1504.有望な戦力とイダラマの画策
※加筆修正を行いました。
コウエンは護衛隊の予備群達を労う言葉をかけながら『妖魔山』に向かった『妖魔召士』と『妖狐』を止めると言い残すと、数人の『同志』を連れて町を出て行った。
その様子を陰から見ていた『イダラマ』達も騒ぎに紛れて足早に北口の門から出て行くと、コウヒョウの町を後にするのであった。
「やれやれ……。まさか『コウエン』殿が戻って来るとは思わなかったな」
コウヒョウの町と『妖魔山』の麓まで半分くらいの距離の道中で『イダラマ』は、ぽつりとそう漏らす。
「あの男に騒ぎを起こさせて護衛を行う人間達に『妖魔召士』の仕業だと周知させて、僕らが山の麓まで無事に辿り着いたら、後は静かに処理するだけだったのにね。あのおっさんが居るとなると、少々面倒な事になりそうだよ、イダラマ」
「だが、数人の『同志』だけを引き連れて『コウエン』殿が戻ってきたのは都合がいいといえば、まぁ都合がいいのだがな」
エヴィの言葉に耳を傾けて頷いたイダラマは、何か考えがあるのか口元に手をあてながらそう告げるのだった。
「何だい? まさかあのおっさんを当初の目的通りに『妖魔山』へ連れだって行こうと考えているのかい? 君に突っかかってきた『サクジ』とかいうおっさんに比べたらまだマシだけど、それでも頑固そうなのは変わらなさそうだから、直ぐに引き返して『サカダイ』だかっていう町に戻って行きそうだけど」
「ああ……。しかし『コウエン』殿のあの『力』を利用しない手はないのだがな。アコウじゃないが、流石に先代の組織で五指に入ると言われていただけあって『コウエン』殿は侮れぬのだ……。まぁ、お主が相手では流石の『コウエン』殿もどうしていいか分からぬといった様相を見せてはいたがな」
イダラマは居酒屋で起きた出来事を思い返しながら、静かに笑うのだった。
「確かにあのおっさんの『魔力』は恐ろしく高かったね……」
(僕だって『完全な不死』だというわけじゃないしね。あのおっさんがこの『力』のカラクリを知った上で、然るべき対処法を理解していたならば、やられていたのは間違いなく僕だった筈だ……)
殺し合いという状況であったために、あの居酒屋での一戦だけを評価するのであれば、終始コウエンを圧倒したように思える戦い方を見せたエヴィに軍配が上がるが、そのエヴィ本人は再戦すればどうなるか分からないと結論を出したようである。
大魔王エヴィは『九大魔王』の中でも『ブラスト』や『ディアトロス』、それに『イリーガル』に次ぐ恐ろしい大魔王と『アレルバレル』の世界の『魔界』の魔族達に恐れられている程であるが、それは未知数な能力とまるで『煌聖の教団』の総帥であった『ミラ』と同様に首を刎ね飛ばそうが、臓器を粉砕してみせようが、何事もなく元々の身体へと『再生』を施して襲い掛かってくる為に、どうやっても倒せないと思われているからに他ならない。
しかしこのエヴィは『イダラマ』が口にした通り、戦力値と魔力値だけで判断したならば、よくてランク『4』。
この『ノックス』の世界であれば『イダラマ』自身や『コウエン』はおろか、彼らのような『妖魔召士』と名乗れる存在が相手にもしない程に格下と呼べるランクなのである。
もちろんこれからの成長を考えれば、充分にエヴィは伸びしろがあると考えることも出来るが、現時点において『コウエン』がエヴィの対処法を理解した上で真っ向からぶつかれば、十回戦えば十回とも『コウエン』が勝る結果となるであろう。
あくまで『殺し合い』という場でエヴィは上手く、その本領を発揮して勝利を収めたが、仲間に出来るのであれば『コウエン』は決して外す事の出来ない有望な逸材なのは変わりがないのであった。
「それでどうするんだい?」
「まぁ、ひとまずは『妖魔山』へ向かおうではないか。最終的な判断は現状の『コウエン』殿の力量を実際に確かめてからにしよう」
どうやらイダラマは『妖魔山』の麓で待機させている『妖魔召士』を試金石にして『コウエン』の現在の力量を図ろうと画策しているようであった――。
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