153.ヴェルトマーとの出会い9
※加筆修正を行いました。
レルバノンが率いる『ラルグ』魔国軍は、近い内に『レイズ魔国』そのものを攻め落とすつもりで侵攻を続けている。
余りに強すぎる彼は大国である筈のレイズ魔国を相手にしてでさえ、物足りなさを感じつつあった。
「三大魔国と数えられる『レイズ』魔国でさえこんなものですか。これはもう我々ラルグ魔国が『ヴェルマー』大陸を統一する日はすぐそこですね」
【種族:魔族 名前:レルバノン 年齢:(当時)754歳
魔力値:332万 戦力値:3435万 所属:ラルグ魔国】。
『鮮血のレルバノン』と呼ばれるようになって久しく、すでに彼だけで数えきれない程の『レイズ』魔国の拠点を落としている。
まだまだ魔族としては若いともいえる年齢だが、彼はこの年齢になるまでただの一度も挫折を味わった事がなかった。
大国『ラルグ』魔国であってもこの『レルバノン』に逆らえる者はおらず、ラルグ魔国王であるシーマでさえ彼には気を遣う程であった。
「さーて、次は首都シティアスを攻め落としてしまいましょうか?」
そう言うとレルバノンの部下たちは大きな声で返事をする。
レルバノンの側近は『ゴルガー・ビデス』と『ネスツ・クーティア』であった。
「レルバノン様! このままの速度で軍を前進させますと、あと二日程で首都シティアスに続く最後の拠点に辿り着きます」
「ふむ、そうですか……。この前のように『レイズ』魔国の幹部連中が勢揃いで来た場合は、ラルグ二軍の指揮をあなたが執り迂回して『シティアス』に向かいなさい」
「分かりました」
ゴルガーはレルバノンの命令に、恭しく頷く。
そしてこの二日後、『シティアス』を目前とした最後の拠点と言える場所で、これ以後に腐れ縁とも呼べる出会いを『レルバノン』はするのであった。
……
……
……
――シティアスから20里程離れた場所にある『レイズ』の拠点。
この場所に『レルバノン』達が向かってくる事を探知したヴェルトマーは、たった一人で拠点の前で待つのだった。
「ふーむ。優秀優秀と何度も聞かされていたけれど、確かに『レルバノン』って魔族はこの世界ではは確かに強いわね」
ヴェルトマーはすでに魔力探知を使って、噂の『鮮血のレルバノン』という魔族の『魔力』を調べたが、この身体ではギリギリかもしれないとヴェルトマーは考える程であった。
「あのバカとの戦いがなければ、もう少し遊べる『魔力』を残す事が出来たんだけどねぇ」
――それはこの世界に転移する前の話。
『大魔王ユファ』が、ここ『リラリオ』とは違う別世界で『大魔王レインドリヒ』と戦い、決着が付かぬままに魔力を大幅に消費させられた。
そしてユファは本来の身体を完治させる為に、予備の身体を使ってそのままこの世界に転移してきたのである。
元の魔力が戻るまでこの『世界』で姿を隠そうとしていたが、まさかこんな世界でシス程の信じられない程の上物に出会うとは思わなかった。
ユファの中ではもう大魔王『レインドリヒ』なんかよりも、この世界の『シス』の方が優先順位が上になってしまっていた。
戦う事が大好きなユファではあったが『魔』の追求に比べると、戦う事は二の次になってしまうのであった。
「まさかあの方に鍛えられた私より、遥か上の魔力値を持つ子がいるなんてね」
(しかもあんな幼く優しい性格の持ち主が、別世界の残虐な大魔王連中よりも遥かに『魔力』があるなんて信じられないわね)
だからこそこんな所でレルバノンとやらに、レイズ魔国を攻め滅ぼされるわけには行かない。
たとえレイズ魔国が滅んだとしても『ヴェルトマー』は、シスだけは必ず生かすつもりではあるのだが。
『災厄の大魔法使い』は、シスの未来を考え期待に胸を膨らませながら、レルバノンがこの場に攻めて来るのを首を長くして待つのであった。
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