1511.互いの透過技法と、相反する研究結果
エヴィ達が膠着状態なのと同様に『イダラマ』と『コウエン』も可視化出来る程の『魔力』を手に纏わせているモノの、こちらも膠着状態であった。
先程までは勢いよく言葉の応酬を行っていた為に、直ぐに戦闘が開始されるだろうと『同志』達は思っていたのだが、互いに動きを見せずに相手の出方がを窺っている状態が続き、その空気の重苦しさから『同志』達は生唾を呑んで見守っていた。
本来イダラマ程の『魔力』を有する『妖魔召士』であれば、相手が如何に策を練って構えていたとしても堂々と真正面から突破を行える筈であるが、今回の相手はその『魔力』のごり押しが通用しないと彼自身が理解をしていたようで自分から動くのではなく、あえて『後の先』を狙う様相を見せていた。
そうせざるを得ない理由の一つが、先程『同志』の放った『式』である『妖狐』に対して行った『コウエン』の『技法』が関係していたのである。
それは『イダラマ』が行っていた『技法』の一つである『透過』の技法を『コウエン』が使っている事にあった。
この『透過』はソフィ達のような『魔族』も『魔法』を用いる時に使うモノではあるが、あくまで本来の『透過』とは、そういった『魔法』などの一助となるように用いる事が多い戦闘技術の一つでしかない。
『魔法』を使うのに必要なその世界の『理』や『魔法』に意味合いをもたせる『発動羅列』とは違い、この『透過』を使わなくても『魔法』や『捉術』を使う事が出来る為に、これまでこの『ノックス』の世界の『妖魔召士』達の間であってもそこまで広まる事もなく、使用者もごく一部に限られていた。
それはつまりこの『ノックス』の世界においては、この『透過』とは失われつつある『技法』といえるモノであったのだが、一部の『妖魔召士』達の中にはこの『透過』技巧の有能性に気づき、誰に教わるでもなく独自に研究を重ねて『透過』技法を会得する者が、何時の時代にも一握り程度ではあるが存在しているようである。
そして前時代では表立っては『透過』を用いて戦闘を行う『妖魔召士』は見受けられず、この『コウエン』も『イダラマ』も誰かが使っているのを見て真似たわけでもなく、両者ともに独自の研究、研鑽の結果、この『透過』技法を会得するに至ったようである。
だからこそ、互いに行き着いた『透過』技法は似て非なる『技法』の研究結果が示されており、先程の『コウエン』が『妖狐』に行った『透過』技法は、確かに『透過』の影響が色濃く出ていたのは攻撃主体型といえるものであった。
そして対する『イダラマ』の『透過』技法だが、こちらも誰かを真似たわけではなく、独自の研究によって編み出された為に、その『透過』技法をイダラマ自身が『魔利薄過』と名付けたようで、その『透過』技術が色濃く出た結果は専守主体型といえるものであり、先の蔵屋敷で対する『妖魔召士』からの攻撃に際して、彼はその身体の全てを『透過』技法の影響によって完全回避といえる状況を作り出して見事に『回避』を行ってみせることが出来ていた。
このように同じ『魔力』を使った『透過』技法ではあるが、その中身は研究を行った者同士で全く別物となっている為に、同じ『透過』だからといって完全にその能力自体を把握する事は難しく、単に一目見ただけでどのようなモノかを完全に理解する事は出来ない為に、この膠着状態が生まれているという事である。
(※因みにこの『透過』という技法は『ノックス』の世界だけではなく、ソフィ達の居る『アレルバレル』の世界や、大魔王フルーフの居る『レパート』の世界でもイダラマ達と同様に独自の『透過』技法はその研究を行った者達によって違う特色を有しながら『技法』はあらゆる歴史を紡いでいっている)
そしてこの『最上位妖魔召士』同士の膠着状態を先に破ったのは、やはり攻撃主体型のコウエンからであった――。
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