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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1743.不可解的な概念武装による隠匿

 神斗の案内で七耶咫(なやた)が眠っているという山の頂にある小屋の中に入った王琳だが、そこで実際に七耶咫の横たわる姿を見て、それまでの表情から一新させて険しい表情を浮かべるのだった。


(なるほど……。どうやら想像以上に七耶咫の奴は精神を疲弊させられているらしいな。俺がここまで近づいても目を覚まさないか)


 どんな時であっても九尾の王琳が近くに来れば、全ての配下の妖狐は寝静まっている時でも直ぐに目を覚まして挨拶をする。それは当然に七尾として大妖狐の地位を確立している七耶咫も例外ではなかったが、こうして実際に神斗の言う通りの状態にある七耶咫を見た王琳は、その人間の強さの実感が湧いたようであった。


 次に王琳は七耶咫を操った『魔』の概念の影響下にある筈の『魔力』の残滓を探し始めるが、どうやら今の王琳程の『魔』の概念の理解者であっても、あらゆる概念武装によって『魔力』の残滓を覆い隠されており、この七耶咫を操った者にまで辿り着けそうになかった。


 改めて『魔』の概念の奥深さと、何処まで行っても果てが見えてこないものだという事を理解する九尾の妖狐であった。


「凄いものだろう? 私たちがここまで『魔』の概念を研究してきているからこそ、この七耶咫を一見して何が行われているかを推測出来ているが、普通の連中じゃ単に眠っているだけとしか認識出来ないだろうね。それもこうしている間にも『魔力』の残滓が少しずつ薄れていっているのを感じる。まるで闇から更に深い闇へと『魔力』自体が意識を持って消失しようと動いているようだ」


「これは完全にお手上げですよ。神斗様、貴方でなければこれは確かに『残滓』からその生物へと辿り着く事は不可能だ。それで、もう貴方はこの『残滓』の解析は終えているのでしょう? でなければこうして俺とのんびり会話をしているわけがないでしょうしね」


「ふふっ、流石だね王琳。まぁ、実物をこの目で見ていたからこそ、私は彼の『魔力』そのものの一部を認識してこの『残滓』と因縁関係を係合させる事が出来ているが、一から七耶咫の様子から彼の正体を割り出すには相当に苦労させられていたと思うよ」


 この『ノックス』の世界で『魔』の概念に対して『透過』を通して数千年の研鑽を積んできた『妖魔神』にして、そこまで言わしめる程のこの七耶咫を操った『魔力』の残滓を守る『概念武装』は、世界に散りばめられるあらゆる隠匿の真理が結集されているモノだと言わざるを得なかった。


 だからこそ、直接戦った神斗は、これほどの『魔』の領域に立つ者が『人間』の様相を示していた事に驚きを隠し切れなかったのだった。


 ――そしてそれは九尾の王琳にも伝播するように伝わっている。


『鬼人』の殿鬼に『天狗』の帝楽智、そして『妖狐』の王琳。


 改めて現在の『三大妖魔』と呼ばれる種族の代表達であっても、人間という種族が持つ本質を『脅威』と捉えざるを得なかったようであった。


 王琳が自分の話の内容を正確に理解していると感じ取った神斗は、満足そうに頷いて見せた。これが悟獄丸であれば、王琳と同じ説明を行ったところで話半分に聞き流されて終わりだっただろう。


 自分程までとはいかずとも、この『九尾』が『魔』の概念に対して真摯に研究と研鑽を積んでここまで辿り着いている事を『妖魔神』の神斗は頷く事の真意として、王琳に対して多大な評価を下すに値すると認めている様子であった。


 満足そうに自分を見ている神斗に苦笑いを浮かべた王琳は、そのまま横たわっている七耶咫の元に近づいて行った。


「おい、そろそろ起きたらどうだ?」


 王琳は瞼を閉じて静かな寝息を立てていた七耶咫の頬を二、三回と軽く叩いてみせた。


「うっ、ぅ……ぇっ!?」


 ぼやぁっとした視界の中、ゆっくりとその目に映った自分の主の姿を見た七耶咫は、やがてがばっと身体を起こすのだった。


「お、王琳様!? わ、私は、え、えっと……?」


 自分が一体何をしていたのか、何故ここで寝させられていたのか。何も分からずに視線を辺りに這わせながら困ったように言葉を並べ立てたが、そこで更に妖魔神の『神斗』の存在が視界に映り、どうしていいのか分からずに困ったように自分の主である王琳に視線を戻すのだった。


「ふふっ、まぁこうなるのは仕方ないだろうさ。なぁ王琳?」


「はぁっ、そうですね。まぁ、確かに仕方のない事でしょうな」


 愉快だとばかりに笑みを浮かべる妖魔神の姿と、仕方ないと溜息を吐く自分の主の姿に、いつまでも七耶咫は疑問符を顔に張り付けながら首を傾げていた。


 ……

 ……

 ……

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