1764.多くの者が見届ける中で
「よ、妖魔神のご、悟獄丸をシギン殿が……? そ、それは、真の事なのですか?」
流石に『妖魔』達の神である筈の『妖魔神』を始末したと一言に告げられて、あっさりと鵜呑みに出来る程にウガマは世間知らずではない。
それも自分達が信じてついてきた『イダラマ』が、もう一体の方の『妖魔神』に対して何も出来ずにやられかけた上に、そのイダラマとかつては五分に渡り合える程の強さを有していたであろうコウエンもまた、ランク『9』以上はあるであろう『妖狐』に無残にもやられてしまった以上、その妖狐よりも強いであろうランク『10』の『妖魔神』が、たった一人の人間、それも若く見えても確実に全盛期を過ぎているである筈の年齢の『シギン』が、たった一人であっさりと『悟獄丸』を葬ったというのだから失礼と知りながらも聞き返してしまう事は無理もない事であった。
「ああ、その通りだ。だからこのままこの場でやり過ごす必要はない。それでお主らが山の麓へ向かいたいというのであれば、このまま俺が連れていってやるがどうする?」
「そ、それは願ってもない事ですが……」
ウガマはちらりと岩陰を背にして寝かせているイダラマの方を見やると、ふっとシギンは笑ってみせた。
「どうやらイダラマは俺が知る頃より良い成長を果たして、こうして信頼されているらしいな」
「え……?」
いきなりシギンはそう言うと、これまでとは異なる笑みをイダラマに向けるのだった。
「ふっ、何でもないさ。ではひとまずイダラマが目を覚ますまでは待つとしようか?」
「あっ……、い、いいんですか?」
先程まではイダラマを死なせるわけにはいかないと、イダラマの安全を最優先に考えていた為に、必死に山を下りようと考えていたが、こうしてシギンと会えた事で安心感を得られた事で優先順位が変わり、イダラマの考えを聞いてからにしたいと考えたウガマであった。そしてそんなウガマの考えを正確に読み解いたかの如く、ウガマにとっての魅力的な提案をシギンはしてみせたのであった。
「構わない。俺は今でもイダラマを大事な仲間だと思っている。そんなイダラマと共にこうして居るお主らであれば、俺が主らを見捨てる訳があるまいよ。イダラマが目を覚ますまで待ちたいというのであれば、その時まで面倒を見てやろう」
「か、かたじけない……!」
「「ありがとうございます!!」」
そのシギンの言葉にウガマだけではなく、イダラマの護衛を務める退魔士達も声を揃えて感謝の言葉を告げるのだった。
彼らイダラマの護衛を務めている退魔士は、現在の『妖魔召士』組織に属してはいないが、それでも『シギン』といえば、全ての退魔士が一度は憧れを抱いた偉大な『妖魔召士』なのである。
そのシギンがこうして彼らの目の前に現れて、この危険な『妖魔山』で最後まで面倒を見てやると口にしてくれた事で心の底から感激した様子であった。
こうして山の中腹付近、天狗族と鬼人族の縄張りの近くの岩陰にて、シギンはイダラマとウガマ、それに護衛の退魔士三人、更には大魔王エヴィと共に行動を取る事となるのだが――。
イダラマが目覚めるまでこの中腹付近に留まる事になった彼らは、この後に訪れる『天狗族』の縄張りにて、大魔王ソフィという一体の魔族の『暴威』と呼べるモノを目の当たりにする事となり、この『シギン』という『妖魔召士』もまた、山の頂に居る『王琳』と同様に大変な興味を抱く事となるのであった。
……
……
……
そして『魔力』の質というモノを感じ取る者は彼らだけではなく、とある妖魔召士の封印から逃れる事が出来た事で、薄暗い洞穴の中で身を潜めながら、自身の『魔力』で形成させて宿らせる『結界』の代用作りに勤しんでいたその『存在』にもまた、魔族ソフィという大魔王の『存在』を心身共に意識を感じさせる事となる。
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