1528.ついに始まる、サカダイ襲撃
「来たぞ! 報告通り、どうやら『妖魔召士』達で間違いない!」
次々と『予備群』が『一の門』の櫓の上に集まって来たかと思えば、一斉に門の上から抜刀して飛び降りてくる。
これだけの『妖魔召士』達が一斉に『式』の『妖魔』を出している以上、襲撃以外の何物でもないと判断したのだろう。
――この『妖魔退魔師』の本部がある『サカダイ』の町では、コウゾウの居たような『旅籠町』での『妖魔召士』との言葉のやり取りなど挟むことはない。
『妖魔召士』であろうが何であろうが、あれだけの『式』の『妖魔』を出現させて、この町へ強引に入ろうとしているところをみれば『敵対行為』と断定する事は彼らにとって当然の事である。
町を守る為に、そして脅威を払うために抜刀するのは必然のことであるといえた――。
「ちっ! 小童どもが群を成しおって! 上空から死角を突くように飛び掛かられては面倒だ『白狼』、思いきりお前の力をぶつけて『門』を壊してしまえ!」
「ガルルルッ!」
『白狼』と呼ばれた『サクジ』の契約している『式』の『狗神』は、門の上から次々飛び降りてくる『予備群』達を無視して、その奥の大元の『一の門』を目掛けて思いきり助走をつけながら体当たりをするのであった。
ミシッ! という音と共に門にひずみが出来たかと思えば、その『白狼』の背後から次々と『狗神』の群れが続々とサクジの『式』と同様に『門』にぶつかっていき、どんどんと『門』のひずみが大きくなった瞬間に、トドメとばかりに『幽鬼』の集団がその大きな図体を捻るように、拳を思いきり振りかぶったかと思うと、一気に門を目掛けて振り切ってみせる。
「ちっ! お前達、止めろ!」
「仕方あるまい!」
「応!」
先程門から飛び降りて町の外側へと降りてきた『予備群』達は、当初は『妖魔召士』を狙おうとしていたが、門が破られると判断するや否や、踵を返して再び飛び降りた門の方へと駆け寄って、狗神や幽鬼達に斬りかかっていくのだった。
しかし恐るべき速度で駆け寄る『予備群』達より『幽鬼』の振り下ろす拳の方が少しだけ早かった。
すでに『狗神』達の体当たりによって門は大きくひしゃげていた門は『幽鬼』の拳に耐えられる筈もなく、そのまま一気に門は壊されてしまうのだった。
「土蜘蛛! 今だ、やれ!」
多くの『予備群』達が門を壊そうとしていた『幽鬼』を止めようと駆けて行ったのを狙っていた『サクジ』は『土蜘蛛』と呼ばれる『妖魔』に指示を出すと『土蜘蛛』は『予備群』達に向けて糸を放つのであった――。
「「ぬぁっ!?」」
「し、しまった! た、謀られた!」
『幽鬼』達がぼんっという音と共に式札に戻されるが、その『幽鬼』達を斬り伏せた『予備群』達は、その全員が一箇所に集められたせいで『土蜘蛛』の糸によって動きを止められてしまう。
「門は開いた! 皆の衆、一気に奴らの本丸へ急ぐのだ! 最初に告げた通り、町の者には手を出すなよ!」
「「応!!」」
そして『土蜘蛛』の糸によって動きを封じられてしまった『予備群』達の横を次々と赤い狩衣を着た『妖魔召士』達が駆け抜けて行く。
「ふふっ『土蜘蛛』、そやつらはお前の好きにしていいぞ?」
『サカダイ』の町の外に残り『結界』を張る者達以外の『同志』達が全員町の中へと入ったのを確認した後、何とか糸を外そうと齷齪していた『予備群』達にサクジが笑みを見せたかと思うとそう告げる。
次の瞬間――。
『土蜘蛛』の身体が肥大化し始めたかと思うと、口を大きく開いて動けない『予備群』達に近づいていく。
「ひっ! や、やめ……!!」
「ふはははっ! 『土蜘蛛』、お前の手柄だ。存分に味わうといい」
「あ、ああっ……!!」
『土蜘蛛』はその言葉に『予備群』達を捕食し、そして次々と手や足、更には頭とその場に居る『予備群』達を食いちぎって咀嚼を始めて行く。
サクジは門の前に居た『予備群』全員が『土蜘蛛』に呑み込まれる最後の瞬間まで見届けた後、満面の笑みを浮かべながら『土蜘蛛』を式札に戻して口を開いた。
「さて、それではワシも『同志』を救出しにいくとするか。奴らにワシらの『妖魔召士』の恐ろしさを思い出させなければならぬ」
そう言ってサクジは、ゆっくりと『門』を抜けて『サカダイ』の町へと入り込んでいく。
――どうやら『一の門』で『予備群』達を相手に一戦交えた事で『旅籠町』で臆病風に吹かれていたサクジは、本来の『上位妖魔召士』としての自信を取り戻す事に成功したようであった。
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