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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1643/2240

1626.妖魔山にある鬼人の集落

「それではソフィ殿にはまことに申し訳ないのですが、この後に会議室でのシゲン総長による最終的な計画の確認と、今後の準備を終えた後に再び、あの長距離の移動を可能とする『魔法』をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」


「うむ、勿論構わぬよ。向かう先は『ゲンロク』殿達の居る里、という事でよいのだろう?」


「はいっ! その通りです。こちらで準備が整い次第、ゲンロク殿の里でエイジ殿達と合流を行います。そしてその後に里から比較的近い場所にある『コウヒョウ』の町へと向かい、その後に『妖魔山』へと向かう予定です」


 どうやらミスズ殿の話によれば、すでに細かな旅路の計画も随所に織り込んでいるとの事であった。


「では、シゲン総長の待つ会議室にご案内致しますので、移動をよろしくお願いします」


「うむ、分かった」


 ソフィの同意の言葉を聴いて笑顔を向けていたミスズだが、そこでふとシグレの方を一瞥する。


「?」


「シグレ、後で個人的に話があるのだけど、少しだけ時間を頂けるかしら?」


「え? は、はい、分かりました」


 今はもうシグレはミスズの部下というわけではない為、こうして客分となった彼女に確認と許可を取るミスズであった。


「ありがとう。それでは皆さん、準備が宜しければご案内致します」 


 ちらりとソフィはヌー達に視線を向けると、ヌーやテア達も頷きを返すのだった。


「――?」(ソフィ、このまま私もついていっていいのかしら?)


「ああ、別に構わぬのではないか? 今更ここの者達も何も言ってはこぬであろうしな」


「――」(うふふ、今回は長く傍に居られるから、とても嬉しいわ)


『魔神』はそう言って、恍惚とした表情を浮かべるのだった。


 ……

 ……

 ……


 そうしてソフィ達はミスズの案内で総長シゲンの待つ会議室へと通された。


 この部屋も少し前までは襲撃のせいで至るところに血痕が残されて血の匂いが充満していた為、重要な話し合いが行われる際は、別室にあるシゲンの使っていた書斎で行われていたのだが、今はようやく元通りといえる状況に戻り、やっと本来の会議室としての役割を担える部屋へと戻せた様子であった。


 会議室に居た者達は、ソフィ達が入ってきた事に気づくと、皆一様にそちらに注目する。


 その場に居た者は総長であるシゲンに、最高幹部の各組長のヒノエ、スオウ、キョウカ。そしてこの『サカダイ』の町まで、キョウカの部下達を運んできた『鬼人』の姿もあった。


『鬼人』はソフィの顔を一瞥すると、挨拶代わりに軽く手を挙げるのだった。


 この『鬼人』は同胞を探しに人里に降りてきて、そのまま同胞を共に探してもらうという条件で『妖魔召士』の『式』となる事を了承して『妖魔召士』の人間と契約を結んだのだが、結局は同胞を見つけられぬまま、その契約を交わした『妖魔召士』に、妖魔退魔師の組長格の一人である『キョウカ』と戦わされて捨て駒にされかけた。


 紆余曲折の末、その戦ったキョウカに命を救われた彼は『妖魔召士』を見限り、恩人であるキョウカの頼みで『妖魔退魔師』の組員を連れてこのサカダイの町に訪れたところに何の運命の悪戯か、これまで長年見つけられなかった同胞の所在をあっさりとソフィ達から報告を受けた事で知る事になった。


 そしてこの『妖魔退魔師』組織の総長の計らいによって、この『鬼人』はこの町で自由に過ごす事が出来るようになり、共に『妖魔山』へと同行を許されて今に至るのであった。


「総長、ソフィ殿達をお連れ致しました!」


「ああ、ご苦労だった。ソフィ殿達も休んでいるところに呼びつけてしまい、申し訳ない」 


 シゲンはその場で立ち上がると、ソフィ達に頭を下げてそう告げるのだった。


「いやいや、頭を上げてくれシゲン殿。こちらこそ不便なく毎日を過ごさせてもらっているのだ。こちらこそ感謝している」


 そう言ってソフィが笑みを浮かべると『シゲン』は頭を上げた後に笑みを向ける。そしてソフィ達に椅子に座るように促すのだった。


 ソフィやヌー達が席に着いたのを見計らい、副総長のミスズが口を開くのだった――。


 ……

 ……

 ……


 ――時は少し遡り、ソフィ達がまだ『サカダイ』の町に来る前の出来事である。


 広大な山の中、その山の麓からだいぶ登ったところに大きな川が流れている場所があり、その周りには色づいた木々が取り囲み、その木々に覆い隠される形で家屋が立ち並ぶ集落があった。


 そこに居る者達は傍から見れば人間達が住んでいるように見えるが、彼らは『妖魔』であり、この『妖魔山』で生活を営む『鬼人』達であった。


 その場所は昔から『鬼人』達の縄張りとされており、人間達はおろか周りの『妖魔』達さえ、あまり近づこうとしないため、鬼人達にとっては楽園と呼べるような場所であった。


 そんな場所に『鬼人』ではないれっきとした人間が、傍に居る小さな子供の『鬼人』と談笑しながら、井戸の水を汲み上げていた。


「今日はいい天気だね」


「最近は雨が続いていたから、ようやく外に出られて嬉しい!」


「はははっ、そうだね」


「ねっ、イバキ兄ちゃん! 早く集落に戻ってボール遊びしようよ! 久しぶりだから、待ちきれないよ!」


 子供の『鬼人』にイバキと呼ばれた青年は、首を縦に振った。


「うん、いいよ。これを運び終えたら一緒に遊ぼうか」


「やったー!」


 その『鬼人』の子供と親し気に会話をしている『人間』の名は『イバキ』。


 かつては『ケイノト』の町にある『退魔組』に所属していた『特別退魔士(とくたいま)』であった。


 彼は『ケイノト』の現場の頭領であった『サテツ』の命令で『加護の森』に現れた二人組の調査を行うように指示されて、そのまま『加護の森』の先にある『妖魔退魔師』組織が管理する土地の中で『イダラマ』達に襲撃されてしまい、町に戻れぬまま彼の『式』である『劉鷺(りゅうさぎ)』の手によって救われた後、この『妖魔山』の『鬼人』の集落へと運び込まれたのであった。


 当初は『人間』、それも『退魔士』であるイバキを集落に入れる事に反対だったのだが、彼の『式』であった『鷺』の『劉鷺(りゅうさぎ)』は、どうやら集落の『鬼人』との達の間では、それなりに親交のあった妖魔の種族だったようで、彼の説得もあり渋々ではあるが、この鬼人達の集落で受け入れられる事となった。


 ……

 ……

 ……


 イバキは集落の『鬼人』の子供達と日が暮れるまで遊んだ後、いつものように『劉鷺(りゅうさぎ)』たちと食事をとろうといつも世話になっている『鬼人』の居る家に戻ろうとした時、ふと口喧嘩をするような声が聴こえてきたため、彼はその場で足を止めるのだった。


 彼の居る場所からは少し離れている庭先、会話を行っていたのは、この集落でいつもイバキと遊んでいる子供の親である『鬼人』と、この集落ではあまり見た事のない若い女の『鬼人』であった。

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