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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1605.いつもの光景

『禁止区域』に居る妖魔達に視線を向けられながらも、遂にエヴィ達は『鬼人』の縄張りを抜けて『妖魔山』の中腹に到達するのだった。


「お、おお! イダラマ様、見て下さいよ! コウヒョウの町があんなにもう小さく見えますよ!」


 イダラマの護衛を務める『アコウ』が、いつもより興奮気味に山を見下ろしながらそう口にすると、他のイダラマの護衛の一派の面々が驚く様子を見せた。


「アコウ殿はあんな遠くまでしっかりと見えるのですか……!」


「我々ではもう、全く見えませんよ」


「アコウ殿とウガマ殿はかつて『妖魔退魔師』組織の本部付けの『予備群(よびぐん)』にまでなられた方々だからな」


「流石でございますね!」


 口々に元『予備群』のアコウ達を褒める様子に、アコウは分かりやすい程に笑顔になった。


「ふふっ、当然だな。この『アコウ』と『ウガマ』は私が直に声を掛けた者達だ。これからも頼りにしている」


 イダラマがそう言ってアコウの肩に手を置くと、満面の笑みを浮かべていたアコウは、これ以上ない程に上機嫌となった。


「は、はい! 任せて下さい! あんな小僧より役に立ってみせますよ!」


 自分の頭を掻きながら自信満々にそう答えるアコウに、彼に比較の対象にされたエヴィはつまらなさそうに溜息を吐くのだった。


「おい、アコウ。イダラマ様に褒められて浮き足立つ気持ちは分かるが、これからが本番なんだからしっかり脇を固めろよ?」


 エヴィが何かを口にする前に、アコウと同じ『サカダイ』の町出身の元『予備群』で大男の『ウガマ』が、浮かれている『アコウ』に活を入れるのだった。


「ちっ! ちょっとくらいいいじゃねぇか。最近はあの小僧ばかり目立って俺達は何も活躍が出来てねぇんだ。ここらで俺達の有用性をイダラマ様にアピールしねぇとよ!」


「別に僕は目立ちたくて目立っているわけじゃないし、そもそもイダラマにアピールしているつもりもないよ。勝手に僕を引き合いに出さないでもらっていいかな? 程度が知れるよ? 人間」


 せっかくウガマが間に入って窘めたというのに、再びアコウとは水と油の関係性である『エヴィ』が要らぬ口を叩いてしまうのであった。


「はぁ? 何だとてめぇ! コウヒョウの酒屋でコウエン殿にモノを奪われたくれぇで、ガキみてぇに惨めにワンワン泣いてた癖によ!」


「あ?」


 そして案の定、いつもの二人のやり取りが始まってしまうのであった。


「カッカッカ! 全くお主らはいつまでも飽きもせず、同じ事を繰り返すのだな。ここはもう『妖魔山』の中腹なんじゃから少しは緊張感を持ったらどうじゃ?」


 二人のいつもの光景といえる言い争いを傍で聴いていた『コウエン』は、ウガマと同様に二人を窘め始める。


「こ、これは申し訳ない!」


「ふんっ、何を言うかと思えば……。僕は大人しくしていたよ。そもそもいつもそこに居るクソださピアスが喧嘩を売ってくるんじゃないか!」


 アコウはウガマの時とは違い、流石にコウエンの言葉には素直に謝罪を行ったが、再びエヴィの言葉に苛立ちを募らせて舌打ちをするのだった。


「まぁ、麒麟児も落ち着け。 コウエン殿の言う通り、ここから『天狗』や、他にも高ランクの『妖魔』達が続々と姿を見せ始める頃だ。ここらで少し気持ちを引き締め直そうではないか」


「ちぇ、イダラマがそう言うなら分かったよ……!」


 この一行の旗頭の立場に居るイダラマがそう口にすると、エヴィも渋々と頷いて見せるのであった。


 こうして言い争いをしている間も、常に『イダラマ』と『コウエン』は周囲を窺い、常に『結界』を維持し続けているのだが、すでにこの中腹に入ってからは『イダラマ』達一行は高ランクの妖魔達にその存在を捕捉されているのであった。


 中腹に入る少し前の『鬼人』の縄張りでも警戒や監視はされていたが、ここからはそれが常となるだろう。


 ランク『5』や『6』の妖魔が当たり前となるこの辺りからは、何が起きてもおかしくはない。コウエンやイダラマの注意は、まさにいいタイミングであったといえるだろう。


 そんな監視を行う妖魔達の中に、あの『王連(おうれん)』や『江王門(えおうもん)』と同じ大妖魔である『天狗』が、遂に中腹付近で騒ぎ立てる人間達の声を聴いて、彼らの前にその姿を現し始めるのだった――。

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