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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1636.勘違い

 ソフィとヒノエは屋台での食事で腹ごしらえを終えた後、個人でやっている露店や、複数の商売人が持ち込んでいる珍しい屋根付き露店等、時間が許す限りに色々と商品を見て回った。


 元々『アレルバレル』の世界では露店など見たことがないソフィだったが、彼も一度目の転移先の世界であった『リラリオ』の世界では、グランの町で懇意にしていた露店の『おやじ』が売っていた『レグランの実』などを買った事があり、露店の存在は知っていた。


 だが、この『ノックス』の世界の『コウヒョウ』の露店では食べ物だけではなく、子供達が好む花飾りといったモノから、大人が見て回っているような露店では刀なども露店に並んでいて、物珍しさでは『リラリオ』で見たモノより『ノックス』の方が(まさ)っていた。


 この世界でも本来ならば、刀や先程の露店で見た鞘などを含めた武具類はこういった露店ではなく、然るべき刀剣商と呼ばれる専門の店で品並べされているようなのだが、ヒノエ曰く妖魔山が近くにある影響か、この『コウヒョウ』の町だけは個人の持ち込みの露店商売人も、多々見受けられるとの事であった。


「まぁ、流石に全国から集まる商売の町とはいっても、こんな風に露店に並ぶような刀露店で掘り出し物なんてあるわけがなく、せいぜいが町民達が扱う脇差しくらいなモノ」とはヒノエの言葉であった。


 確かに『リラリオ』の世界であっても、冒険者達ではない一般の者達も身を守る為に、剣などを持っている者も居た。この世界では『魔物』ではなく『妖魔』ではあるが、襲ってこられた時に身を守る武具類も一定の需要はあるのだろう。


『妖魔退魔師』組織が大々的に『護衛』として『予備群』をあらゆる町に派遣するようになって久しいが、それでも数が行き届いているかと問われると怪しく、妖魔だけではなく、同じ人間同士でも強盗まがいの盗人なども居る事だろう。自分の身は自分で守らなくてはと考える者も多いようである。


 ヒノエは刀が置かれている『露店』を見て何やら物思いに耽っている様子だったが、やがて隣に居るソフィの存在を思い出したようではっとした表情になり、慌てて声を掛けてくるのだった。


「す、すまない、ソフィ殿。少し考え事をしてしまっていた。他の露店も見て回ろうか!」


「そのように我に気を遣わずとも構わぬぞ? 何か気になるモノがあったのであれば、ゆっくりと見てくれて構わぬ」


「ああ……。別に何か気に入ったモノがあって見ていたわけじゃないんだ」


 そう言ってゆっくりと歩き始めたヒノエの後ろをソフィもついていく。


「ただ、最近は『妖魔』の数も増えているし、私達が『妖魔山』の調査を行う事で少しでも減らせられるきっかけがあればと考えていたんだ……」


「ふむ……」


 そしてヒノエが見ている方向をソフィも眺め始める。その視線の先に山が見える。どうやらあれこそがここから近くにあるという『妖魔山』なのだろう。


「あ、あの……! し、失礼ですが、ヒノエ組長ですか?」


 ヒノエとソフィが『妖魔山』を見ていると、そこに声を掛けてくる者が居た。


「ん? そうだが、お前は誰だ?」


「こ、これは失礼しました! 私はこの町の『護衛隊』を任されている『予備群』のウスイと申します! 見回り中にヒノエ組長と(おも)しき御方をお見掛けしたもので、失礼を承知でお声を掛けさせて頂きました!」


「ああ、そうだったのか。悪いな、見回りの忙しい最中に」


「い、いえいえ! 『妖魔山』の調査の件は私共も伺っておりましたが、まだ先の事になるだろうというお話でしたもので……。も、もしや先日現れた『妖魔召士』と『妖狐』の襲撃の件で調査にこられたのでしょうか?」


「いや、今日はそこに居るソフィ殿と単に屋台と露店巡りをしていただけで仕事とは関係がないんだ」


「は、はぁ……。そ、そうでしたか」


 コウヒョウの護衛隊長のウスイと名乗った男は、ヒノエの紹介を受けてまじまじとソフィを見つめていたが、やがて何やらピンときたようでウスイは慌てて口を開いた(※リラリオの世界とは違い、この世界のソフィは本来の青年の姿をしている)。


「こ、これは失礼致しました! も、勿論この事は口外などしませんのでお許しください!」


「ちょ、ちょっと待て! お前、何か勘違いをしているだろう!?」


 そう言って、慌てて立ち去ろうとするウスイの手を強引に掴むヒノエだった。


「い、いえ! ヒノエ様の大事なひとときのお邪魔をするつもりはございませんので!」


「ば、馬鹿野郎! それが勘違いだって申しているんだ!」


 部下にソフィと逢瀬(おうせ)中だと勘違いされたヒノエは、顔を赤らめながらウスイの腕を力任せに捻り上げるのだった。


「あ、アイタタタ……っ!」


「「た、隊長! 大丈夫ですか!!」」


 そして護衛隊長であるウスイの異変を察知した他の護衛隊達が、慌ててヒノエとソフィの元に集まってくるのであった。

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