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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1632.空からの眺め

 この『サカダイ』の町を最初に訪れた時に通った橋の先で、ソフィは一人待ち人を待つ。


 まだ肌寒い寒さが残る門の外、振り返れば歩幅の合わない石で出来た階段の先に、サカダイの町の『一の門』が見える。ソフィは再び視線を前に戻して、ここから相当に縦に長く幅が狭い橋を見つめるのだった。


 思い起こせばこの橋の見える先、エイジ達と別れた場所付近の事だが、ここに来た時もヌーとセルバスの魔王二人は何やら言い争いをしていて橋の上から池に二度程『セルバス』は叩き落されていた。


 その時の寸劇じみたヌー達のやり取りが脳裏に浮かび、ずぶ濡れになりながらヌーに文句を言っていたセルバスの姿が思い出されてしまい、静かにソフィは一人笑うのだった。


「クックック、奴らは本当にいい関係だ」


 あの『アレルバレル』の世界の『魔界』で大半の魔族からも恐れられていた大魔王ヌーだが、性格の方も相当に気難しく、彼と親し気に話せる存在は少ない。そんなヌーに対して堂々と言い合える大魔王セルバスは珍しいといえるだろう。


 ヌーはセルバスに暴言じみた言葉や文句を多く口にはしているが、セルバスが本気で辛そうな表情を浮かべた時は直ぐに察して言葉を噤む。


 どうやら大魔王ヌーは、間違いなく大魔王セルバスを気に入っているのだろう。


 前回も『代替身体(だいたいしんたい)』となったセルバスに対し、少し言い過ぎたと判断した時は直ぐに彼は非を認めていたようにソフィには思えたし、ヌーがセルバスを気に入っているだろうと窺わせるには十分すぎる程に色々と心当たりがある。


 普通であれば当たり前に思えるような事であっても、その相手が大魔王ヌーなのだと考えれば、当然に意味は変わる。そんな中で普段からあれ程自然体で言い合えているヌーとセルバスは、戦友でもあり、気が置けない者同士である事の証左なのだろう。


「ソフィ殿、お待たせした」


 ソフィがそんな事を考えていると、背後から声を掛けられた。声の主は『妖魔退魔師』の一組の組長『ヒノエ』であった。


「まだ待ち合わせの時間よりもだいぶ早いようだが、お主の用事はちゃんと済ませられたのだろうか? 我に気を遣って早めに来る必要はないのだぞ?」


「ふふっ! 心配ご無用だ、ソフィ殿。すでにだいたいの事は『妖魔山』に向かうと決まった時に組員達には伝えてあったのでな。それでも最後かもしれないとなりゃ、やっぱりうちの副組長に一言二言伝えておきたかったまでなんだ。だが、それでも待たせて申し訳なかった、ソフィ殿!」


 どうやら寒空の下で外で待たせてしまった事を、素直に悪いと彼女は考えていたのだろう。そう言ってヒノエはソフィに頭を下げるのだった。


「いや、謝る必要はないぞ、ヒノエ殿。我もここ最近はヌーやセルバス達と、行動を共にする事も多かったものでな、一人で色々と考える時間を貰えたことは良かったと考えていたところだ」


 そう告げるソフィだが、実際にはその常に共に居る同行者達の寸劇を思い出して笑っていたのだが、あえてそんな事を口にする必要はないだろう。


 その言葉を聴いたヒノエは、ソフィがどんな事を考えていたのかまでは分からなかったが、そう話すソフィがいつもより少しだけ上機嫌の様子なのが見て取れたようで、言葉通りに受け取るのだった。


「ははっ! そうかい? まぁ、誰にでも一人になる時間ってのは必要だからな。そ、それよりさ、ソフィ殿!」


「む?」


 突然に何か慌てた様子を見せ始めたヒノエに、ソフィは何かあったのかと疑問の声をあげる。


「ソフィ殿は、私を担いで空を飛ぶって事なんだよな? だ、だったらよ、もっと軽装にしてきた方が良いか? ここから『コウヒョウ』の町まではだいぶ離れてるしよ……!」


「クックック!」


 先程の慌てた様子から、一体どんな心配事を抱えているのかと考えたソフィだが、ヒノエの口から出た些末な心配事に思わず笑ってしまうのだった。


「な、何でいきなり笑って……、おぁ!?」


 ソフィはヒノエの身体を優しく掴むと、ゆっくりと空へと浮き上がるのだった。


「お主は空から見える景色を見るのが楽しみだと言っておったな?」


「わっ、わわっ!?」


 少しずつ地面が遠ざかっていき、自分が空に浮いているのだと自覚したヒノエは、普段あまり感じない恐怖心を感じて、彼女は手を回してソフィの身体にしがみつくのだった。


「何があってもお主を我が守ってやるから、安心して空からの景色を存分に楽しむが良いぞ? よく景色が見えるように、ゆっくりと空を飛んでやろう!」


「う、うおおっ! す、すげぇ!!」


 ソフィに優しく身体を抱かれながら、耳元でそんな言葉を聞いたヒノエは、空に浮いているという恐怖心が少しだけやわらぎ、辺りを見回す余裕が生まれたようで、自分達の住んでいる『サカダイ』の町を上空から見下ろして驚きの声をあげるのだった。


「移動の際は目立たぬようにもう少し浮上しようと思うが安全は保証しよう。さて、それでは案内を頼んでもよいかな?」


「あ、ああ! あそこが『一の門』の場所だから、えっと……、ソフィ殿、このままこっちの方角に真っすぐ行ってくれ!」


「うむ、了解した! それでは、しっかりと掴まっておるのだぞ!」


 そう告げると同時、更にソフィは高度を上げると、ヒノエが指し示した方角へと移動を開始するのであった。


 ソフィの言葉通り、彼の腰をぎゅっと掴みながらもヒノエは、嬉しそうな笑みを浮かべながら感動を露にするのだった。

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