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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1706.一貫性が生んだ集団心理と常識

「そ、それはどういう意味じゃ……?」


 コウエンはこの後に告げられるであろう言葉をある程度は想像が出来ていたが、それでも実際に聞くまではとばかりに疑問を口にするのだった。


 王琳はそのコウエンの問いに小さく溜息を吐いた後、視線を真っすぐにコウエンに向けて口を開いた。


「お前達は『魔』の何たるかという事をあまり理解せずに、愚直に『捉術』と呼ばれる一つの『魔』の技法に傾倒している。これまでここに登ってくる人間の数が少なかった為に、もしかすると一部の人間だけがそうなのだと勝手に考えていたが、この場所に二度辿り着いた事があるお前と直に手を合わせた事で俺は確信を持った」


 王琳の言葉にコウエンはごくりと唾を呑み込む。どうやらその先を早く聞きたいという願望から、彼は無意識に喉を動かしたのだろう。


「『魔』とは……いや、お前に分かりやすく伝えるには『魔力』と表した方がよいか。お前達妖魔召士と呼ばれる人間達は、皆一様に『捉術』を用いる為だけに『魔力』を使っているな?」


「あ、ああ……。そりゃ『捉術』を用いるには『魔力』が必要じゃからな……」


 何を言うのかと身構えていたコウエンは、当たり前の事を問われて少しだけ冷静に戻る事が出来たようである。


「お前を含めて『妖魔山』に現れる人間達は、それなりに魔力量を持った者が多い。俺達とは違って『魔』の技法で『魔力』を増幅させているわけでもないというのにな。しかしその豊富な魔力値を活かさずに行う事は、我々妖魔達に対して派手な威力を持たせただけの攻撃手段しか用いていない。それはたとえば鬼人のような種族に対しては『捉術』と呼ばれる『魔』の技法ではなく、より顕著といえる『魔力』をそのまま放出させる事が多い。それは何故だ?」


「そ、それは鬼人の皮膚が固く攻撃が通らぬからだろう。あくまで『捉術』を用いるならば、脳に影響を与える『動殺是決』を用いる事は有効だが、直接相手に触れなければならぬ故に、手痛い反撃を受ける事を考慮するならば、遠く離れたところから一気に勝負を決められる『魔力波』を用いる方が効率的だからじゃ」


 王琳はコウエンの問いかけに対する答えを黙って聴いていたが、閉じていた目を開けると再び口を開いた。


「あまり悩まずにあっさりとそういう結論を下すか。どうやらお前は本当にそう考えているようだな」


「な、何……?」


 その要領を得ない王琳の言葉に、コウエンは質問の意図が読めずに疑問の声を上げるのだった。


「何故その結論に至るのかを考えてみたが、それはやはり格上の妖魔達との戦いの経験の乏しさが原因だろうな。どうやらお前達はせっかくのその潤沢にある『魔力』を有効に使う事を考えず、相手の『耐魔力』に勝ろうとそれだけを考えて攻撃を行っているに過ぎぬのではないか?」


 ――自分の行う攻撃が耐えられるというのであれば、その『耐魔力』を上回る『攻撃力』を持たせればいい。


 確かにこの考えは生まれ持って豊富な『魔力』を有する妖魔召士達が、第一優先で考える事項であった。


 そして放つ攻撃に対してどれだけ相手の妖魔が耐え得る事が出来るかで、妖魔のランクというモノを定める。更にその妖魔召士が放つ攻撃もまた一律に『捉術』や『魔力波』を指標として捉える事で、組織に居る他の『妖魔召士』達と情報を共有している。


 その得た情報を基に定めたランクの『妖魔』に対して対応を行い、自分では勝ち目がないと判断した妖魔召士は、更に殺傷能力の高い『魔力』を有する妖魔召士に任せて以後は近づかず、また近づく時は大勢の妖魔召士で対処にあたるといった対処を取る。


 この一連の流れは、歴代の『妖魔召士』組織から受け継がれて行われてきたものであり、まさに首尾一貫しているといえる行いであった。


 そしてそれは『妖魔召士』の常識となり、集団心理にとらわれてしまった彼らは誰も疑問を持たず、指標に伴った攻撃で、定めたランクの妖魔に対して対処を行えるだけの『魔力』を得るために研鑽する。


 ――つまりはランクを定めた相手の耐魔力を上回る殺傷能力を得るためだけに、妖魔召士と呼ばれる『魔』に携わる人間達は、その『魔力』を得ようと考えている。


 王琳はコウエンの反論を待っていたのだが、一向に否定するような言葉がなかった為に、やはり間違っていなかったかと今度は大きめの溜息を吐くのであった。

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