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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
イダラマの同志編

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1563.ユウゲの願いと憂い

「もう一度確認するが、お主が『動忍鬼(どうにんき)』を『式』にしていたわけではないのだな?」


 『鬼人』はすでにソフィ達から『動忍鬼(どうにんき)』を『式』にしていた者が死んでいるという事を聞かされている。


 それでも彼にとって今でも『退魔組』に属する『退魔士』全員は復讐の対象にしていたために、目の前の『ユウゲ』も許すつもりはなかった。


 しかしこうして臆しながらも正直に告げた『ユウゲ』と、その『ユウゲ』を身を挺して守ろうとする『ヤエ』という女性の覚悟を汲み取り、今一度『ユウゲ』が嘘偽りなく、しっかりと本音を告げるかどうかを確かめようとするのだった。


「ああ、誓ってワシは『式』にはしておらぬ。ワシが『イツキ』様の居る『牢』へと案内してもらいたいのは『退魔組』に戻りたいからという理由でもないし『妖魔召士』組織に戻りたいというわけでもないのだ。ワシは『イツキ』様を生涯の仕える主と考えているからに他ならぬ!」


 イツキを生涯の主と呼ぶ『ユウゲ』の目を見て、その言葉にどうやらこれまでの話には、嘘偽りはないのだろうと判断する『鬼人』であった。


「そうか……、分かった。お主らを守りながら『牢』に居る『イツキ』という人間の元に案内してやる」


 その『鬼人』の言葉に『ヤエ』は勢いよく振り返って『ユウゲ』に笑みを向けるのだった。


 どうやら自らが死ぬ事には何の後悔もしていないようだった『ヤエ』だが、()()()()()()()()()()に愛する『ユウゲ』が死ぬ姿だけは見たくなかったようで、その心配がなくなった事でほっとした様子であった。


「す、すまぬな。感謝するぞ!」


 『鬼人』は頷くと、再び口を開いた。


「お主が誰に仕えようが文句は言わぬが、そんなお主に()()()()()()()()()()の存在を、少しは大事にしてやることだな」


 『鬼人』はそう告げると、前を向いて歩き始めるのだった。


 ユウゲはその言葉を受けて『ヤエ』を一瞥する。


 良かったよかったとユウゲが殺されなかった事を心の底から喜んでくれている『護衛』の存在を見たユウゲは、改めて考えさせられるのだった。


(ワシはイツキ様の『魔』の成長と、その行く末を一番近くで見ていたいと願い、そのためならばどのような危険な場所でもついて行こうと決意したわけだが、この『ヤエ』をその修羅の道へ共に連れて行くのは、実際のところどうなのだろうか?)


 先程、身を挺して自分を守ってくれたヤエに『ユウゲ』は心を突き動かされて、あれだけ怯えていた『鬼人』に対して恐れを抱きながらもしっかりと言葉を吐けた。


 その事にはヤエに対してユウゲは感謝をしているが、この先同じような事があった時に、今回と同じように自分は心を強く持てるだろうかと深く考えるユウゲであった。


 深くその事を考えれば考える程、ユウゲという男は自身の弱さというモノを改めて自覚し、イツキという自身が定めた『現人神(あらひとがみ)』の存在の傍で見守るという事が、どれだけこの情けない自分には過ぎた願いなのかという事を思案させられるのだった。


(分を弁えねば身を滅ぼすという言葉をワシは客観的にしか理解してはおらなんだが、もしかするとこういう時の事をいうのではないだろうか? こんなワシなんかのために命を投げ打ってでも庇おうとしてくれた『ヤエ』の存在は非常に有難いものだ。しかし何も気付かなければワシは何も案じる事なく『イツキ』様の傍で共に歩んでいけた事だろうな……)


 ユウゲという人間の心がもう少し強ければ、このような事に悩み憂う事もなかったであろう。


 しかし彼は自分の持つ願望の大きさと、その願望に対して付随する重責の重さを知り、他者を背負い込みながら願望を叶える為には、あまりにも自分程度では分不相応なのではないかと、自信がなくなってしまうのだった。


「ゆ、ユウゲ様、どうかなさいましたか?」


 ずっと自分の顔を見たまま動かなくなったユウゲにヤエは、照れながらどうしたのかと訊ねるのだった。


「むっ? いや、何でもない。ワシらも急ごう」


「は、はい!」


 今はひとまず、自分の事など棚に上げて『イツキ』様の待つ『牢』へと向かう事に決めるユウゲであった。

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