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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
イダラマの同志編

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1579.ヒュウガの諦観している理由

「ゲンロク殿、大丈夫ですか?」


 入り口に立っていた『妖魔退魔師』が、苦しそうな表情と声を上げたゲンロクに駆け寄って声を掛ける。


「だ、大丈夫じゃ。すまぬ、何ともない……」


 ゲンロクはそんな見張りに向けて、脂汗を浮かべながらも必死に笑みを作ってそう答える。


「そ、そうですか……」


 ゲンロクにそう言われた『妖魔退魔師』は、後ろ髪を引かれる思いを抱きながらも元の場所へと戻って行った。


「やはりゲンロク様はまだ件の『妖狐』を克服出来てはおらぬようですな。そんな調子で先程申した通りの『魔族』共を連れ立って『山』へ行くのは難しいのでは? 『禁止区域』まで行けたとしても、また繰り返……」


「やかましい! もう組織と何も関係がなくなったお主に心配される事ではないわぁっ!!」


「も、申し訳ない。これは失礼しました……」


 過去の忌まわしい古傷をえぐられるような物言いをされたゲンロクは、これまでとはまるで別人のように激昂したかと思うと、目の前の罪人に向けて怨嗟の言葉を吐き出すのであった。


 ヒュウガは少しばかり予想より効果が覿面であった事を理解した上で、素直に謝罪を行うのであった。


 もうヒュウガは自分が『妖魔召士』組織の長になろうと考えているわけでもなく、単に目の前の『ゲンロク』が困る姿を最後に、一目見てやろうと考え思いついただけだった。


 先程ヒュウガが話をした通り、もういくら自分が強くなろうとも『ソフィ』や『ヌー』といった『魔族』や、山の『禁止区域』に居るランク『9』や『10』の『妖魔』には遠く及ばないだろうという事を理解した事で、ヒュウガは嘘偽りなく、諦観の念を抱いてしまったのである。


 これまで目指してきたものが全て、無駄な事だったと考えに至った事で、彼はその地位や権力などといったモノも全てが詰まらないモノに映ってしまった。


 如何に自分が強くなり件の『妖魔』や『魔族』と肩を並べられたとしても、所詮は『人間』の短い寿命の中で得られる一時的で些末な幸福に過ぎない――。


 確かにあのソフィという青年に見える『魔族』や、同じく数千年と生き続ける事の出来る『妖魔』の身であったのならば、これだけの力を有する事が出来た自分はもっと成長が出来るだろうし、いずれは追いつき追い抜き、自分こそが『最強』なのだと自負を出来たのかもしれない。


 ――だが、たかが百に満たぬ寿命の中で、如何に『最強』に迫ろうともそこに意味はない。


 寿命の長い『魔族』とやらよりも、成長が『人間』の中で少し早かっただけの些末な差――。


 短い生涯でしかない人間の『天才』など、長く生きる魔族から見れば早熟なだけの『凡才』に過ぎない。


「は、はは……。人間とは哀れだと思いませんか? いくら努力を重ねたところで『寿命』の前では、全てを否定されて無に散る。()()()()()()()()()()()()()のですよ? 人間が長年積み重ねてきた知識や経験、それらが『寿命』がくると全てが無になる0に。何と馬鹿馬鹿しいのでしょうか? 私共は何のために生きているのでしょう?」


「ひゅ、ヒュウガ……?」


 突然に涙を流し始めながら諦観の言葉を口にし始めたヒュウガを見て、自分のトラウマであった内容が、頭から綺麗さっぱり消え去って、今度は見た事のないヒュウガの姿に困惑の声が口から漏れ出るゲンロクであった。


 どうやら『加護の森』で『ヒュウガ』は、これ程までに人が変わってしまうような出来事を経験したのであろうとゲンロクは涙を流すヒュウガを見て考え始める。


 そして静かにゲンロクは口を開いた。


「ヒュウガよ、ワシとてエイジを次の『妖魔召士』の長に託した今となっては、もうその役目を終えて何もかも失なったような気持ちは抱いてはいるが、そんな自分を哀れだとは思わぬ。それは何故かと考えてみたが、やはりそれは後世に繋ぐ役目を担えたからなのかもしれぬな……」


 ヒュウガは自分に向けて話すゲンロクの言葉にしっかりと耳を傾けて、その言葉に自身も深く考え始めるのであった。


 ……

 ……

 ……

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