1553.セルバスの決死の抵抗
サクジ達に襲い掛かった『妖魔退魔師』達は、その誰もが掛け声などを掛けずに冷静に『妖魔召士』達の心臓や首を狙ってきたが、その三人の誰もが『妖魔召士』達を一人も仕留める事が出来なかった。
――何故なら、サクジを守り立つように二体の『妖魔』が、この『妖魔退魔師』達の攻撃を全て防ぎきったからであった。
「ちっ! 仕留められる絶好の好機だったというのに!」
「相当にやりやがるぞ、この妖魔共!」
「気を緩めないで気を付けて! この場では普段通りには戦えないのよ!」
初手を全員防ぎきられた『妖魔召士』達が、口々にそう告げながら、狭い部屋の中で『江王門』や『瑠慈』から距離をとるのだった。
(ん? こいつら『妖魔退魔師』だというのに、その全員が刀に術を施しておらぬな。それに普段通りに戦えぬとか申しておったな。この先に『牢』がある事は分かっているが、もしかするとそれも『結界』が関係しておるのだろうか?)
流石は前時代の『妖魔召士』組織で活躍を果たしただけはあり、サクジは直ぐに『妖魔退魔師』達が『魔力』を得の刀に通していないという事をめざとく発見し、妖魔退魔師達の言葉に警戒を強めるのだった。
だが、前時代の『妖魔召士』達ではあっても、その事を察したのはサクジだけだったようで、その後に続いて中に入って来た多くの『同志』の『妖魔召士』達は次々に『捉術』を三人に向けて放とうと手印を結び始めて行き、そしてサクジが声を掛ける間もなく発動させてしまうのだった。
――この場には、大魔王『ソフィ』の『死の結界』が張られているとも知らずに。
……
……
……
「ぐっ……!」
シグレを助けるために『妖魔召士』に肩から突っ込んでいった『セルバス』だが、その半身をプツリと二分割するように『魔力波』が彼の身体を真横に貫いていった。
そしてセルバスは体当たりを行おうとしていた勢いを完全に失い、その場に前のめりになって崩れる。
「い、いやあああっっ!!」
シグレは目の前でセルバスの身体が切断されたところをみて、声をあげて絶叫する――。
「悲しむ必要は無いぞ? 次はお前が死ぬ番なのだからな……!!」
もう『結界』を張る必要はなくなったとばかりに『妖魔召士』は、この部屋に張っていた『結界』に使っていた『魔力』をシグレに向け始める。
どうやら大した事のない『魔力』しか持っていなかったセルバスより、侮れない速度を有して斬りかかってきたシグレを確実に仕留める為に、全力で相手をしようとして『結界』を解いたようである。
だが、セルバスは上半身だけとなった身体のままで最後の力を振り絞って、決死の『魔力コントロール』を行うために、全神経を注いでソフィに『念話』を送るために波長を合わせるのだった――。
(だ、旦那……! し……ぐれ、ど……のを……、たの、み……ます……――)
その言葉をソフィに届けると同時、セルバスは今度こそ、息絶えるのだった。
……
……
……
ゲンロクの里で新たに『妖魔召士』の長となった『エイジ』を祝っていたソフィの元に、サカダイの町の『妖魔退魔師』組織の本部内に設置した『魔力吸収の地』に魔力を吸い取る感覚を得ると同時、配下となった『セルバス』に合わせていた波長から『念話』の言葉が届くのだった――。
「むっ!?」
その場で唐突にソフィが立ち上がると、周りに居た者達が一斉にソフィの方を向いた。
「あ? どうしたよソフィ、いきなり立ち上がっ……――!?」
次の瞬間――。
この場に居る誰にも言葉を告げず、そのままソフィの姿が里から忽然と消えるのだった――。
「そ、ソフィ殿!?」
「いきなり、どうしたというのだ……?」
「何が……?」
全員が驚きの声をあげながら、その視線をヌーの方に向けるのだった。
「あの野郎……っ! ま、まさか……!!」
そして他の者達と同様に何があったのか分からずに驚いていたヌーだが、直ぐにソフィが転移を行った方角に『魔力探知』を行うと、町に残してきた『セルバス』の魔力が完全に感知出来なくなった事で、一体何が起きてそしてソフィがこの場から姿を消したのかを悟るのであった――。
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