1454.前時代の妖魔召士
※加筆修正を行いました。
『イダラマ』は周りで不満を爆発させている、前時代の『妖魔召士』の『同志』達を止めるのも骨だとばかりに溜息を吐くのであった。
「む?」
しかしそんなイダラマは、この蔵屋敷に張ってある自身の『結界』に何者かが入り込んだのを確認し、直ぐに入口に居る自分の護衛として雇っている『アコウ』と『ウガマ』に視線を向けるのだった。
どうやら『アコウ』と『ウガマ』も直ぐに侵入者に気づいていたようで、二人共が同時に腰を上げると刀を構えながら入口の扉に注視し始める。
イダラマはそこで周りの騒いでいた声が聴こえなくなったなとばかりに、コウエンや『同志』達の方に軽く視線を向けたが、そこでイダラマは感心するように小さく声を上げた。
何とあれだけ熱狂するように騒いでいた『同志』達の全員が、一斉に自身の身体に『魔力』を纏わせながら、それでいて暴発をするような事がないように、完全に『魔力』コントロールを行いつつ『アコウ』達の居る入口に視線を向けていたのである。
(ふふっ……。流石は前時代の『上位妖魔召士』達だな。今の里に居る無能共とはやはり違うものだ)
この世界の者達は『理』がない為に『魔法』は使えない。
つまり彼らは『魔力感知』や『魔力探知』、それに『漏出』などを使って屋敷に入ってきた者達の『魔力』を魔法で感知したわけでもなく、単に独自の『魔力』を用いて接近する者たちの『魔力』を意識して感知した上で、イダラマ達の動きの機微をめざとく追っていたという事にほかならない。
つまり彼らは自分達の不満を思い思いにぶつけて、互いに声を上げながらも根底の部分では、しっかりと何が起きているかを理解するように意識させていたという事であり、あれだけの熱量の中でさえ、しっかりと危機意識を有し続けている事に『イダラマ』は改めて、前時代の『妖魔召士』の実力に感心をしたということであった。
当然この蔵屋敷の事情を知る町役人達に、隠し通路を案内されてここに来た者たちである以上は、ここに向かってきている連中が味方の『同志』達である可能性は非常に高いのだが、それでも用心に越したことはない。
そして通路を上がってきた者達は、遂に『アコウ』と『ウガマ』が扉の裏側で刀に『淡い青』を纏わせて構えていると、その扉がノックされるのだった。
「誰かな?」
イダラマが扉をノックした者にそう尋ねると、直ぐに返事が返ってくるのだった。
「その声はイダラマ殿か! 私は『里』の『妖魔召士』であった『ライゾウ』だ。火急の要件がありこの場に参った!」
「同じく『里』の『妖魔召士』であった『フウギ』だ。我々の『同志』を救出する為に、どうか『力』をお貸し願いたくこの場に参った!」
「むっ! ライゾウにフウギ。無事であったか! 彼奴らは私達の『同志』だ。今すぐに扉を開けられよ!」
コウエンの隣に座っていた前時代の『上位妖魔召士』であった『サクジ』がそうイダラマに告げてくる。どうやら『ライゾウ』と『フウギ』はその言葉に偽りなく、本当にこの場に『同志』の助けを求めてきたのだろう。
「……開けてやれ」
「「はっ!」」
イダラマの言葉に入口に立っていた『アコウ』と『ウガマ』は同時に扉を開くのであった。
扉を開けるとそこに立っていた両名の男たちは、確かに『赤い狩衣』を着ていた。
どうやら『妖魔召士』なのは間違いはないのだろうが イダラマは二人の名前を聞いてもピンとこなかったが、顔を見ると確かにどこかで見たような者達だったと思い始めた。
どうやら『ライゾウ』と『フウギ』はイダラマの事を『同志』と思っていたようだが、イダラマの方はそこまでこの二名の『妖魔召士』に対してそこまでの仲間意識を有してはいなかったようである。
「何やら重要なお話をしているところに申し訳ないが、こちらも差し迫った状況である為に許されたし!」
『ライゾウ』と『フウギ』は『イダラマ』と『コウエン』を顔を見ながらそう告げた後、扉を開けるように指示を出した『サクジ』の方に視線を向けるのであった。
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