を決める暴風のような戦闘スタイルではなくなってしまったが、それでも全く攻めやすくなったという風ではなく、むしろじっくりと準備を整えながら相手の動きに合わせて行動を取るというような、その戦闘スタイルは逆に攻め辛さすら感じられるようであった。


 戦闘の最中で冷静さを失いながらもやるべき事には、普段通りの忠実さを守れる者というのは存在するが、このシギンという人間もまた、そういった人種にあてはまる人間だったようだ。


 そして直接対峙する煌阿は、そんなシギンの戦闘スタイルの変貌振りに驚きのようなものはなく、むしろ嬉しそうに笑みを浮かべるのであった。


(ようやくあの『卜部官兵衛』に近くなったな。ただ勢いに任せるだけの妖魔召士など、官兵衛の血筋の者に相応しくはない。この俺を長きに渡って封印してみせた憎き奴の子孫だ。この手で完膚なきまでに奴の幻影ごと粉々に打ち砕いてやるわ)


 今はもう居なくなってしまった『卜部官兵衛』の代わりに、その同じ血を受け継ぎし妖魔召士である『シギン』を、報復の対象に選んだ様子の煌阿だった。


「さて、目に映る『スタック』は四つか。だが、どうせ『空間』を操るお前ら『卜部』の血筋の事だ。一目で分からぬように何層にも偽装を施して現実に見せかけているのだろう? 残念だが、お前ら一族のやり口は誰よりもこの俺が理解している。あの頃のようにあっさりと突破してみせてやろう!」


 煌阿は勝ち誇るような笑みに変貌させた表情と共に、その身体がブレて見える程の速度で、罠を張っているであろうシギンの間合いに自ら飛び込んでいくのだった。


 先程彼は目に見える『スタック』は四つと言っていた――。


 本来の『スタック』というものは、すでにその場所に術者が『魔力』を貯めておき、発現のキーとなる発動羅列を唱える事で『理』が用いられた『魔法』や『魔』の技法の数々を発動させるものである。


 この『スタック』は何も大賢者のような『魔』の理解者が使う為に編み出されたものというわけではなく、無詠唱が行えない『リラリオ』の世界の魔法使いたちが、速度重視のために用いる事もあるくらいに、その用途には色々と幅がある為に広く使われている技法とされている。


 当然にかけだしの魔法使い達が準備を行う『スタック』と、このシギンが用意しているような『スタック』では大きく意味が異なっている。


 速やかに詠唱なしで詠唱有りの効力を持たせた『魔法』を放ちたい時や、相手の動向に合わせて発動させるカウンターを仕掛ける罠の役割を担わせたり、口で詠唱する『魔法』と連携を取る為に準備をする意味合いも込められているのだ。


 そしてあえて『スタック』を一つや二つではなく、数多く出現させる事で色々な戦略を準備しているぞと相手に伝えてブラフの役割を持たせる者も居る。


 このシギンの戦闘の待ちのスタイルになってから設置した『スタック』の数々だが、逆にこの四つという数字はむしろ少なすぎるといっていいと煌阿は考えていた。


 かつて煌阿が対峙した卜部官兵衛という妖魔召士もまた、このように『待ち』を得意とする戦術をとっている妖魔召士であったが、その時の官兵衛の『魔』の『スタック』は、常に十を越えている程であった。


 それも一つ一つにしっかりと意味があり、ブラフの為などというつまらない理由ではなかった。


 シギンが得意とする相手を弱体化させる『蒙』や、あの悟獄丸を封じるに至った『赤い真四角の結界』などもこの『スタック』から展開させて、同時に詠唱を用いて動けなくなった相手に速やかに処理する一撃を放ったり、その『魔』の技法の数々を同時に操りながら、少しずつそして確実に弱らせて一網打尽にする『卜部官兵衛』という妖魔召士の戦い方を知る煌阿は、確実にこのシギンもまたそのような戦い方をするのだろうというアタリをつけているようで、見えている四つの『スタック』は、逆に少なく見せて油断させるブラフの役割を持たせて、本命は『空間』をイジって偽装を施して見えないようにしている場所に、他の『スタック』ポイントを用意しているのだろうと考えていた。


 だが、そこまで分かっていて、あえて煌阿はシギンの間合いへと向かっていったのである。


 彼が考えている事は、このシギンがどれだけ『卜部官兵衛』に戦闘における能力が近いかであった――。


 ……

 ……

 ……

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