1609.エヴィVS座汀虚
「イダラマ、色々と君とあの『妖魔』との間で争っていたけれど、ようは僕達がこの先へ進もうとするのをあの『妖魔』は阻もうとしているという事なんだろ?」
二人の言い争いを黙って聞いていたエヴィだが、彼はさっさと先程感じたソフィの『魔力』を確かめに町に戻りたいと考えていて、それを妨害する『結界』を張っている『座汀虚』と呼ばれていた『天狗』の『妖魔』を排除しようとこちらも戦闘態勢に入るのだった。
「ああ、どうやらそのようだな」
「じゃあ仕方がないから君の護衛も兼ねて、あの邪魔な『妖魔』は僕が片付けてあげるよ」
『金色』を纏っているエヴィはそう言うと、次々と砂で出来た人形を生み出していく。
それは先程の『狼』のような顔と白い毛で覆われた『天狗』達を倒した時に出していた、おかっぱ頭の人形達だった。
「なるほど……。砂で生み出した人形に『魔力』を用いて術者が、意のままに操る事を可能とした『術』という事か。それもこれだけの数を一斉に操る事を可能とするとは、中々に大した『魔力』の持ち主だな」
「行け」
術者のエヴィが静かに命令を下すと、周囲に立っていたおかっぱ頭の人形達が一斉に『座汀虚』に襲い掛かっていった。
「確かに自らは安全な立ち位置を守りつつ、魔力で操った人形に攻撃させる。これだけ面妖な術を使われでもしたらお主ら人間達は恐れ慄くだろうが、しかし儂らはこの『妖魔山』で長年生きてきた『天狗』である! 儂らにこの程度の術など通用はせぬぞ!」
『座汀虚』はそう啖呵を切ると、口元に指を持っていき何かを呟くように『詠唱』を開始する。
すると彼の覆う『魔力』が膨れ上がると同時、鮮やかな『青』のオーラが具現化されるのだった。
「ちっ! 君達も『青』を纏えるのか……!」
『青』を纏う前からすでに大魔王領域の『エヴィ』より『魔力』が遥か上であった『座汀虚』の『魔力』が更に上昇されていき、持っていた金剛杖に形成付与させる。
そしてその金剛杖を人形達に向けて振り切ると、暴風を巻き起こしながら一瞬の内にエヴィの作り出した人形達を呑み込んでいく。
襲い掛かっていった人形達は、その全てが『座汀虚』の生み出した風によって空高く巻き上げられていく。
バチバチと音を立てながら切り刻まれて、一瞬の内に人形達は身を保てなくなり、そのままサラサラと砂に戻されていく。
「残念だったな。儂らに生半可な『力』は通じ……ぬっ!?」
いつの間にか『座汀虚』の背後に移動をしていたエヴィは、そのまま『座汀虚』の肩に手を置く。
「この僕が殺すと決めた相手は、絶対に死ぬしかないんだ。早く僕本人を消滅させないと、君はどんどん弱くなっちゃうよ?」
――呪文、『呪蝕』。
エヴィが唱えた呪文は、彼の手から直接『座汀虚』の肩を通して伝わっていく。
「ぬぅっ……!?」
何をされたか瞬間的には理解が出来なかった『座汀虚』だが、何やら吐き気が伴う嫌な感覚を身体から感じ取り、慌てて至近距離に居るエヴィを逃すまいと、自身の肩に置かれていた『エヴィ』の手を強引に掴んで『呪詛』を用いて動けなくしようとする。
――が、しかしその掴んだエヴィの手がサラサラと砂となって落ちていくと、悍ましい笑みを浮かべたエヴィの身体自身が完全に消え去るのだった。
――神域魔法、『普遍破壊』。
エヴィの姿が消えて『座汀虚』だけとなったその場に、突如として大爆発が引き起こされる――。
爆発で生じた煙が濛々と場を立ちこめるが、エヴィは攻撃の手を緩めない。
再びその『座汀虚』の居るであろう周囲に、おかっぱ頭の人形が凡そ数十体が生み出されると、今度は直ぐに人形達にエヴィの『魔力』が伝わり、そして一斉に『魔力』が高まっていく。
「爆ぜろ」
一斉に数十体の人形達が『座汀虚』を中心にして、取り囲みながら自爆を引き起こす。
ただの爆発ではなく、元はエヴィの『魔力』を介している為に、先程の『神域魔法』には劣るが、十分に殺傷能力を誇る『魔法』といえる。
更にこの一連の爆発の最中、エヴィは『呪文』である『呪蝕』で『座汀虚』の耐魔力を一般人以下にまで落とされているために、直撃したならば相手は即死である。
――が、それは直撃すればの話であった。
「!?」
何とオーラとはまた違った青色の薄い『魔力』で出来た膜のようなモノが、層のように『座汀虚』の身体の周囲を重なるように包み込んでおり、それによって『耐魔力』のない『座汀虚』はエヴィの攻撃から身を守る事に成功したようである。
そしてその包み込んでいたモノが消え去ると同時、エヴィに向けて『座汀虚』の手が伸びてくると、エヴィの首を掴みあげるのに成功するのであった。
「主の面妖な術の数々に驚きはしたが、儂の息の根を止めるまでには至っておらぬっ!」
流石にエヴィは自身の『呪蝕』によって、相手の『耐魔力』を著しく下げた直後の連携が直撃して尚、仕留められなかった事に驚きの表情を浮かべたが、そのまま『座汀虚』に自身の首を掴まれると同時、必死にその顔を睨みつけるのだった。
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