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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1635.ヒノエと露店巡り

 やがて町の門が開かれると、ヒノエがソフィの方を見て手招きをしてくる。どうやら話をつけてくれたのだろう。


 ソフィが門前まで行くと、門兵の一人が口を開いた。


「普段であればこの門を開放していて出入り自由なんだが、少し前にこの町に妖魔が現れて騒ぎになったのでな。先日からこのように門を閉めて出入りの制限をかける事となったんだ。不便をかけてすまないが、町を出る時はまた一声掛けてくれ」


「うむ、分かった」


「ああ、またもし妖魔が現れたらよ、私がたたっ斬ってやるから安心しな?」 


「はははっ! 勇ましい娘さんだ。その時は宜しく頼むよ」


 どうやらヒノエの事を知らないようで、この門兵は『妖魔退魔師』組織とは関わりの薄い、単なる名主から派遣された人間なのであろう。ヒノエはわざわざ自分が『()()退()()()()()名乗るような真似もせず、軽く頷いて町の中に入っていった。


「おーい、ソフィ殿! 早く早く!」


「うむ、今いく」


 ヒノエに先導されてソフィも町の中へと足を踏み出すと、門兵達はソフィに手を振った後、再び門を締め始めるのだった。


 町の中は活気づいており、何処を見ても人が溢れかえっていて、道端にはかつての『グラン』の町の広場のように露店が多く見られた。


 ソフィがこれだけ騒がしい町を見たのは、この『ノックス』の世界で初めてといえる程であった。


「おお……! 空から見た感じでは、お主達の『サカダイ』の町や『ケイノト』の町より小さい町かと思ったが、実際にこうしてみるとそうは感じられないな」


「この町にくればだいたい欲しいものは何でも揃うし、全国中から商売を行おう人が集まっているから場の雰囲気がそうさせているんだろうな。さて、早速色々と見て回ろうぜ、ソフィ殿!」


 どうやらヒノエもこの町の事を気に入っているようで、目をキラキラとさせながら立ち並ぶ露店を見渡していた。


「うむ、それでは我も色々と見て回るとしよう」


「ソフィ殿! まずは腹ごしらえといかねぇか? あっちからいい匂いがするんだ。きっと美味い屋台が立ち並んでるぜ!」


 そう言ってソフィが歩き始めると、何を思ったのかヒノエが後ろからソフィの腕を取ってそう言った。


「むっ、分かった」


「へへっ! そうこなくちゃな」


 ソフィの同意の言葉に顔を(ほころ)ばせながら、ソフィと腕を組んで歩き始めるヒノエだった。


 ……

 ……

 ……


 そして目当ての屋台の前に行くと、数人の客が丼に入った蕎麦を美味そうに食べているのが見えた。


「おお、あれは我もケイノトの食事処で食べた事があるな。確か『蕎麦(そば)』というモノだったか?」


「ああ、その通りだが……。そういえばソフィ殿達は別の世界から来たとか言ってたっけか。蕎麦は直ぐに食べられて腹持ちもいいから助かるんだよな。まぁ、しかし折角ならソフィ殿が食べた事のないモノを勧めたいところだな。ソフィ殿は何か食えないモンとかあるのか?」


 そう言ってヒノエはソフィを連れて隣の屋台へと移動を始める。どうやらソフィがすでに『蕎麦』を食していたと聴いて、別のモノを食べさせようと考えたのだろう。


「我は特に好き嫌いはないが、そう言えばヌーの奴が『はも』という魚の料理を食べているのを見て、少し食べてみたいと思っていたのだが……」


「魚か! よし、ちょっと待ってな!」


 そう言うとヒノエはソフィを蕎麦の屋台の前に置いたまま、屋台が立ち並ぶ道を一人でさっさと歩いて行ってしまった。


「むっ、行ってしまったか……」


 屋台が立ち並ぶこの道は、コウヒョウの町に入った門前より遥かに人が多く、ごった返しとなっている為に少し離れるとはぐれてしまうだろう。


 下手に動き回るのは得策ではないと判断し、ソフィは蕎麦屋台の前で待つ事にするのだった。


(しかしヒノエ殿は見た目はどこから見ても大人だが、その実子供のような一面も持ち合わせているな)


 ソフィの居るところから少しだけ離れた場所にいるヒノエの後ろ姿を見ながら、静かにそんな事を考えるソフィであった。


「おーい! ソフィ殿、こっち、こっち!」


 やがてヒノエは目当ての屋台を見つけたようで、大きな声でソフィを呼び始める。ソフィはそのヒノエの声を聴いて小さく笑うと、声の主の元にゆっくりと近づいていくのだった。


 そのヒノエの居る屋台の元に向かうと、直ぐに香ばしい匂いが漂ってきた。


 そしてヒノエの前に辿り着くと同時、ヒノエがソフィに何かを手渡してくるのだった。


「何なのだ、これは……?」


 何やらブツ切りにされた魚を焼いたモノが、串にさされた状態で皿にのっていた。


「へへっ、それはうなぎの蒲の穂焼きってやつだ。はもじゃねぇけど、ここでしか食べらんねぇんだとよ、だから是非ソフィ殿に食べてもらおうと思ってな!」


「ほう! これは中々に食欲をそそるモノだな。それでは頂いてみるとしよう」


 ソフィはヒノエに勧められるがまま、うなぎの蒲の穂焼き食べると、その目を見開いて驚くのだった。


「これは美味いな……!」


「そ、そうだろう! 『ケイノト』の町の『懐石(かいせき)』や『はも』料理に比べると、名主様達に受けが悪いみてぇだが、味は絶対に負けてねぇと私は思うんだ!」


 ソフィがヒノエの話を聴きながらも手を止めず、美味しそうに食べているのを見て、更にヒノエは上機嫌になっていく。どうやら余程にヒノエはこの屋台料理が好きだったようで、ソフィが『うなぎ』料理を褒めてくれたのが嬉しかったようである。


「ふふっ、ソフィ殿、私が好んでいる食べ物はまだまだあるんだ! 次はこっちこっち!」


 再びソフィの腕を取ったかと思うと、別の屋台を指さしながらにこにこと笑いながら引っ張っていく。


「ちょ、ちょっと待つのだ……! 串が落ちる!」


 ソフィが皿を落とさぬようにしっかりと持ち直すが、それを見ながらもヒノエは満面の笑みを浮かべるのだった。

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