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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
妖魔山編

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1595.同志ではあるが、仲間ではない

 背筋が凍る思いをしながら愕然とエヴィを見ているコウエンに、もう話は終わりだとばかりにエヴィは欠伸を始めるのだった。


「まだ少し眠いや。悪いけど僕寝るね。明日出発する時に僕が起きられなかったら起こしてよ。じゃね」


 先程のやりとりは何だったのかといわんばかりの振舞いを見せるエヴィに、もうコウエンは何が何だか分からずに返事すら出来なかった。


 そんなコウエンを余所にエヴィは、コウエンが歩いてきた道を引き返していくのだった。


 そして呆然とその後ろ姿を見ていたコウエンだったが、ようやく我に返る。


(な、何なんじゃ!? あやつは一体何なのだ!?)


 今度こそコウエンは『エヴィ』という得体のしれない少年に、強さとはまた違った奇妙な感覚を覚えて、その感覚に対して畏怖さえ覚えてしまうのだった。


 ……

 ……

 ……


 そして次の日の朝、コウエンは起きてきた自身の『同志』達に昨夜の出来事を話していると、そこに護衛を連れたイダラマも会話に入ってくるのだった。


「その様子を見るにどうやらコウエン殿も、あの麒麟児の特異性に気づいたようだな」


「イダラマか……。お主、気づいておるのか? あやつは自分の身に危険が迫れば、主の持っている『転置宝玉』を強奪しようと企んでおるぞ」


 そのまま昨夜の出来事を搔い摘んで話すコウエンに、イダラマは恐れるどころか嬉しそうに笑みを浮かべ始めるのだった。


「そうですか。彼がそんな事を口にしましたか」


 コウエンは自身でさえあれだけ動揺したというのに、今の話を聞いて冷静そのままに、笑みを浮かべるイダラマを信じられないとばかりに見つめるのだった。


「どうやら『禁止区域』に居る存在は、私の考えている以上に危険な場所なのでしょうな」


 そこに恐れを抱く様子はなく、イダラマは期待以上だとばかりにむしろ喜ぶ様子を見せるのだった。


「お主、本当に今の話の真意を理解しておるのか? お主を護衛する筈の小僧は『禁止区域』の連中が手に負えぬ者達だと察した時点でお主ごとワシらを殺して『転置宝玉』を奪おうというのじゃぞ? お主はそんな危険な奴を護衛につけて本当にこのまま山を登り続けるつもりなのか!?」


 コウエンはどんなにイダラマの思考がぶっ飛んでいようとも、自分と同じようにしっかりと目的を持って『禁止区域』へ向かい、そして自分の身を守るために行動を起こすだろうと信じていたからこそ、行動を共にする事を選んだのである。


 だが、これがもし()()()()()()()()だったというのであれば話は変わる。


 如何にイダラマが『禁止区域』で何かを為そうと大望を抱いていようが、駄目ならそのまま何も抵抗せずに死んでも構わないと考えているのであれば、そんな自殺行為に彼は毛頭付き合うつもりはなかった。


 コウエンはこの問いに対して、もしイダラマが自分の望まぬ言葉を返すつもりなのであれば、ここで自分と『同志』達の身の安全を優先するために別れようと考えるのであった。


 ――イダラマとエヴィを相手に戦闘で勝つ事は出来ないだろうが、最初から逃げの一手を打つというのであれば話は変わってくる。


 仮にも前時代の四天王と呼ばれた『コウエン』が、最初からの逃げの一手を考える事自体恥ずべき事だと思えたが『()()()()()()()』である。


 このコウエンが本気でこの二人から逃げようと『力』を行使するのであれば、逃げきる可能性は倒して勝つ可能性に比べればはるかに成功確率は高い筈である。


 意を決してコウエンがイダラマの言葉を待っていると、イダラマはそのコウエンの心を見透かしたかの如く、笑みを浮かべた後に口を開いた。


「そう心配召されるな、コウエン殿。私は私の目的を果たすまではいくらでも足掻いてみせるつもりだ。如何に麒麟児が我々を襲ってこようとも、それを受け入れるつもりは毛頭ござらん。麒麟児は確かに大事な護衛ではあるが、あくまで私は自分の目的を最優先と考えている。もし、その時が本当にきたのだとしても無抵抗のままでやられるつもりはありませぬよ」


「……」


 再びコウエンは、目の前のイダラマの真意を確かめようと視線を向ける。


 その視線が交差してから数秒が経った後、コウエンはゆっくりと自分から視線を切った。


「分かった……。だが、お主が目的とやらを優先するのと同じで、ワシらもその時がきたら自分の命を守る事を優先して勝手に動かせてもらうぞ?」


「ふふふっ、それは当然の事でしょう。我々は『禁止区域』を目的とする『同志』ではあるが、もう同じ組織の『仲間』ではないのですから」


 ――イダラマは笑みを浮かべているが、その実、目が笑っていない。


 イダラマは『同志』ではあるが『仲間』ではないのだと、改めてコウエンは心に刻むのであった。

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