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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
イダラマの同志編

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1517.食えぬ男

「待て、イダラマ!」


 『妖魔山』の麓の道を登り始めていこうとしたイダラマに、戦いに敗れた後も腰を下ろして地面に座っていたコウエンが立ち上がって声を掛けるのだった。


 その声に足を止めたイダラマは、ゆっくりと後ろを振り返る。


「コウエン殿。先程我々の邪魔をしないと約束して頂いた筈だが?」


 そう告げるイダラマの目は、煩わしそうなモノを見るような目であった。


 どうやらもうコウエンに対して一切の興味を失っているようで、これ以上無駄な時間を掛けさせるな、とイダラマは考えている様子なのが、傍からでも見て取れる程であった。


「分かっている。もうお主達の邪魔をするつもりはない。むしろワシにお主らの協力をさせてもらえぬか?」


「「こ、コウエン殿!?」」


 突然のコウエンの言葉に、周りの『同志』達が驚いた声をあげながらコウエンを見る。


「ほう……? 『同志』を助けに『サカダイ』へ戻ると息巻いていた『サクジ』殿に同調し、自分の野望さえも後回しに考えていた貴方が、私達の協力をしたいと?」


「ああ。お主と直接戦った事でワシは、お主の大望とやらをこの目で直に見ておきたいと思ったのでな」


 イダラマはそう話すコウエンの真意を確かめるように視線を送って交わせ始めるのだった。


 先程まで死闘を繰り広げていたとは思えない程に、両者は冷静な態度のままで視線を送り合って探り合う。


「ふっ、コウエン殿も食えぬ御方だな。嘘も方便とはいうが、貴方は私の協力すると言いながら、その実は自分の狙いであった『妖狐』と対峙する為に私を利用しようと企んでおられるのだろう?」


「はて? 何の事を言っているのか分からぬが?」


 何処か白を切るような態度を見せながらも『コウエン』は、そのイダラマの見る目をギラつかせ始める。


「ククククッ! 再会してから居酒屋に蔵屋敷と合わせてみても、何処かコウエン殿の考えている事が、雲のように掴みどころがないものだと訝しんではいたが、どうやら貴方は本当の意味で『禁止区域』に挑む為の機会を窺っていたというわけか!」


 『アコウ』や『ウガマ』、それに他の狐面をつけたイダラマの護衛達は、小首を傾げたりしながらイダラマの話を聞いていたが、尋ねられた張本人である『コウエン』はニヤリと笑みを浮かべるのだった。


「ふふっ、もちろんあの屋敷で突如として現れた者達の話を聞いて『同志』共を助けようと考えた事は真の事だぞ? だが、ワシ個人としての本音を吐露するならば『サクジ』殿達よりもお主と共に『妖魔山』へ向かう事を優先したいと考えた事は否定出来ぬ。だからこそ、ワシだけは『同志』がコウヒョウの町で暴れていると聞いた時に、この機会を逃す手はないと、この手でお主と相対する事を選んだのだ」


 つまり『同志』が『コウヒョウ』の町で暴れていると『予備群』の男から聞いた時、既に彼の中では『イダラマ』が関係しているであろうと、ある程度は予測を立てていて、その上で今回この場で起きる事も予見していたという事であった。


「まこと『コウエン』殿は食えぬ男だな。前時代の『シギン』様やその側近達であった『サイヨウ』殿達も、貴方という幹部に手を焼いた事だろう」


「カッカッカ! 馬鹿を言うなイダラマよ。あの『シギン』様の周りに居た者達は、その全員がワシ以上に食えぬ者達であったぞ? 特に主らの前では紳士的な態度を取っておった『サイヨウ』こそが、あの『シギン』様が一番手綱を握れぬと仰られておった程じゃわい」


「ほう……? サイヨウ殿がですか」


 その言葉にイダラマは驚いた様子で声をあげるのだった。


 ――どうやら前時代の『妖魔召士』組織の出来事を思い出したのだろう。


 コウエンは過去を思い耽りながら、これまでの様子とは違って楽しそうに、そして見た事もない程に嬉しそうに笑うのだった。


 過去の事を告げるコウエンの言葉に耳を傾けているイダラマは、普段の彼であれば興味なさそうな態度を取るのだが、どうやら今の話は彼には珍しく興味をそそる話だったようで、存外に悪くなさそうな様子を見せるのだった。

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