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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1638.ヒノエの憶測

「全く、一体イダラマ殿は何処まで関わっていて、何が狙いなんだろうな……」


 ヒノエはこれ見よがしに、大きく溜息を吐きながらそう言った。まだイダラマとコウエンが繋がっているとは限らないが、ここまで偶然が重なるとは考え難い。


 元々、彼女達『サカダイ』の『妖魔退魔師』組織に『妖魔山』の管理権を『ゲンロク』から移させるような提案をしたのも『イダラマ』からだった。イダラマにとっては少しでも『妖魔山』に侵入しやすいように、先を見ての仕組んだ行動だったのだろう。


 『妖魔退魔師』組織と『妖魔召士』組織の会合が長引く事も念頭に入れて、自分達はさっさと提案を提示して即日『サカダイ』の町から出立してその足で『妖魔山』へと向かう。


 落ち度がある側の『妖魔召士』組織が風下に立つ以上、山の管理権を移せという『妖魔退魔師』側の提案を突っぱねる事は難しい。流石にあっさりとはゲンロク達も管理権を妖魔退魔師側に移す事をしないだろうが、代替案を考える間はこれまでの管理体制維持のようにはいかず、組織としても最低限の『結界』と見張りを置いて、焦点となる妖魔山から組織の人間を遠ざけざるを得ないだろう。


 つまり『イダラマ』はその間に『コウエン』達を含めた戦力を集めつつ機を待ち、完全に管理体制が移った段階で妖魔山の侵入を決行、更には『コウエン』一派を利用し、守旧派の『サクジ』達を『サカダイ』の町の襲撃させる事で自分達に向けられる目を少しでも避けたというところだろうと、ヒノエはそう結論付けるのだった。


 ヒノエはそこまでしてイダラマが、妖魔山で何を為そうとしているかまでは分からなかったが、妖魔山の侵入の為の至るまでの手順は、あたらずとも遠からずだろうと考えたようである。


「ところでお主、ここ最近で他の赤い狩衣を着た妖魔召士が、青い髪の少年を連れているところなどは見かけなかったか? 時期的にそのコウエンや妖狐を使って町を襲わせた、妖魔召士達が来る前くらいだと思うのだが」


「青い髪の少年……? いや、私はその少年を見た事はないが、北門の暴れた『妖魔召士』様とは別件で、この町の中央にある酒場で死人が出る程の大きな騒ぎがありましてな、その場に赤い狩衣を着た『妖魔召士』様が居合わせたという話はありました。もしかすると同じ『妖魔召士』一派の仕業かもしれませんが、その『妖魔召士』様には剣客の護衛も大勢居たようなのです。もしかするとその中に居たのかもしれませんね」


「ふーむ、エヴィは()()()()()()()()()()


 ソフィの呟きを聴きながらヒノエは、顎に手を宛てながら何やら考える素振りを見せた。


(私らの前に姿を見せた時、イダラマ殿にはエヴィと言う少年以外にも護衛が居たという話は探らせていた『ヒナギク』の報告からも一致する。確か剣客風の男の耳には青いピアス、それもかつて『サカダイ』の本部付けだった男に様相が似ているという報告だった。帰ったら詳しくその話をヒナギクから聞いておくか)


 組長格であるヒノエは自分の組員以外、それも本部付けとはいっても『妖魔退魔師衆』ですらないような、ただのいち隊士の事を覚えてはいなかったが、彼女が指示した副組長である『ヒナギク』からその存在の事は聴いていた為、護衛の剣客と聞いてその時の言葉を思い出したようであった。


「ソフィ殿、ひとまず『コウエン』殿がこの町に確かに居て、妖魔山に向かったという話は得られたんだ。我々も妖魔山に向かう以上、そこで真相は明らかに出来るだろう。この事は持ち帰って総長達に報告に戻ろう」


「うむ。場所は既に覚えたからな。次からは何人でも直ぐにこの場所に連れてこれる。それでは戻るとしようか」


 ヒノエはソフィの言葉に頷くと、次にウスイに視線を向けた。


「護衛隊長のウスイとか言ったな? お前のおかげで『コウエン』殿の居場所は『妖魔山』の中で間違いないと断定が出来た。礼を言う」


「お、お役に立てて良かったです!」


 ヒノエの感謝の言葉を聴いたウスイは、慌ててそう口にするのだった。


「お前の功績はしっかりと『特務(とくむ)』と『副総長』に伝えておく。新たな辞令が近々届くだろうから、楽しみにしていろ」


 この『コウヒョウ』の町に派遣されているという事は、単なる地方に派遣されている予備群よりは地位は高いだろうが、それでも本部付けの予備群よりその地位は明確に下である。


 だが、今回のヒノエ達に対して行った報告によって、最高幹部の組長格、それも一組組長のヒノエから直々に『特務』と『副総長』に功績を伝えられると明確に口にされた。


 それ程までに『妖魔退魔師』本部襲撃の一派の旗頭であった『コウエン』の居場所を明確にする事が出来た功績は、地方予備群から本部付け予備群に格上げされる程度には大きかったのだろう。


 つまりは、この瞬間に『ウスイ』の出世が約束されたようなモノであった――。


「えっ!? は、ははっ! ありがとうございます!!」


 ウスイが頭を下げたところを見ていたヒノエだが、直ぐにソフィに視線を向けた。


「ソフィ殿、申し訳ない。直ぐに『コウエン』殿達の事をシゲン総長達に伝えさせて欲しい、帰りはあの術をお願い出来るだろうか?」


「構わぬ」


「感謝する、ソフィ殿! それじゃあなウスイ」


「え……? は、はい……」


 ヒノエは出されていたお茶を飲み干すと、ソフィと共に詰所から出ていく。


 ――『高等移動呪文(アポイント)』。


 慌ててウスイもその後を追ったが、何やらソフィと名乗る青年が呟くと、瞬く間にその場から二人の姿が消えた事で、ウスイはその場で驚きのあまり、尻餅をついて倒れるのだった。


「あ、あわわわっ! き、消えっ……、た!?」


 ウスイは何度も袖口で目を擦りながら、居なくなったヒノエ達の居た場所と、飛び去った上空を見上げるのだった。

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