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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
イダラマの同志編

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1533.霞の構えを取るタツミ

(あやつの刀で放った攻撃を見た時に所詮は小童だと思えたが、その後のあやつの突進の時に纏っていた『殺気』に近いモノは前時代の『妖魔退魔師』と見紛う程であった。このワシがこんな小童に退かされるとはな……)


 流石は前時代の『妖魔召士』組織で『上位妖魔召士』として高ランクの『妖魔』を相手にしていただけはあり、サクジは直ぐに『タツミ』の纏う殺気の変化に気づき、回避を優先させるのであった。


 サクジ程の『上位妖魔召士』を退かせた『タツミ』の殺気の要因は、繰り出そうとした『刀技』に『タツミ』が並々ならぬ思いを込めたからの結果であった。


 『特務』に所属する者達はその全員が元『予備群』出身である――。


 本来であれば『予備群』のランクは『3』から『3.5』が常とされており、本部付けに抜擢されても精々が『4』といったところである。


 そんな『予備群』の中にも『妖魔退魔師衆』や『妖魔退魔師』にある部分では到達できるだけの資質や才能を有していながらも他の部分で足を引っ張り、成長を促せずにそのまま埋もれてしまっている者達も存在する。


 ――『特務』の室長の立場にして『妖魔退魔師』組織の総長を除いた、全隊士を束ねる副総長『ミスズ』。


 彼女はそんな埋もれている『才有る者』の人間の『才』の尖った資質や長所の部分に着目し、その尖った部分を伸ばしながら短所を少しずつ消しつつ底上げを行いながら一人の『妖魔退魔師』へと成長を促していく事に長けた女性であるが、そんなミスズが『タツミ』を『特務』として自分の直属の部下に加えようと考えた点は『刺突』にあったのだった。


 通常、この『ノックス』の世界の剣客達の多くが、本来の刀の持つ形状に逆らわず、反りに合わせて斬る事に特化するのが自然体の構えとして選ぶのだが、この『タツミ』はその反りを利用した引き斬りの定石に背くように、突きを得意とする隊士であった。


 予備群として仕事を任せられていた時は、足並みを揃えるという意味合いもあって、他の隊士と同様の構えに矯正させられていたために、彼女は慣れぬ構えのままで『予備群』として活動を余儀なくされていたが、それを任務に送り出させる役目を担う『特務』の長であった『ミスズ』は、彼女の経歴や身体能力に得の刀の種類、更にはこなした任務の成功の傾向を調べ上げて、その時に『タツミ』という存在を完璧に把握、原石を見事に見つけあげて磨き始めるに至った――。


 ミスズという女性の存在がなければ、今も『タツミ』は地方で単なるいち『予備群』として生活を送っていただろうが、今の彼女はその本来の持つ長所を活かして『妖魔退魔師』として認められるに至っていた。


 そんな『タツミ』の持つ特性を十分に引き出す構えこそが、組織の副総長である『ミスズ』と同じ『霞の構え』であった――。


 先程と同様に『タツミ』が『霞の構え』を取ると、再び刺すような鋭い殺気が場を支配し始めて行く。


 この場に居る『妖魔退魔師衆』達も各々が『天色』を纏いながら、普段の何倍も戦力値を高めて戦闘態勢に入っているというのに、目の前に居る『タツミ』が『霞の構え』を取った瞬間の敵に対する殺気を色濃く感じて、刀を持つ手に震えが生じ始めていた。


(こ、これが『特務』所属の方々の殺気か……! 少し前まで一介の『予備群』だったとは思えない!)


 ――少しの間は場に静寂が訪れていたが、それを崩したのは『妖魔召士』側の『式』である『土蜘蛛』であった。


 準備動作もなく突如として口から吐かれる糸が『タツミ』達の元に向かう。


 そしてその『土蜘蛛』の行動に合わせるように、他の『妖魔召士』達が印行を結び始めるのだった。


 他の妖魔退魔師衆達は『土蜘蛛』の吐かれた糸を刀で斬って防いだが、その糸は先程の糸とはまた違い、粘着性が更に増しており、刀に絡みついた糸が紫色に発光したかと思うと、急に妖魔退魔師衆達の持つ刀がずっしりと重さを感じ始めるのだった。


「な、何だこれは……!!」


 どうやら『土蜘蛛』は妖魔退魔師衆達の動きを止める方向の攻撃に手を変えたようで、その効果が彼らに対して如実に現れていた。


 ――しかし。


 一番に止めなくてはならない『タツミ』だけは、糸を刀で受ける事をせずに身一つで回避を行うと、そのまま回避の反動を利用して一直線に『土蜘蛛』を目掛けて駆けていく。


 他の『妖魔召士』達も直ぐに対応に出ようと先程の印行から『魔力』を用いた『スタック』で『捉術』を放ったが、その動きを封じようとした『魔重転換(まじゅうてんかん)』や『魔力圧』を恐るべき速度を有したままで器用に全てを回避していき、そして彼女は単身で『土蜘蛛』の間合いに入り込むと、そのまま速度を維持したままで『刺突』する。


「――!」


 『土蜘蛛』の胴体をまるで閃光のような早さで刺突すると、土蜘蛛は声にならない悲鳴をあげるのだった。


 そして『タツミ』はどうやら一手で終えるつもりはないのか、突き刺した刀を抜くと、そのまま得の刀に『青』を纏わせると刀を逆手に持って追撃に出る。


 ――刀技、『疾風(はやて)』。


 恐ろしい速度で追撃の刀技を放ち、何度も『土蜘蛛』の体を切り刻んでいると、やがて『土蜘蛛』はぼんっという音と共に『式札』に戻されるのだった。


 そしてひらり、ひらりと舞っている札を目にも止まらぬ速さで真っ二つで斬ると、更に『タツミ』は『霞の構え』を取り直して、周囲に居る『妖魔召士』達を見据え始めるのだった――。

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