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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
イダラマの同志編

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1515.予測範囲外からの一撃

 全盛期の頃のような膨大な『魔力』を用いて暴力的に勝負を決めるような戦い方ではなくなったコウエンだが、流石に前時代の『妖魔召士』達の間で五指に入るといわれただけの事はあり、年齢に応じて戦略に重きをおいた戦い方に磨きがかかって、こちらのコウエンの戦い方も厄介だと思い直すイダラマであった。


 今のコウエンは『力』の強さを失う代わりに『技』が洗練されたといったところだろうか。


 かつてのコウエンは『透過(とうか)』技法など用いてはおらず、その瞬発性と『捉術』を活かす『魔力』が目立っていたのだが、この凡そ数十年の間で『()()』の()()()、そして実戦で扱えるレベルにまで押し上げている事。


 更にはその『透過』の重要性に早くから気づき、同様に研究を行い続けているイダラマだからこそ『透過』技法を囮に使う事が如何に効果的かという事を瞬時に見抜き、実戦で行う胆力。


 これだけ『イダラマ』を相手に優位性を築けるのであれば、間違いなく今も『最上位妖魔召士』に相応しい実力といえるだろう。


(コウエン殿は既に何らかの『捉術』を使うであろう『印行』を結び終えている。再び設置している『スタック』を使って私に『魔利薄過(まりはくか)』を強制的に継続させた上で、本命である『捉術』を『透過』技法を用いて直撃させる事を狙っているであろうな……。このままでは『魔利薄過(まりはくか)』を解除させられた上で決定的な一撃を受けざるをえまいが、ここで解除するか? どちらにしても大きな損害を負う事になるが、反撃を行える一発分がより大きい方を選ぶのが必然となるだろう!)


 本来であれば『魔利薄過(まりはくか)』を扱うイダラマは、一対一であればノーダメージで切り抜けられる程の強さを有していたが、流石に同じ『透過(とうか)()()()()()()()をこれ以上ない程に見せつけてくるコウエンに対して、イダラマは被弾覚悟で勝負を挑ませられる事を是とさせられてしまうのであった――。


 先程と同様に『スタック』させているコウエンの『魔力波』が、背後からイダラマに襲い掛かろうとするが、前方に居るコウエンは今度こそ『透過』技法を使いながら、先程の『印行』によって後は放つだけとなった『動殺是決(どうさつぜけつ)』を行う為にイダラマに手を伸ばしていく。


 『魔利薄過(まりはくか)』を強制的に使わせた上で、更にその『魔利薄過(まりはくか)』を強制解除させる『透過』技法を用いて放たれる恐ろしい殺傷能力を持つ『動殺是決(どうさつぜけつ)』という一撃必殺を繰り出すコウエン。


(流石の強さだったぞ、イダラマ! このワシにここまで策を練らせたのだ。その成長ぶりに敬意を表して命だけは助けてやろうぞ!)


 まさに確定した勝利を掴みに行くだけの作業にしてみせたコウエンは、もう勝負はついたとばかりにその顔に笑みを浮かべているのだった。


 ――しかし、勝負の行方は()()()()()()()()()()()()()


 イダラマに無傷の勝利を諦めさせた事は確かだが、その所為で彼は勝利を掴む為に被弾を覚悟してその先へと踏み込ませてしまっているのである。


 それはつまり『イダラマ』が()()()()()()()()()()()()というわけであり、ここでコウエンは、決して()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのであった。


 背後からコウエンの『魔力波』がスタックを通して放たれてきている最中、何とイダラマは『魔利薄過(まりはくか)』を解き、自身もまた攻撃が出来る状態へと戻すと、恐ろしい早さで『印行』を結び終える。


 しかしもう全ての準備を整えていた『コウエン』の方が、今から何かを行おうとする『イダラマ』よりも遥かに早い。


「何かをやろうと術を解いたようだが、もう遅いぞ! ワシの勝ちだ、イダラマ!」


 …………


 ――まず『魔利薄過(まりはくか)』の『透過(とうか)』技法を解除している『イダラマ』に『スタック』から放たれてたコウエンの『魔力波』が、彼の背後から直撃を果たした。


 恐ろしい痛みと熱さがイダラマの身体を襲うが、イダラマは目を剥くようにしながら堪えると、そのまま『印行』を行い続けると、遂にイダラマも『捉術』を放つ。


 目の前まで迫って来ていたコウエンの右手がイダラマの首を掴んだが『動殺是決(どうさつぜけつ)』の効力が発揮されるコンマ数秒――。


 イダラマの放った『捉術』の発動自体が早かった為に、その『捉術』の効力が先にコウエンに届くのだった。


「ぐっ、……――!?」


 そのイダラマの放った『捉術』によって、コウエンもまたイダラマの味わっている痛みと同等のものを味わう事となった。


 突然の出来事にイダラマにトドメを刺そうとしていたコウエンは、伸ばし掛けた手を引っ込めてうずくまるように腰を曲げるのだった。


 そんなコウエンの苦しむ姿を冷静に眺めていたイダラマもまだ痛みは続いているが、表情には一切出さずに、再び『印行』を結び始めるのだった。


 ――現在、この両者は()()()()()()()()()()()()()()()である。


 それでもイダラマがコウエンより被害が少なく見えるのは、やはりこの状況を生み出したのがイダラマであるからだろう。


 最初から痛みを覚悟していたイダラマと、全く予測していなかった攻撃をその身に受けたコウエンとでは、全く同じダメージであっても身体的と精神的に差が出るのは当然であったのだろう。


 コウエン自身が放った『魔力波』は、紛う事なき『最上位妖魔召士』の一撃であり、同じ『最上位妖魔召士』であるイダラマでさえもその身に受けた時に苦難の表情を浮かべる程であった。


 それほどの一撃を受けて地面に手をつきそうになる程の激痛で苦しんでいるコウエンに向けて、遂にイダラマは次の一手を先に投じる事を可能とするのだった。

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