1620.禁止区域に居る者達の反応
どうやら『帝楽智』はこの場に居る『エヴィ』だけではなく、それを庇い立っている『イダラマ』達もろとも吹き飛ばそうというのだろう。
先程の一撃が完全に封じられたというわけではないが、それでも彼女の攻撃を僅かながらにとはいえ、軌道をずらされ凌がれた事によって、少なからず苛立ちがみられた。
本来ランク『9』とは『妖魔山』においても『禁止区域』に居る者達と遜色のない程の戦力値を有する。つまりイダラマは『帝楽智』の攻撃を防いだ事で、そんな『禁止区域』に居る者達の攻撃を凌いでみせたといっても過言ではないという事に繋がる。
それこそが天狗を束ねる頭領としての立場を度外視しても、妖魔山の『天魔』として納得がいかずに苛立ちを見せる要因なのだろう。
だからこそ、今度こそ『帝楽智』はあってはならない間違いを正すために、確実にイダラマの息の根を止めなければならない。
――『帝楽智』の纏う、鮮やかなその『青』こそは『瑠璃』の色の象徴。
この『ノックス』の世界であっても、これまで数百年、数千年といえる長い年月『青』の最終形のオーラとされてきた『力』である。
基となる『魔力値』を更に先程よりも高めて更には『青』で増幅された数値は5倍。
最早、今度こそ『イダラマ』に止められるわけがないといえる、ランク『9』の領域の真骨頂。
――その最大の一撃が今、帝楽智から放たれようとしていた。
……
……
……
一度目の『帝楽智』の『魔力波』を凌いだ後、二度目の『魔力波』が発動される寸前だった。
『禁止区域』の最奥に居る『妖狐』と、三つ目の『鬼人』が『帝楽智』と戦うイダラマやエヴィ達をみながら会話を続けていた。
「見るがよい。どうやらあの天狗の『帝楽智』は、奇妙な生き物と人間達を完全に殺すつもりのようだぞ」
「ああ……。お前としては残念な事だな。折角ここまで登ってくる事が出来そうな優秀な人間達だったのにな」
三つ目の鬼が、心底残念そうに溜息を吐きながらそう言った。
「いや、まだ分からぬぞ? あの人間はまだ、諦めた者の目をしてはおらん。それに一度目に放った『帝楽智』の『魔力波』ですら、本来ならば並の『妖魔召士』程度ならば消し飛んでいてもおかしくはなかった。それを凌いだ奴の目が諦めておらぬのだ。まだここから反撃の余力があると俺は見るぞ」
「正気か? 『帝楽智』は自分の種族の者どもの頭領としての立場を考慮して中腹付近を陣取っているが、あの女は俺やお前が相手であっても、ほんの僅かな時間であれば耐え凌ぐ事も可能だった奴だぞ? あの女が本気で放とうとしている『魔力』の攻撃は、たかが一介の人間程度に耐えられる範疇にはない。どのような防衛手段を取ったとしても木っ端微塵だろうよ』
どうやら九尾の妖狐は、此度の『妖魔山』の中腹付近まで入り込んできた人間に、三つ目の『鬼人』と比べて更に強い期待感を抱いている様子であった。
対する鬼人の方はもう、この先の結果が見えたとばかりに、淡い期待を抱いている様子の『妖狐』を諭すようにそう告げるのだった。
(お主は人間の本質が見えてはおらぬから、そういう事が言えるのだ。かつて俺の前に現れたあの『シギン』と名乗った人間や、他でもない今戦っている『帝楽智』が認めた『サイヨウ』とかいう人間は、下手をすればこの山の頂に居る存在達とも手段を選ばなければ、ある程度戦える事が出来る逸材であった事は間違いないのだ。目を見れば出来る奴かどうかは直ぐに分かる。今戦っておるあの人間は『魔力』こそは並でしかないが、その代わりに何かをしでかすと思わせるだけの何かを有しておる。間違いなくあの人間は『帝楽智』やお主に一泡吹かすであろうよ)
人の姿を取った九尾の妖狐はそう結論づけた後に、腕を組みながら口角を上げて静かに笑うのだった。
……
……
……
――そして『帝楽智』が一度目よりも遥かに殺傷能力の高い『波動砲』を放とうとしたその瞬間、唐突に誰の目から見ても彼女に異変が生じたと思わせる行動を取り始めるのだった。
※この作品によく記載する『魔力』を『理』なしで放つ攻撃を『魔力波』と記載していますが、今回の記述にある『波動砲』とは、その『魔力波』の更に威力が伴った代物で『理』ありの『魔法』で表すと『神域』または『魔神域』の威力があると考えて頂けると幸いです。
『ブックマークの登録』や『いいね』また、ページの一番下から『評価点』を付けていただけると作者のモチベーションが上がります。宜しければお願いします!




