1469.大魔王ソフィの到達している魔の領域
※加筆修正を行いました。
大魔王『セルバス』も大魔王『ヌー』も一つの世界で支配者となれる程の『器』を持っており、当然に力だけではなく『魔』の領分に対しても他者が追いつけない程に『智』を得ている。
それは自他共に認める程であるが、そんなセルバスは胸中で『自分』程度では大魔王『ソフィ』のやっている事の理屈は理解が出来るが、何故それが行えているのか、その瞬間的に浮かぶ『案』や行えるだけの『技量』に説明がつかないと認めるのであった。
「お主の言う通りだ。頭で考える従来通りの『発動羅列』を用いて『魔力吸収の地』を発動させようと考えながら、身体では『レパート』の世界の『理』を用いて全身に『魔力』を行き渡らせているだけに過ぎぬ。ただ『発動羅列』を表記させる時に『アレルバレル』の世界の『理』も同時に使い、上手く『魔力』コントロールを行って上手く脳内で描いた『魔力吸収の地』の『発動羅列』を展開しようとすると、互いに二つの世界の『発動羅列』が混ざりあう感覚が体感出来るようになった。そこで先程のお主のように『魔力』コントロールで二つの世界の『発動羅列』を揃えるイメージを持って二つの世界の『理』で用いた『魔力』を半々になるように調節を行えば、勝手に二つの世界の『理』の文字列が混ざって新たな『魔力吸収の地』が行えておるということだ」
――そのソフィの結論を聞いた『ヌー』と『セルバス』は同時に全身に震えが走った。
(こ、こいつ……! 当たり前の事のように話をしやがったが、従来のやり方である脳内で『魔法』の『発動羅列』を描きながら、身体では『レパート』の世界の『理』で『魔力』を行き渡らせて『スタック』の準備を行う。これはまだ理解が出来るし、俺達であれば容易に行える事だが、その次から言っている事が全てヤバすぎる……)
あまりに荒唐無稽なソフィの行いと言葉に、愕然としながらヌーは思案を加速させる。
(すでに『レパート』の世界の『理』で『スタック』の準備を行っている状態で、従来通りに『アレルバレル』の世界の『理』を同時に用いて『発動羅列』を世界に示すだと? そ、そんな事をすれば先程の俺が引き起こした暴発よりも酷い暴発が起きる筈だろうが! そ、その上にさっき俺が暴発した要因となった『発動羅列』を同時に二つの世界の『理』で表記させる為に『スタック』発動前の待機状態の身体に更に『魔力コントロール』で描いた『発動羅列』をキープさせながら、その上に別世界の『理』で『死の結界』の『発動羅列』をキープさせている方の『発動羅列』と文字列を組み合わせやがるだと……。俺が事前に二つの世界の『理』を準備した状態でさえ、混ぜ合わせようとしただけでどれだけの『魔力コントロール』の精密さが求められたと思っていやがんだ!? それをこいつはすでに二つ用意していた状態で失敗した俺の混ぜ合わせ方より、さらに複雑で難易度の高いやり方を行い、事前に準備もなしにいきなり同時に二つの『理』を用いて『発動羅列』を混ぜ合わせるとか言いやがった! そこに至るまでにどれ程の『魔力コントロール』が要求されるのか俺ですら想像がつかねぇ。その上に二つの『発動羅列』を二つの世界の『理』で用意した『魔力』を均等に分けながら調節を行うだと? その四つの工程をどうやって同時に『コントロール』すればいいんだよ。そんなもん一人で全て行えるわけがねぇだろうが!)
大魔王『ヌー』は目の前の大魔王『ソフィ』が行った事の理屈を本当の意味で理解して、もはやヌー程の魔族であっても『ソフィ』の今行った新たな『魔力吸収の地』が、他の者達にとっては奇跡に近い行為の連続の上で成り立っているのだと、認めざるを得なくなってしまうのであった。
そして大賢者『ミラ』の『煌聖の教団』に所属を行っていた程の『魔』に精通している大魔王『セルバス』もまた、ほぼ『ヌー』と同じ驚きをしていた。
(旦那の説明通りだとするならばだが、行った『魔力コントロール』は一気に四つの工程を同時に行っていたというわけかよ。まず脳内で描いた魔法の『発動羅列』を実際に世界に示す為に『レパート』の世界の『理』を用いて『魔法』を行う為に必要な『スタック』を『レパート』の世界の『理』に用いる事に使うのに一つ。そして脳内で描いていた『発動羅列』をその『スタック』させている『レパート』の世界の『理』を用いずに、待機させておきながら新たに『アレルバレル』の世界の『理』を用いた『魔力』の『スタック』を用いる為に二つ目の魔力コントロールを行う。そして『アレルバレル』と『レパート』の世界の『理』を用いた『発動羅列』を混ぜ合わせるために同時に用意している『スタック』させている『魔力』同士を半々になるように調節するのに三つ目の魔力コントロールを行い、更には先程ヌーの野郎が起こした『魔力暴発』を防ぐための手立ても当然してあるだろうから、これで一連の流れで必要な『魔力コントロール』が四つといったところか? いや、まだ旦那自身が気づいていないだけで、無意識に細かな行いにも当然『魔力』のコントロールは行っているだろうし、この四つの『魔力コントロール』だけでもどれでも失敗が許されない程の精密さが求められている筈だ。これを行うだけでどれ程気が遠くなるほどの『基本研鑽演義』が必要なのかは、この場では俺とヌー以外は理解が出来ないだろうな。あっさりと告げてくれた旦那だが、これを再現するとなると今の俺であっても最低あと数百年は『魔力コントロール』の研鑽が必要だろうし、そもそもその発想自体が荒唐無稽すぎてやろうと思えないだろう。出来るという自信がなければ、いくら『基本研鑽演義』の研鑽を積み重ねていたとしても実際にやろうとは思わないだろうな)
この大魔王ソフィと同じ発想に至る『魔』の天才が居るとするならば、やはり大魔王『フルーフ』や大賢者『エルシス』であろう。
そして大賢者『ミラ』もまた、やり方自体を理解した後であれば、この前者達に追い縋る形で使えるようになるかもしれない。
分かっている事は、一介の世界の支配者となれる大魔王程度では、真似が出来ない領域の事があっさりと目の前で行われていたという事であった――。
『ブックマークの登録』や『いいね』また、ページの一番下から『評価点』を付けていただけると作者のモチベーションが上がります。宜しければお願いします!




