1465.法則の外側に居る化け物
※加筆修正を行いました。
副総長のミスズが思案を続けている横で『セルバス』も何かを考えるように口元に手をあてて、二つの『結界』を見続けていた。
その二つの『結界』とは、当然『魔神』の『聖域結界』とその内側に張られているソフィの『魔力吸収の地』の事である。
「どうした、セルバス? 何をそんなにまじまじと見ておるのだ?」
「ああ、旦那……。いや、俺の知識の中にあった旦那の『死の結界』は『理』を用いた『魔法』などに対しては『吸収』の効力が発揮されていたとは思うんですけど、今のミスズ殿の『理』を使っていない『青』に対しての『魔力』にも旦那の『死の結界』の効力が同様に発揮されたなと思いましてね……」
セルバスの言葉に『ヌー』がはっとした表情を浮かべて、ソフィの方はニヤリと笑みを浮かべるのだった。
「そういえば……、確かにそうだったな。失念していたが、ソフィの『死の結界』は『理』を用いた『魔法』に対しては『吸収』を行うが、それ以外の単に『魔力』を使うだけであれば発動を阻止するだけだったよな?」
「うむ。我の『魔力吸収の地』の従来の効力は、お主がいま口にした通りの代物だった」
「『従来』という事は、まさかお前……?」
どうやらソフィの『死の結界』がこれまでより更に厄介なモノへ進化を遂げて変わったのだとアタリをつけて、厭そうな表情を浮かべながらソフィに訊ねるのだった。
「クックック! お主がこの世界にきたことで『三色併用』を纏えるようになったように、我も『リラリオ』の世界で新たに『力』の使い方と、それが齎す可能性とやらを発現したのだ」
何やらソフィは上機嫌になりながら大魔王ヌーにまるで彼にしては珍しく、自慢をするかのように『魔力』を体中に行き渡らせ始めるのだった。
「我がこれまで使ってきた『魔力吸収の地』は、あくまで『レパート』の世界の『魔法』をフルーフから『発動羅列』を通して教わり、そして『アレルバレル』の世界の『理』を用いる事を可能とした『魔法』であるがな? この『魔法』は元々『レパート』の世界の『魔法』であるだろう? 我はずっとフルーフやエルシスの話を傍で聞いていて『発動羅列』を無から生み出すのではなく、今あるその『羅列』の順番を組み替える事によって『効力』を変える事が出来るのではないかと考えたのだ」
「は、はぁ……。しかし『発動羅列』というモノの『文言』はすでに『魔法』として完成している時点で定められていて、後から変えて思い通りに効力を発揮させるには『ミラ』様のような稀有な能力を持っているか『理』を生み出す事の出来る程に『魔』に精通している稀有な『存在』……。旦那がさっき名を出したような『フルーフ』や『エルシス』といった『魔』の化け物にしか出来ないと思うんですが」
――そうなのである。
今、大魔王セルバスも口にした通りだが、既存の『魔法』に新たに『発動羅列』を加えて思い通りに効力を変えるという『技法』は、誰もが一度は考えて可能にしようと模索を行うが、当然そんな簡単に行えることではない。
決められた『文言』を教科書通りに唱える事で『魔法』というモノは成り立つのである。そしてその教科書通りの『魔法』の源こそが『発動羅列』であり、この『羅列』を適当に組み替えたところで『魔法』が発動されずに不発に終わるか『魔法』自体の発動に失敗して『魔力』の『暴発』が起きるかが関の山である。
だからこそ、大賢者『ミラ』は『フルーフ』という存在を洗脳して『ダール』の世界の『魔神』が使っていた『高密度レーザー』や、このソフィに放ったような『円状に広がる浄化の光』のような神々の『魔神』の領域の使う『技法』を『魔法』にするためにフルーフに『発動羅列』を読み取らせて、更に『魔神』の『力』に対して新たに『ミラ』がその『発動羅列』を自由に使えるように『再構築』を行って『魔神』の『技法』を『魔法』へと変革を行ったのである。
フルーフのように『発動羅列』を読み取れたり、ミラのように『既存』の『魔法』を使いやすく置き換えられる存在が、互いの能力を上手く組み合わせて行えたからこそ出来た謂わば離れ業の類なのである。
大魔王ソフィは確かに誰から見ても『化け物』であり、このソフィと戦闘ともなれば誰もが諦める程に最強の存在であるが、それでも一つ分野が変われば話は変わる。
この最強の大魔王であっても『発動羅列』を読み解く力や、自在に組み替える技術は備わってはいない筈なのである。
あくまで『魔』の『研究』に関してであれば、大魔王ソフィよりも大魔王フルーフの方が上であり、また違う『魔』の分野である『発動羅列』の組み換えに関しては、大賢者エルシスや、大賢者ミラの方に軍配が上がるだろう。
いくら『魔力』が高かろうと『力』が強かろうと、そういう面ではどうにもならないというのが世界の法則であり、謂わば定められた世の中の『摂理』のある筈なのである。
しかしこの『ソフィ』という大魔王は、そんな法則を無視するかの如く、ようやく他人の前で披露が出来るとばかりに嬉々としてあり得ない事を話し始めるのであった――。
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