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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1624.大魔王同士の口喧嘩

 先に『妖魔山』を登り始めた『イダラマ』達が『帝楽智(ていらくち)』と交戦を行い始めた頃、ソフィ達は『コウエン』達の足取りを必死に追っているシゲンやミスズ達からの報告を大人しく宛がわれた部屋で待っていた。


 その部屋には現在、ソフィの他に『力の魔神』や大魔王『ヌー』、そしてそのヌーと契約を交わしている『テア』、更には大魔王『セルバス』に加えて新たに予備群であった『シグレ』の姿もあった。


 何とこの『シグレ』はセルバスの告白を受けたらしく、今では片時も離れずにセルバスに寄り添うように毎日を過ごしているのだった。


 そんなシグレであるが、どうやら過去にコウゾウを失った事による反動なのか、大事な人をこれ以上失いたくないと決心をしたようで、セルバスからの告白を受けたその日の内に『二組』の組長『スオウ』を通じて、副総長ミスズと総長シゲンの前で、予備群を辞めるという旨を伝えてしまったのだった。


 副総長ミスズにしてみればまさに()()()()であり、これから懸命に育てようと意気込んでいた大事な隊士からの突然の告白に、新たに新調したこれまたサイズの合っていない眼鏡がずり落ちるのも気にせず、何故だと狼狽してシグレに詰め寄っていた。


 ミスズはコウゾウからの手紙だけではなく、実際に自らもまたシグレの潜在能力を見抜いており、必ず『特務』で育て上げようと考えていたために、何とかして思い留まらせようとシグレを説得したのだが、頑なにシグレは言葉を撤回せず、言葉巧みにゲンロクを言い包めてみせた、手練手管のあの副総長ミスズが、シグレの説得では先に折れて諦めるという結果となってしまった。


 ミスズが今後シグレの扱いに対する魅力的な提案や、甘い言葉を向けてもシグレは首を縦には振らず、彼女がシグレを組織に留めようとすればする程に、シグレの気持ちがどんどんと遠のいていく様子を感じ取り、これはもう自分であってもどんな説得も無駄だと判断して諦めたのであった。


 それ程までにシグレの決意は固く、彼女は今ではもう、セルバス以外に眼中はないといった様相を見せているのだった。


 今でのシグレの扱いは、元予備群にして『二組』預かりの妖魔退魔師という肩書ではなく、ソフィ達と同じ総長シゲンの客分として扱われていた。


 つまり最高幹部を除いた他の『本部付け』の妖魔退魔師であっても、元同僚や部下という立場のシグレに頭が上がらず、命令を下すなどもっての他という立ち位置となっている。


 その証拠に他の『サカダイ』本部付けの妖魔退魔師の隊士がシグレの姿を見ると、直ぐに頭を下げて挨拶をしていく程である。


 …………


「ちっ! 仲が良いのは別に勝手だがよ、てめぇらもう少し同居人の俺達にも気を遣いやがれ! 毎日毎日、べたべたべたべた、甘い空気出されてたんじゃこっちはいい迷惑だ、反吐(へど)が出る!」


 そしてそんなセルバスとシグレの醸し出す甘い空気に耐えられなくなったのか、遂にヌーがブチぎれてしまうのだった。


「ああ!? 何を言っていやがる。てめぇの方こそ、今までそこに居る『死神』の『テア』って女と毎日よろしくやってただろうが! 鼻の下伸ばしてヘラヘラ笑ってた癖に、自分が同じ事やられてキレてんじゃねぇよ!」


「な、何だとてめぇ!! こ、こいつはそんなんじゃねぇよ! 論点をすり替えてんじゃねぇぞ、このクソ雑魚が!」


「あっ、てめぇ! また俺の事をクソ雑魚って言いやがったか! 前にも言っただろっ……――」


「馬鹿野郎! 今のてめぇは元の身体の時と大して変わらねぇ『魔力』してんじゃねぇか! 今更『代替身体』の時の話を持ち出してんじゃねぇよ、クソ雑魚!」


「な、なんだとぉ……!」


 注意のつもりで放った言葉の所為で、要らぬとばっちりを受けたヌーはセルバスを罵り始めるのだった。


 シグレはセルバスの傍でおろおろとし始めていたが、逆にヌーの傍に居るテアは、我関さずといった様子で呑気に口笛を吹いていた。


 どうやらこの状況に慣れた『テア』と、そうでない『シグレ』の差が、こういう時に見て取れるのだった。


 いつしかその言い争いが大きくなっていった事で、これまで『魔神』と会話を続けていたソフィが、見るに見兼ねて口を開くのだった。


「お主らが仲が良いのは分かったから、そろそろその辺でやめぬか。我々はあくまでも客分の身でここに居るのだぞ?」


「ああ!? ちっ……! わぁったよ、全くクソだりぃな」


「す、すみません、旦那!」


 大声で怒鳴り合っていた大魔王同士の口喧嘩は、あっさりとソフィの一声で大人しくなった。


 そして丁度部屋の中が静寂に包まれた後、部屋の扉を叩く音が聴こえてくるのであった――。


「入ってくれて構わぬよ」


 ノックの音にソフィが返事をすると、静かにその扉が開かれるのだった。

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