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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
イダラマの同志編

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1536.天狗の呪詛

『タツミ』はちらりと今の仲間達の様子を窺うが、その全員の目に怯えが宿っている事を理解するのだった。


(これでは彼らと攻撃に際する連携を取る事は難しいか……。しかしそれも無理はないわね、相手は先程の『土蜘蛛』と同等か、それ以上の『妖魔』が新たに二体、それに他の『妖魔召士』達も侮れない強さを有している。この状況下でいつも通りに動けとは言えない。むしろ先程まであれだけ動けていただけでも、十分に凄い事だもの)


 この規格外の高ランクの『妖魔』を相手に、今も戦意を喪失せずに刀を握って睨みつけられているだけでも称賛に値する事なのだと、タツミは彼らを見ながら頷くのだった。


(でも、困った事になったわね。彼らも死の危険が迫った時には動けるようになるだろうけど、現状で私の動いて欲しい通りには動けないでしょうし、私一人で突っ込むにしても、この場に居る奴らを誰一人倒せそうにない)


 ――タツミは命をかける覚悟は出来ているが、それでも無駄に命を捨てるつもりはない。


 先程、彼女は相手の手札を一枚でも減らしておきたいと考えたが、このまま彼女一人が全力を用いて突貫したとしても、相手は『天狗』にどうみても格上の『鬼人』、そしてあの『妖魔召士』達である以上、その手札の一枚すら減らすことは難しい。


 せめて奴らの意識を逸らす事が少しでも出来ればと考えたタツミだが、仲間達が怯えを見せて普段通りに動けない以上、それを望むべくもない。


 せっかく自分は副総長に『予備群』から『特務』へと引き上げてもらえたというのに、結局は『副総長』や『先輩』達が居なければ何も出来ないのだと、タツミは一人無力感に苛まされるのだった。


 刀を握る手を強めながら唇を噛みしめる『妖魔退魔師(タツミ)』を見て、腕を組んで彼女の様子を窺っていた『瑠慈(るじ)』は溜息を吐いた。


「また時代は少し変わったようだな、サクジ殿」


「何のことだ?」


 突然『鬼人』の『瑠慈』が自分に言葉を投げかけてきたため、どう仕留めようかと次の攻撃の事を考えていたサクジは、視線はそのまま『タツミ』を捉えたままで返答するのであった。


「いや、この場に居る『妖魔退魔師』達を見てな、えらく臆病な集団になったモノだと思ったのだ」


 その『鬼人』である『瑠慈』の言葉に直接言葉を向けられた『サクジ』だけではなく、タツミ達も『瑠慈』に視線を向けるのだった。


「こやつらが『妖魔退魔師』の中でどれくらいの立場に居るのかは知らぬが、どうやら技術だけは歴史を積み重ねて上がっていってはいるようだが、その実大事な中身の方は技術に伴っているようには見えぬ。かつての『妖魔退魔師』を名乗る人間共は負けると分かっていても、我々に勇敢に立ち向かってきたモノだ。このように少しばかり不利な状況だからといって、何処も傷ついておらぬ五体満足の状態だというのに、臆病風に吹かれて棒立ちのままで恥を晒しておるだけとはな」


 その言葉を聞いて『タツミ』や『妖魔退魔師衆』は、激しく感情を揺さぶられて得の刀に力を込め始めると、思いきり『瑠慈』を睨みつけるのであった。


「だ、誰が臆病風に吹かれているですって!!」


 タツミが声高にそう叫ぶと『鬼人』ではなく黒い羽根を生やした『天狗』の方が口を開くのだった。


「まぁそう言うな『瑠慈』よ。こやつらは怯えていながらでもこうして町を守るために必死に前線へ出て来ておるのだ、大したものではないか。それよりもこれだけ町で騒がしくされておるというのに、建物から一向に出て来る気配がないこやつらの上に立つ者の方が臆病者だと儂は思うが」


 カッカッカと厭味に笑う『天狗』や、先程馬鹿にするような言葉を吐いた『鬼人』に対して『タツミ』や『妖魔退魔師衆』はもはや限界の限界であった。


「か、カヤさん達は臆病者じゃない!!」


 『加護の森』で死ぬ覚悟で戦っていたカヤの姿を思い出しながら『タツミ』がそう叫ぶと、決死の覚悟で『霞の構え』を取ると同時に、一直線に彼女は『妖魔』達に向かって特攻していく。


 どうやら彼女は全身の力を込めて『刺突』を行おうというのだろう。


 そしてそんな彼女の背中を見ながら他の『妖魔退魔師衆』達も後に続いていくのだった。


 ――しかし。


「若いな……」


 先程の『タツミ』達の会話に口出しをしなかった『サクジ』が静かにそう呟くと、笑みを浮かべて待ち構えていた『江王門』が何やらボソボソと静かに呟き始める――。


 その次の瞬間――。


「!?」


 恐ろしい速度で『瑠慈』達に向かって『刺突』を行おうとしていた『タツミ』の動きが唐突に止まり、その場で棒立ちとなってしまう。


 そしてその隙だらけとなった『タツミ』の元に瑠慈がゆっくりと近づくと、笑みを浮かべながら丸太のように太い腕を振りかぶってみせて、そのままタツミに振り下ろすのであった――。

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