1472.痺れを切らし始めた大魔王
※加筆修正を行いました。
「皆の気持ちを確かめられた事は非常に喜ばしい。それで『イダラマ』よ、お主も『妖魔山』より先に我らが『同志』の救出を優先し、このまま『サカダイ』へ向かうのであろう?」
「いや、申し訳ないが我々はこのまま『妖魔山』へ向かわせてもらう。先程『サクジ』殿も仰られていたが、確かに『妖魔退魔師』の幹部達が『ゲンロク』達の居る里へと向かうという話は私も掴んでいるが、その後に奴らが『妖魔山』へ向かうというのであれば、今この時にでも『妖魔山』へ先に行かねば厄介な事になる。今『サカダイ』に戻れば我々が『妖魔山』に入る事は、今後不可能になると考えた方がよい」
その言葉に気分を高揚させて各々で話を行っていた『妖魔召士』達の喧噪が止み、皆一様に『イダラマ』に視線を送るのであった。
「な、なんたる自分勝手な……! 我らの『同志』の救出よりも『妖魔山』へ入る事の方が重要だと、そう申すのかイダラマよ!」
サクジはイダラマの気持ちを知っていてあえて、大袈裟に話しながら周囲の者達に聞かせるのだった。
どうやらサクジはイダラマを利用して『扇動』を行い、自らの思惑を完全なモノに仕立て上げようというのだろう。
「私は『妖魔山』で為さねばならぬ事があるのだ。その為に『妖魔召士』組織を裏切って私はここまで来たのだから、これだけは曲げることは出来ぬ」
「その為さねばならぬ事とは、我らが『同志』の命よりも大事な事だとでもいうのか? そんな戯けた言い訳が通用すると思うのかイダラマよ! ワシらは確かに『はぐれ』となった身ではあるが、ここに居る者達はワシを含めてこれまでの『妖魔召士』の本流を汲み取り歴史を紡ぎ背負ってきたのだ! お主が『妖魔山』で本当にやろうとしている事が何なのかは分からぬが、そんな些末でチンケな野望の為に……」
仲間と天秤にかけるつもりなのかと続けようとしたサクジだったが、彼はそれ以上口にすることは出来なかった。
――何故なら『イダラマ』の全身をサクジ程の『上位妖魔召士』ですら怯む程の『魔力』が纏われていたからである。
「私の為すべき大望をチンケなモノだと!? 貴様は一体何様のつもりで上から物を申しておるのだ!!」
「ぬ、ぬぅ……!!」
イダラマが怒号を発した瞬間に、先程までより更に纏っている『魔力』が膨れ上がり、もはや『サクジ』の『魔力』などあっさり超える程の『力』をイダラマはこの場に体現してみせる。
その『魔力』はすでに当代の『最上位妖魔召士』の規定魔力値を大幅に上回り、前時代の歴代最高と呼ばれていた『最上位妖魔召士』に匹敵する程の魔力量であった。
「落ち着け、イダラマよ。どうやらお主の『妖魔山』で為すべき事というのは、ワシの狙いである『妖狐』を倒す事に匹敵。いや、もしくはそれ以上の野望を抱えておるようだな」
喋る事が出来なくなったサクジに代わり、ずっと成り行きを見守っていた『コウエン』が口を挟むのであった。
「コウエン殿。悪いが共に『妖魔山』に行かぬのであれば、もう私は貴方がたとは行動を共に出来ぬ。以後は勝手にさせて頂く事にするが構わぬな?」
「……」
イダラマがコウエンにそう告げると、コウエンは無言で何かを考え始めている様子であった。
「ねぇ、イダラマ? 悪いんだけどさ、僕は早く元の世界へ帰ってあの御方の為に『煌聖の教団』の愚か者達を皆殺しにしないといけないんだ。こんなところで話をしていないで、さっさと『妖魔山』へ向かおうよ。こいつらが気に入らないんだら僕も早く戻りたいし、今ならサービスで代わりに相手をしてやってもいいよ?」
横に居たエヴィがそう口にすると目の前にいたコウエンだけではなく、彼が店で暴れている様子を見ていた他の『同志』達も厭そうに顔を歪めるが、そんな『同志』達は恐れを振り払うかのように口を開き始めるのであった。
「ほ、ほざくなよ、小童! お主の事をある程度理解しておれば、ワシら『妖魔召士』は如何様にも対策を取ることは出来るのだ。初見で上手く行ったからといって調子に乗るなよ!」
「そうだ! ワシらをお主一人で全員相手にするだと? 出来るのならばやってもらおうではないか!」
「ちょっ、ちょっと待つのだ――……!」
イダラマの魔力を前にして怯みを見せていた『サクジ』は、勝手に動き始めた『同志』達に制止を呼びかけようとしたが、すでに前に居た何人かが『魔力』を纏わせながら攻撃態勢に入るのであった。
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