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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1673.魔の技法、透過の応酬

 自身の放った神域魔法の反動を利用して恐ろしい加速を身につけながら、一気に神斗の『魔力波』に向かっていくが勢いを殺す真似をせず、エヴィは空気抵抗に逆らうように片目をうっすらと開けて、何とか太いビーム砲と見紛う『魔力波』に照準を合わせる。


 そしてそのままコンマ数秒というタイミングで、再び『空間除外(イェクス・クルード)』を用いて神斗の『魔力波』を次元の彼方へと消し飛ばすと、そこから更に勢いそのままにエヴィは『高速転移』を使うのだった。


 …………


「なっ!?」


 忽然と自身の放った『魔力波』が消し去られたが、流石に一度目と同様に何らかの方法で消し去られたのだとは理解する。


 だが、彼は『(ことわり)』や『魔法』が存在しない世界に生きてきた為に、この『魔』のカラクリ自体には理解が出来ておらず、それを理解する間を与えられぬ前に、一瞬の内に大魔王エヴィに間合いに入られてしまい、その事を考えている余裕がなくなってしまうのだった。


 ――しかしそれでも間合いに入られてからの神斗の動きは、愕然と消し去られた『魔力波』を眺めていた時とは異なり、やるべき事を考える前に無意識に身体が行い始めるのだった。


 …………


 大魔王エヴィは狙い通りに神斗の懐へと入り込む事に成功し、当初の目的通りに神斗の『耐魔力』を一般人以下にまで失わせようと手を神斗に伸ばした。


 彼の『呪法』である『呪蝕(カース・エクリプス)』は、対象の耐魔力を一定時間ではあるが『魔』を携わっていない一般人以下にまで低下させる事を可能とする。


 戦闘中にこの『呪法』を受ければ相当の不利を被り、下手をすればそのまま勝負が決まってしまう程の影響が出る。それも戦っている相手は別世界の『(ことわり)』や『魔法』を熟知している魔族、それも長く『魔』に携わってきた大魔王である。一度でも耐魔力を失えば、あらゆる『魔法』を用いて神斗を仕留めようとするだろう。


 この『呪法』を成立させるには、直接相手の身体に触れなければならず、如何に上手く懐に入るかが懸念点であったが、エヴィは策を用いて上手く神斗に接近して見せた。


 後は、耐魔力を失わせて『極大魔法』を放つ事で勝利を確定させられるだろう――。


 手早くエヴィは神斗の首を掴もうと手を伸ばした。


 ――しかし、その瞬間であった。


 首を掴もうとするエヴィの手を逆に神斗は右手で掴んでみせた。


 神斗は恐るべき速度で迫ってきたエヴィに驚きの表情を見せたままだった為、エヴィの手を掴んだ事は無意識上の咄嗟の判断であったのだろう。


「ちっ!」


(首を直接へし折る事は防がれたが、逆に手を掴んできた事は好都合だ! このまま一気に『呪蝕』で耐魔力を……!)


 最善は首をへし折る事にあったが、それでも狙い通りに相手に触れる事には成功した。相手が『アレルバレル』の『魔界』に存在する力ある魔族達であれば、即座にエヴィに掴まれた自身の手を自ら切り離して、エヴィの呪いから逃れようとするところだろうが、この『ノックス』の世界であれば咄嗟にそんな対策は思いつかないだろう。


 何をされるか分からない中では、取れる対抗策は限られてくる筈だと考えて、エヴィはそのまま当初の狙い通りに『呪蝕(カース・エクリプス)』を行使するのだった。


 ――だが、エヴィが『呪蝕(カース・エクリプス)』を使った瞬間に、彼自身が苦悩の表情を浮かべる事となった。


「なっ――!?」


「ふふっ、先程のは本当に素晴らしい動きだったよ。君が私に触れようとするまでその接近に気づけなかった程だった。だけどその後がいけないね。安易に自分にも影響を来すような『呪法』を用いた事は浅慮だと謂わざるを得ないよ? 特に私達『妖魔神』にはね」


「くっ、くそっ!」


 エヴィは自身の耐魔力が急激に失われていく感覚を覚えると同時、直ぐに自分の姿を砂へと変えてそのまま逃げ出そうとする。


 ――しかし、全身を砂へ変えようとしたエヴィだが、神斗に掴まれている手だけが砂に変える事が出来ず、その場から離れる事が出来なかった。


「ふふっ! 成程、成程。君のその自分の姿を砂に変える技法も、あの人間と同様に『透過』技法が用いられていたわけか」


 エヴィの手を掴んでいた神斗の右手が紫色の『魔力』に包まれており、どうやらこれは『透過』技法が使われているのだと彼は理解するのだった。


「カラクリを理解すれば後は簡単な事だ。今度は君に驚いてもらおうかな?」


『透過』によって動きを封じられたエヴィは、更に自分自身の呪いによって、自らの耐魔力が無に等しい事を自覚して、これまでこの世界で見せた事のない程の焦る表情を浮かべるのだった。


(ま、まずい! 僕が全力で離れようと『透過』を展開しているのに、コイツはそんな僕の『透過(とうか)』を上回る『透過』技法で封じてくる。このままだと復活もできな……――)


 そこまで思考が行き届くと同時、エヴィは用意していた二体の人形が、彼に遅れてこの場に辿り着くのを視界に捉えた。


(これだ……!)


「――()ぜろ!」


 最早一刻の猶予もないと判断したエヴィは、目の前で膨大な『魔力』を展開している神斗と、おかっぱ頭の二体の人形を見比べるように視線を行き来させた直後、直ぐに人形達に命令を口にするのだった。

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