1505.同志の行動に納得出来ない者達
※加筆修正を行いました。
現在『妖魔山』の麓には人が休めるような『旅籠』のような施設もなく、当然に村などもない為に人の姿も皆無である。
ほんの少し前までは『ケイノト』の町から妖魔召士の下部組織である『退魔組』の『特別退魔士』が派遣されていたが、現在は『サカダイ』の町を拠点とする『妖魔退魔師』組織にこの『妖魔山』の管理が移された為、山の警備を行う退魔士の姿もなかった。
もちろんシゲンやミスズ達が此度の『妖魔山』の調査を終えた後には、改めて『妖魔退魔師』組織からこの『妖魔山』に警備を派遣する予定ではあるが、実際にこの『妖魔山』に入る許可が下りるまでは『予備群』や『妖魔退魔師衆』といった『妖魔退魔師』組織の人間が山に立ち入る事は許可されていないのが現状であった。
つまりこの山の麓から直ぐといえる場所にある『コウヒョウ』の町に派遣されている護衛隊の『予備群』が、山に何かあった時の為の防衛ラインとなるため、他の町よりも派遣されている『予備群』の数が多いというわけである。
イダラマはその現状を理解した上で逆手にとって『予備群』牽いては『妖魔退魔師』組織に『はぐれ』の前時代の『守旧派』の『妖魔召士』の所為にしようと目論んだのだが、まさか『サカダイ』に向かった筈の『コウエン』が戻って来るという現状は予想外の出来事であった。
(こうなってしまった以上は『妖魔退魔師』組織とも真っ向からぶつかる事になるかもしれぬが、この場に『サクジ』殿達ではなく『コウエン』殿が戻ってきたというのは不幸中の幸いだな。元々この『コウエン』殿は今の私と同等かそれ以上の程の『魔力』を持っている筈だ。先の会合ではその思想の違いから一度は手を組むことは諦める事とはなったが、あの『妖魔山』に『コウエン』殿と数人程度の『上位妖魔召士』の『同志』だけが戻ってきたのは好都合といえる。今の私と麒麟児が居れば、あの操っている者と同様に『コウエン』殿も操れる可能性が高い。そうなれば確実に『最上位妖魔召士』の五指に入る程の『コウエン』という男を支配下に置けるかもしれぬ)
そうなれば、当初の目的よりも更に都合がいいと考えたイダラマであった――。
…………
そしてその『コウエン』達は自らも『イダラマ』達に『結界』を張られながら追われているとは露知らず『コウヒョウ』の町で北口を守っていた町役人や、あの『妖魔退魔師』組織から派遣されてきた『コウヒョウ』の護衛隊『予備群』を襲ったという『同志』の『妖魔召士』達を追って『妖魔山』の麓を目指していた。
「もうそろそろ『妖魔山』が見えてくる頃だが、我らが『同志』は何処であろうか」
「しかしコウエン殿。未だに我らが『同志』が、このような勝手を行ったとはとても信じられぬのですが……」
「然り。確かにあの蔵屋敷での会合で、皆が『妖魔山』の管理権を移す事に対して不満を吐き出すかの如く騒いではいたが、それでも現実にこのような真似をするとは私も信じられぬ」
コウエンと共に『コウヒョウ』の町へと戻ってきた彼らは、口々に自分達の『同志』のしでかした事を一様に信じられずにいるようであった。
「ああ……。ワシも気持ちは同じだ。確かにずっとワシらが守ってきた『妖魔山』の管理権を『妖魔退魔師』の奴らに奪われた事に対して納得のいかぬ気持ちは理解が出来るが、それでも『コウヒョウ』の町に居る人間達を襲ってまで奪い返そうとする事は共感が出来ぬし、あやつはイダラマに襲い掛かった後、ワシが注意をした時は素直に応じておっただろう? そうだというのにこんなにも直ぐに『予備群』達を襲ったというのが信じられぬのよな」
(あの時、あの小童の目が何やらワシらの『魔瞳』を使う時のように光っていたのも気に掛かる……。他の者達は気づいてはおらなんだようだが、確かにこの耳であの不思議な甲高い音も聞こえた。もしかすると我らが『同志』のこの行動は、イダラマ達の仕業なのではなかろうか……?)
コウエンは『妖魔山』に向かう道中で、これは全てイダラマ達が仕組んだ所業なのではないのかと訝しむのであった。
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