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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1765/2242

1748.大魔王ソフィの静かな怒り

「それは順を追って話をさせてもらうとだ。そもそもが山の見回りを行っていた部下から、赤い狩衣を着た妖魔召士が数名、更にその護衛と見られる人間が複数名が『式』にされたと見られる鬼人を引き連れて、この『妖魔山』にある鬼人の集落へと近づこうとしていると報告があったのだ。それで我々はまた人間共が鬼人達に悪さをしようと企んでいるのではないかと憂い、ここにいる『歪完(ゆがん)』を含めた『幹部』数名を主らの元へと派遣したのだ」


「その時にワシらはしっかりと説明を行った筈だ。ここに居る彼らはかつてのような不届き者達ではなく、人里で道に迷っていた我らの同胞を助けてくれた上で、こうして危険を冒してまでワシらの集落まで送り届けてくれたのだと。そして何も心配は要らぬから引き上げてくれとその『歪完』殿に説明したのにも拘らず、そやつは我らが客人達を無理やり連れて行こうとしたのだ。こちらとしても同胞を助けてくれた客人を差し出すわけにはいかぬ。だから主らに大人しく帰れと口にしたのだ!」


 一度目の天狗族の来訪の時に説明した内容を、そっくりそのまま同じように説明を行った玉稿だが、それを聞いても表情を一切変えずに『華親(かしん)』は笑みを浮かべたままであった。


「ふふふふっ! 成程、成程。そう言う事情であったのか。しかし人里で迷って人間に保護してもらうとは情けない鬼人族も居たものだな? よちよち歩きの赤子がちょこちょこと集落を抜け出してしまったのか?」


 そう言って馬鹿にするような視線を百鬼に向ける華親であった。


「ふんっ、言っておれ。こちらの事情は全て話した。事情を理解したならば、さっさとワシらの縄張りから出ていけ! ここで素直に引いたならば我々の縄張りにずけずけと入り込んだ事に関しては不問にしてやる! さぁ、さっさと去ね、天狗共!」


 その玉稿の言葉に更に追い打ちをかけようと華親が口を開きかけたが、それを右手を出して静止した後に彼ら天狗の首領である『()()』が一歩前に出て口を開くのだった。


「そうは行かぬな、当代の鬼人族の族長。妾たち天狗はこの山の管理を妖魔神殿から任されて中腹に居るのだ。その妾達天狗が目の前に居るこの山に入り込んだ『妖魔召士』達を見逃して、(あまつさ)えこの場去るわけにはいかぬ。別にお主ら鬼人族と今更事を構えようとまでは思っておらぬが、そこの人間共を連れては行かせてもらう。こればかりはいくらお主らが人間共を恩人だと申していても、天狗の首領としての立場で妾は行動を取らせて頂く」


「うっ――!」


 そう言って『帝楽智』が『魔力』を纏いながら射貫くような視線を玉稿に向けると、鬼人族の族長としてそれなりの強さを有している筈の『玉稿』の表情が青ざめてしまうのだった。


『鬼人族』を取り囲んでいる天狗達は、自分達の首領と『鬼人族』の族長との格付けが行われる瞬間を見て、次々と厭らしい笑みを浮かべ始めていく。


 どうやらトップ同士のやり取りを見て、自分達もまた『鬼人族』に対して優位性を明確に感じ取り、自分達の方が彼らよりも偉い立場なのだと本能で決断を下したようであった。


天従十二将てんじゅうじゅうにしょう』と呼ばれる天狗達の数体が驕り始めてからというもの、他の天狗達もつけあがるように威圧的な態度を取り始めて行き、やがてはそれが天狗達全体に伝播していってしまった。


 鬼人族の子供たちは、その威圧的な天狗達の視線や態度にさらに怯えてしまい、ビクビクと身体を震えさせるが、それを見た天狗達の一部が嘲笑うと、再び周囲の者達にも態度が伝播していく。


()()()()()()……」


 そして遂にこれまで黙って事の成り行きを見守っていた存在が口を開くのだった。


「ああ?」


 怯える鬼人族の子供を見て馬鹿にするように笑っていた天狗の一体が、耳聡くその存在の呟きに反応を見せて、そちらを振り向いた瞬間であった。


「気に入らぬと言ったのだ。そこに居るお主らを束ねている者は、我達が目的なのだと口にしたのだろう? ではお主らはそれに従って黙って立っておけばよかろう。そうだというのにいつまでも嫌がらせを行うように、何もしていないそこの子供たちを怯えさせて嘲け笑う。一体お主らは()()()()()()()()()?」


 気に入らぬと口にしたその存在は、()()()()()()であった――。


 これまではあくまで妖魔退魔師組織の客分としての立ち位置を守り、一切主張を誇示する事もなく黙っていたソフィだが、流石に増長していく天狗達の視線と態度。そしてその視線の対象に選ばれてしまった子供たちの怯える様子に、彼は黙ってはいられなくなったようである。


 そして静かに呟くソフィの言葉とは裏腹に、その声色からソフィという存在を深く知る『大魔王(ヌー)』は、テアを守るように彼女の前に立つと、そっと『三色併用』を纏い始めるのだった。


 ――その唐突な大魔王ヌーの行いは、これから起こるであろう出来事から、自分と自分の大事な者を守る為の防衛の手段であったが、まだその事に気づけた者はこの場には居なかった。

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[良い点] ここから反撃が始まりますが、果たしてどうなるのか気になります!
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