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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1685/2233

1668.最後に待つモノは

 神斗がイダラマの『透過』に対して、いくら『魔力』だけを高めても完全回避を行われるという事を理解し、これ以上は『魔』の領域を用いて干渉をしなければ突破できないと認めた。


 そして神斗もまた本来の『透過』技法を混ぜ合わせ始めた事で、その効果がイダラマに対して如実に現れ始めたのであった。


 …………


「おいおい神斗、そこまでしなきゃいけない程かよ……!」


 神斗と同じ『妖魔神』である悟獄丸は、戦闘が始まってから直ぐに七尾の妖狐である『七耶咫(なやた)』の居る場所へと移動を行い、何度も神斗の放つ『魔力波』による被害が『妖魔山』に出ないようにと相殺を行っていたのだが、その時でさえ声をあげなかったというのに、ここにきて『イダラマ』の『魔利薄過(まりはくか)』に対する策を出した事で、初めて驚くような声をあげるのだった。


 悟獄丸の隣に居る妖狐の『七耶咫』は無言のまま、視線を赤い狩衣を纏うイダラマに向け続けていた。


「ていうかお前、さっきまで慌てた様子で戦闘を眺めていた癖によ、今はえらく余裕じゃねぇか?」


 そんな七耶咫を横目で一瞥した悟獄丸は、静かにそう告げる。


「……」


 しかしいつもであれば直ぐに、目上の存在である『妖魔神』の悟獄丸に返事をする筈の七耶咫だが、今回はその悟獄丸の言葉を無視をするように、ひたすらにイダラマの『魔利薄過』の状態を見続けていた。そしてそれは何かタイミングを図っているようにも思える視線だった。


「神斗が言うから庇ってやるが、次のアイツの一撃はさっきの威力の比じゃねぇぞ? それも『透過』を用いた一撃だ。あの人間が使っている『透過』の完全回避を貫く程の密度を込めた『透過』だからな、中々拝めるモンじゃねぇ。いい機会だから、お前もしっかり見ておけよ!」


「……」


「ちっ、全く、()()()()()()()()()!」


 悟獄丸は舌打ちをして、七耶咫の視線を追うように『イダラマ』の方へと向け直すのだった。


 …………


「さて、待たせたね。君の『透過』が予想以上に素晴らしいモノだったから、こちらも相応のモノにする為に、相当に時間が掛かってしまったよ。君がその『透過』を維持する為に、他の行動を制限しなければならないようで良かった」


 神斗はイダラマの『魔利薄過』を素晴らしい『透過』の研究成果だと褒めた上で、それは『その効果は認めるけど戦闘に利用するには、まだまだ不十分で改良の余地があるだろう』と暗に伝えたようであった。


 それは単なるアドバイスのつもりなのか、それとも『魔』全体から見たらまだまだ『透過』の完成には程遠いという忠告をしているつもりなのか。


 どういう意図なのかは分からなかったが、どちらにせよ今の『イダラマ』にはそんな事を深く考えている余裕はなく、迫りくる死に対して、どう対処をすればいいかという事に意識を割かされてしまっているのだった。


 神斗の目が光を放っている。それは魔族や人間達の扱う『魔瞳(まどう)』というよりかは、全身を覆ったり右手に集約させる時の『魔力コントロール』を行う紫色をしているようであった。


 そしてその目が細められたと同時、一際強い光が右手から放たれたとイダラマに感じられた瞬間、その右手からこれまでとは比較にならない速度の『魔力波』が彼の元へと向かっていくのであった。


 現在もイダラマは『魔利薄過』の効力が発揮されており、普段通りであれば相手が如何に膨大な『魔力』を伴った攻撃を放ってきたとしても確実に回避を行い、無傷で素通りさせる事を可能とするが、今回は先程の掠らされた事を踏まえると、普段通りに回避を行えるとはいえないだろう。


 しかし今更『魔利薄過』を解除したところで、もうこの恐ろしい速度の『魔力波』から逃れる事は不可能に近いだろう。決断をするにはあまりにも遅すぎたといえるが、先に解除をする決断をしていたところで、結局は遅かれ早かれ圧倒的な力の差がある『妖魔神』にはやられていただろう。


 ――つまるところ、どのような選択を取ったとしても現時点では『イダラマ』に勝ち目はなかったのである。


(まいった……。これが、分相応……という事だろうな。認められるような言葉に舞い上がってはいたが、詰まるところ奴らからすれば、取るに足らない人間が、自分達の考えているより少しばかり変わった行動をして見せたとい考えたに過ぎず、決して私が奴ら『妖魔神』にとって脅威に映ったと認めたわけではなかったのだ)


 強さという意味が含まれた『魔力』ではサイヨウやシギンに及ばず、妖魔達に対してあまりに寿命が短い人間という種族に諦観し、自らの貴重な年月を掛けて研鑽、研究の末に独自で編み出した最高傑作の術もまた、結局はあっさりとそれ以上の才覚や寿命を持つ者に凌駕されてしまう。


(は、はは……。わ、私のような凡人がいくら足掻こうとも、結局は本当に秀でている者に勝てる道理などなかったのだ。何と無駄な事をしたものよ。け、結局はいくら努力を積み重ねたとしても最後に待つモノは……っ!)


 神斗の『魔力波』はもう、イダラマの直ぐ傍まで迫って来ている。彼の『魔利薄過』の効力が見事に発揮されなければ、今更避ける事などは出来ないだろう。


 同じ妖魔神である『悟獄丸』でさえ、神斗の『透過』が用いられた『魔力波』が、イダラマという人間を消滅させると信じて疑わなかった。


 だが、その時であった――。


 ――『君が辿り着いた透過は、本当に見事なモノなんだよ。足りないモノはほんの少しだけだからさ、全てが無駄だったと思うような、そんな悲しい顔をしないでよ、イダラマ』。


 人生を懸けてやってきた事が全て無駄だったと、再び諦観という海で溺れかけていたイダラマの耳に、そんな言葉が聴こえてきたと同時、一体の『大魔王』が迫りくる神斗の『魔力波』から守るように現れたのだった。


 ……

 ……

 ……

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