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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1724.再会と心の清算

「これは驚いた……」


 この場に現れたのは合計で五体の鬼人と人間が一人だった。そしてソフィはこの場に現れた者達の中から二人の存在に素直に驚くのだった。


 何故ならその二人とソフィは、面識があったからである。


 しかし更にその二人の存在の内、女の鬼人の方にソフィは視線を固定させられた。


 その面識ある二人組の内の一体とは、加護の森で最初に出会った特別退魔士の『タクシン』が『式』にしていた妖魔の『動忍鬼(どうにんき)』と呼ばれる鬼人の少女である。


 ――そしてソフィはずっとこの少女の事を気に掛けていたのであった。


 ヌーがタクシンの『式』であった動忍鬼の契約を解除させた後、彼女はソフィと別れた後にこれまでの清算をお行うつもりで『妖魔召士』組織に報復を行おうとしていたのだが、それを止めたのがソフィだったのである。


 その時のソフィは、このままでは折角自由の身となれた彼女が、黒い感情に支配されたままでこの世を去ってしまうと予見した為、それを阻止するためにあえて『報復をするのならば、それに見合った力を身につけてからにする事だ』と告げたのである。


 確かに彼女の身の安全を考えるならば、ソフィの発言に問題はない筈だった。


 ――だが、その黒い感情の本質は、決して他者がとやかく言えるような内容ではなく、誰よりもアレルバレルの世界で『報復の価値』というものを分かっている筈の自分が、気安い言葉で彼女の覚悟を無碍にさせてしまったのではないかと、この世界で旅をしたことにより改めて理解して発言に後悔を行っていたのである。


 再びこうして再会することがあれば、あの時の一件を改めて謝罪したいと考えていたソフィだった。


 そんなソフィを見た動忍鬼もまた驚いた表情を浮かべたが、その後に儚げな笑みを向けたかと思うと軽く頭を下げたのであった。


 そしてソフィはその動忍鬼の笑みを見て、酷く心を打たれたのだった――。


 …………


 動忍鬼は集落で報告を聞いた後、妖魔召士に『式』にされているのが『百鬼』だと知り、イバキの事もあって自分もこの妖魔召士達の元に向かおうと決意をしていたが、まさかその妖魔召士達の元にソフィの存在が居るとは思わなかった為に最初はびっくりしたが、何やら思い詰めた様子の彼の目を見た事で、何故かは分からないが彼女は『一刻も早く彼に笑って見せなければいけない』と思わされて笑顔を作り向けたのだった。


 単なる笑み一つ、されどソフィにとってはその動忍鬼の見せた笑みによって、彼が思い悩んでいた後悔や、その他もろもろの感情が瓦解して、彼の精神の根底部分にある、とある感情が負から正へとフラットに戻される感覚を覚えさせられて、ソフィはほっと胸をなでおろすのだった。


 ――この動忍鬼のソフィを見た時に笑みを見せなければ。という咄嗟に思いついた行動で、本当の意味でソフィは後悔による彼女に対する不安が、綺麗さっぱりと取り除かれたのだった。


 ソフィはこの経験を経た事でまた一つ心が強くなった事だろう――。


 ――そしてそれこそは彼が新たな『感覚』を形成すると共に、大魔王ソフィの揺るぎない精神に決して少なくない経験値が上乗せされた瞬間であった。


 …………


「動忍鬼!!」


 そしてその鬼人の少女が見せた儚げな笑みには、百鬼の感情をも揺さぶる効力があったようだ。百鬼は涙を目に溜めながら、自分が探していた同胞を両手で必死に抱きしめるのだった。


「な、百鬼兄さん……!」


「無事だったのだな! 本当によかった……!」


 動忍鬼はいきなりに抱き着かれた為に再び驚きの表情を浮かべていたが、直ぐにその百鬼の涙と温かい手に彼女もまた涙を流して再会を喜んだのであった。


 その場に居た周りの者達は、まだ完全に両者側に警戒を解いたわけではなかったが、集落側の動忍鬼と、人間の里の方から山を登ってきた百鬼の両者が再会に涙を流しながら喜んでいる様子を見て、双方ともに当初程の殺気などは薄れ始めていくのだった。


 やがて動忍鬼達の姿を見て嬉しそうにしていたイバキが、ソフィ達の方に視線を向けたかと思うと、ゆっくりと近づいてくるのであった。

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