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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1818.神斗にとっての大きな進歩

 煌阿(こうあ)とシギンの戦闘が始まった後、その両者が別の場所に移動してしまい、感知が行えなくなった神斗はその場に居ても仕方がないとばかりに山の頂にある小屋に戻ってきていた。


 しかし神斗は両者の居場所を探るのを諦めたわけではなく、小屋に戻ってからも目を瞑り『魔力感知』を行い続けているのだった。


(あの人間だけではなく、煌阿の『魔力』まで追えないというのが不可解だ。どうやら彼も相当の『魔』の理解者だという事は私にも分かるが、それでも私の『魔力感知』の包囲網を潜り抜けられる程だとまでは流石に信じられない。これは多分、煌阿ではなくあの人間が使っている『空間魔法』もしくは、周囲に張っている認識阻害系の『結界』が作用していると見る方が正しい……、いや、駄目だ。こんな発想をしている時点で彼の言う通り、この私は視野が狭まっていると言わざるを得ないのだろう。この『魔』という概念は確率の高さや低さで判断する物ではないという事は、前回にあの人間と対峙した時に思い知らされた筈だ……)


 神斗は目を閉じながら思考を重ねているが、その間にもしっかりと『魔力感知』を行って、シギン達の居場所を探り続けていた。


 彼もこの『ノックス』の世界では、シギンを除けば一番の『魔』の理解者である筈だった。


 そしてそれは戦力値では神斗より遥か上を行っている実力者である王琳もまた認める程なのだから、単なる神斗の誇張というわけでもない。


 しかし神斗の場合、確かに『魔』の理解者ではあるのは間違いないのだが、あまりにもその『魔』の概念の一部である『透過』という一つの『魔』の技法に傾倒しすぎているが故に、全体の『魔』の観点からみれば、シギンはおろか、煌阿にさえ届いていないというのが実状なのであった。


 少しではあるが、山の頂付近の空の上でその事についてシギンが神斗に指摘したが、この『魔』に関しては『透過』に傾倒しすぎて少し目が曇っているといえる彼には、そのシギンの話す真意がここに来るまではまだ、正しく伝わっていなかった様子である。


 だが、こうして『魔力感知』で煌阿自体の『魔力』さえも感じられないという事実に、神斗は色々と『魔』について考え直す事が必要だと改め始めている様子であった。


 それは一つの物事を捉える単なるキッカケに過ぎない僅かな事ではあったが、それでも長寿な生物である神斗にとって今回の事は転換期を迎えた大きなキッカケだったのだと考えてよかった。


 これがもしヒュウガやイダラマ、そしてコウエンといった『人間』という種族であったのならば、遅すぎる判断だと空を仰ぐところだったのだろうが、種族が違う神斗にとってはその遅すぎるという部分が当てはまらないのだ。


 百年余りの寿命である『人間』と、既に数千年という年月を生きており、またこれまで生きてきた年月と同等以上の寿命が残されているであろう『神斗』には、同じ年月であってもその価値が違うからである。


 そしてその事に気づかせてくれた『シギン』に対して、神斗は感謝の念すら覚えている。


 当然にこの山に生きる妖魔達から『妖魔神』と持て囃されている自分が、たかが『人間』という短い寿命の生き物より『魔』の概念で劣っていたのだという事を素直に認めたくないという気持ちも同時に抱いてはいるのだが、しかしそれはそれだと、しっかりと感謝の気持ちとは分別を行えるのが『神斗』という妖魔だったようである。


 ――ようやく神斗は同じ妖魔である『王琳』という存在が抱く、一つの思想に至ったようである。


 それは自分より弱いからという理由で全てを否定するのではなく、たった一つでも自分より長けている部分があると気付いたのであれば、それを尊重して対等の存在なのだと認めて、そこから先に抱いた感情を無視してはならないという思想であった。


 そしてその事に気付いた神斗は、しっかりと山の頂に建てた小屋の中で、シギンが自分に告げた言葉の全てを一つ一つ噛み砕いていくかの如く思い出して、そして少しずつ享受する準備を整え始めていくのだった――。

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