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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1695.概念思想の感覚派と理論派

「何だ? いったい誰が俺にこんな真似をしやがったぁっ!」


 悟獄丸は『結界』を張って逃亡を続けている人間たちを本気で探し出そうとした矢先、自分に向けられて攻撃を放たれたのだと自覚すると、驚きの後に直ぐさま怒りを覚えて、攻撃を行ったであろう存在に対して怒号を上げるのだった。


 しかしその悟獄丸の声に襲撃者からの反応はなく、辺りは再び静寂(せいじゃく)に包まれる。


 この辺りは『禁止区域』とされるこの妖魔山の頂付近であり、妖魔の数も中腹辺りと比べて非常に少ない事は間違いないが、それでもこれだけ大声を出しても誰も姿を見せない事に悟獄丸は不気味さを感じる違和を覚えるのだった。


 悟獄丸は仕方なく『魔力感知』を逃亡を続ける人間に使うのではなく、この襲撃者に対して行い始める。すると直ぐに襲撃を行った存在の居場所を突き止める事に成功し、足を止めてその存在の居る方へ身体を向け始めた。


 そして居場所を突き止めた悟獄丸はそれ以上何も言わずに一気に距離を詰めると同時、思いきり拳をその存在の居る場所へ向け振り切った。


 悟獄丸の拳が空を切ったかと思われたが、彼には壁を殴ったような手応えを感じるのだった。そしてその空気の壁のようなモノがあっさりと崩れ去り、悟獄丸の前にその襲撃者が姿を現し始めた。


「これは驚いたな、まさかこんな物理的な攻撃で私の『結界』を粉砕して見せるとは。完全に姿や『魔力』を掻き消していてもお前には感知出来るのか……。やはり神斗にしてもそうだが、妖魔神と名乗るだけあって規格外の存在たちだ」


 ――悟獄丸を襲撃した存在は、妖魔召士の『シギン』であった。


 彼は山の頂で一度悟獄丸に攻撃を仕掛けた時、自分の魔力の残滓を予め悟獄丸に残しておき、その自身の魔力を目印にして、この場に『空間魔法』で距離を狭めて近づいたのであった。


 そして更に『空間魔法』だけを用いたのではなく、念のために『結界』を張って自分の居場所を誤魔化して攻撃を行ったのだが、まず間違いなく居場所までは探られないだろうと考えたその場所まで悟獄丸に突きとめられて攻撃を行われた為、シギンは想定外の攻撃に僅かながらに驚かされてしまうのだった。


「その魔力……。お前、山の頂で七耶咫の姿だった奴だな? なるほど、お前が七耶咫に化けていたってわけかよ」


 神斗ほどに『魔』の技法に長けているわけではない悟獄丸は、七耶咫を『魔』の『力』で操っていたとまでは思い至らず、単に七耶咫に化けて現れていたと考えたようである。


「厳密には化けていたわけではなく、妖狐の精神の深層の奥に穴を開けて、本人ですら気付かない内に入り込んで無理やり同居を行っていただけだが、まぁお前の言いたい事の内容の本質的には間違ってはいないな」


「ちっ! てめぇも神斗みたいに回りくどい言い方をしやがる野郎だな? もっと分かりやすく話が出来ねぇのかよ! めんどくせぇな」


「ふふっ、悪いな。どうやら『魔』というモノに対して向き合い続けると、その荒唐無稽な概念を頭で認識している事を無理やりに言語化して第三者に伝えようと努力した結果、こういった話し方になってしまうのだ」


 本来、この『魔』の概念というモノは、研究する本人が独自に理解を行うモノであり、この得た知識の概念思想を知り得ない他者と共感を行う事は非常に困難な事である為、無理やり概念思想を翻訳して、境地に辿り着いていない者と疎通を図ろうとすれば、図式を在るべき姿のまま表現化してしまう為に回りくどくなってしまうのであった。


 悟獄丸のような『感覚』で『魔』を使うような存在には、概念を独自の式に当てはめて理解を行う理論派の神斗やシギンの説明が非常に苦手な様子である。


「まぁ、お前が何者だろうとか、七耶咫を一体どうしやがったとか色々と聞きたい事はあるけどよ、その前にてめぇに言っておきたいことがある」


 ――お前、何度も何度も誰に喧嘩売ってるつもりだよ?


 その悟獄丸の言葉は、先程までのように怒鳴るようにして吐いた言葉ではなく、淡々と用意された台詞を読み上げるかのような静かなものであった――。

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