1586.お気に入りの存在
※今回から『妖魔山』編になります。
『サカダイ』の町で前時代の『妖魔召士』達によって行われた襲撃事により、避難を行っていた町民達が『特務』の施設から徐々に自分達の家へと戻されていき、ようやく『サカダイ』の町は復興を目指せるところまできた。
その復興もまた、町に戻ってきた『妖魔退魔師』組織の者達の協力の影響が大きく、少しずつではあるが襲撃前のように町民達にも笑顔が戻り始めて行くのであった。
そして新たに『妖魔召士』組織の正式な長となった『エイジ』と、先代の暫定の長である『ゲンロク』の両名は、サカダイに本部を置く『妖魔退魔師』組織の者達に挨拶を終えた後、ヒュウガの亡骸と共に自分達の里へ帰っていった。
事前の話通りに里へは『ソフィ』の『魔法』が用いられて、僅か数秒程で『サカダイ』の町から遠く離れたゲンロク達の里へと辿り着くのであった。
何度も『高等移動呪文』を目にして、実際に自分達も飛ぶ経験をしているというのに、今回もまた『エイジ』と『ゲンロク』は『魔法』の凄さを目の当たりにして大層驚き、そして感動をしていた。
『妖魔退魔師』組織側でもあの副総長の『ミスズ』や、最高幹部の組長格の一人である『ヒノエ』も同様に感動しているところを見るに、この世界の者達にとっては『魔法』は夢物語のようなものであったために、それが現実に起こせた事で、感極まっているといったところなのだろう。
ソフィは運んで直ぐに戻るのではなく、しっかりとゲンロクやエイジ達が『ヒュウガ』の亡骸を弔うのを見届けたのであった。
エイジ達はソフィがここまで付き合ってくれた事に、甚く感謝をするのだった。
ソフィは『妖魔召士』どころか『人間』ですらなく、エイジ達とは違う『魔族』という種族なのである。
それも同じ『ノックス』の世界の住人でもないのに、しっかりとエイジ達と同じようにこの世界の供養の方式に従い手を合わせてくれたものだから、ゲンロクはとくに『ソフィ』に対して信頼を寄せるのであった。
それはエイジがソフィに抱く信頼を上回る程で、このまま『妖魔山』の調査が行われるまで『サカダイ』の町ではなく、この里で逗留して欲しいと願い出る程であった。
ソフィとしてはこの里にずっと居ても構わなかったのだが、ミスズやシゲンが襲撃の時の事を詳しく聞かせて欲しいとソフィに言ってきたために、サカダイの町に戻る事にしたのであった。
ソフィの魔法で蘇ったとはいっても、実際に死人を出す程に命を張って町を守ろうとした『妖魔退魔師』達。
そんな襲撃の被害を受けた『妖魔退魔師』組織の長であるシゲンから、事情を聞かれては優先せざるを得ないというのが、ソフィの偽らざる気持ちなのであった。
「それでは我は行くが、また調査の時はよろしく頼む」
「うむ、こちらこそよろしく頼む、ソフィ殿」
「ソフィ殿、いつでもワシの里にきてくれて構わぬからな? そうじゃ、今度お主が気に掛かっておった『転置宝玉』の事をワシの知っておる限りの事を伝えようではないか!」
その言葉にソフィは『高等移動呪文』のための『スタック』を行おうとしていた手を止めた。
「むっ! それは我が『根源の玉』と呼んでおったものだな? エヴィ達がお主らから盗み出したとかいう……」
「うむうむ! イダラマではなく、お主の仲間と呼んでおったものが持っておるのならば、もう返さずともよいからな? まぁイダラマに渡すくらいであれば、当然ながら返却を願いたいが……」
「クックック! 分かった。また我の仲間を取り戻した暁には、お主に『転置宝玉』とやらを渡す時に、またここに訪れるとしよう。その時に良ければまた話を聞かせてくれ」
「カッカッカ! その時のために上等な菓子を用意しておこうではないか」
ソフィがまた話をしにきてくれると聞いたゲンロクは、これまで以上に上機嫌でそう口にするのだった。
「ふふっ。このヘンクツ者の『ゲンロク』にここまで好かれるとは、流石はソフィ殿だ……」
「貴様、エイジ……! 誰が、ヘンクツ者じゃ!」
「ふははは! お主はそうでなくてはな」
新たな『妖魔召士』組織の長と、先代の『妖魔召士』組織の長のやりとりに、この場に居た当代の『妖魔召士』組織の側近達は、一様に苦笑いを浮かべていた。
「クックック! それではまたな?」
「うむ」
「それでは、また会おう。ソフィ殿!」
――『高等移動呪文』。
スタックされていた『魔力』が『アレルバレル』の世界の『理』が刻まれた『魔法陣』に吸い込まれると同時、その『魔法陣』が高速回転を始めると効力が発揮された。
――そしてソフィは再び『ヌー』達が待つ『サカダイ』の町へと、一直線に飛んで行くのであった。
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