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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1643.覚悟の表れと同種のシンパシー

 そして深夜でのヌーとの会話から数時間が経ち、ゲンロクの里へと向かう時間となった。このままソフィの『高等移動呪文(アポイント)』でゲンロク達の元へと向かったその後、前回ヒノエと共に向かった『コウヒョウ』の町へと(おもむ)き、その足で『妖魔山』へと向かう事となる。


 当然ソフィはエヴィと再会を果たした後にまた、この『サカダイ』の町に向かった者達全員と戻って来るつもりではある。だが、この場に居る者達を見るに、この任務を最後の任務だと考えて死の覚悟をしているという事が、その表情からヒシヒシと伝わってくるのだった。


 ソフィは元の『アレルバレル』の世界でこの空気を何度も身を以て味わってきた。常に他の大魔王一派と抗争状態になる事の多いあの世界では、常日頃から死の気配が配下達から漂ってきていたからである。


 かつての『戦争』となる事が決まったあの瞬間の軍の中で流れる空気間と、今の『妖魔山』の任務を前にした『妖魔退魔師』の隊士達の空気間が同一のモノにソフィは感じられたのであった。


 既にこの中にも残していく者達に対して、今後の事などを話終えている者も居るだろう。前回ソフィと共に『コウヒョウ』の町へと向かった『ヒノエ』組長もまた、その一人である事をソフィは知っている。


 彼女自身が『ヒナギク』という一組の『副組長』に万が一の場合は、組を任せるといった主旨の内容を伝えている事も理解していた。


 ――それはつまり、戻って来る意思はあるが、確実に戻れるとは思っていないというヒノエの心情が表れているといえよう。


 ソフィから見ても『ヒノエ』は『アレルバレル』の『魔界』でも、単独で生きていけるだろうと思える程に、その『力』に何一つ疑いを持っていない。


 だが、そんな彼女でさえ、命を捨てる覚悟を抱いてこの場に臨んでいる。それ程までに『妖魔山』という場所は危険な所なのだろう。


 ソフィは『妖魔退魔師』達だけではなく、共に『妖魔山』に向かう予定のある『イツキ』や『ヌー』といった者達にも視線を向けて色々と観察をしてみたが、やはりソフィとは気の持ちようが少しだけ違っていた。


 いつも飄々としている様子であった『イツキ』もその表情は真剣そのもので、いつもの冗談などを言い合うような表情が見られず、余裕がいつもよりないように感じられた。


 そして昨晩会話を交わした大魔王ヌーは、恐れとは少しまた違った気配を纏ってはいるモノの、こちらもまた普段通りという様子ではなく『妖魔山』を前に、何やら意気込んでいる様子である。


 ――まるでソフィの今の抱いている気分とは別物である。


 当然、大事な仲間である『エヴィ』を探すという気持ちを抱いている分、本来の彼よりは幾分か真剣に『妖魔山』という場所の事を考えてはいるのだが、 しかしそれでもソフィにとっては『妖魔山』という場所に対して、彼女達のように死の覚悟を抱かせる程までの場所という感覚はなく、それどころかワクワクさせてくれる娯楽施設に向かうような気分さえ抱いているのであった。


 やはり気の持ちよう次第でいくら強者同士であっても、ここまで覚悟の表れに違いが生じるという事なのだろうか。


(やはり我は何処か彼らとは違うのだろうか? エヴィの事がなければ『妖魔山』とやらに赴いた後は、その場に居る者達と快く手を合わせたいと考えているくらいだが……)


 しかしそう考えたソフィに向けられた一つの視線に気が付き、そちらの視線の先を一瞥すると、総長である『シゲン』がソフィを見て、何やら意味ありげな笑みを浮かべていた。


 その笑みを見てソフィは直ぐに悟った。


 ――ああ、こやつも我と同じ気持ちを抱いて、今この場に居るのだと。


 ソフィは先程まで少しだけ感じていた、この場にそぐわない『疎外感』のようなモノが綺麗さっぱりと消え去ったのを感じた。


 そしてソフィもシゲンに軽く首を縦に振って頷いて見せた後、同種の笑みを返すのだった。


 ソフィとシゲンが何やら笑みを浮かべているのを瞬時に感じ取った、副総長とミスズと大魔王ヌーもまた、この両者同士で視線を交差させて溜息に近い苦笑いを浮かべ合っていた。


 どうやらこちらも互いに『シンパシー』のようなモノを感じ取ったのだろう。それもまた傍から見れば同種のよく似た笑みであった。


 そして気が解れたのか、こほんと咳払いを一つした後にミスズは、顔をあげて集まった者達の顔を一通り見渡して口を開くのだった。

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