1451.コウヒョウの蔵屋敷
※加筆修正を行いました。
「な、何なんだ。こやつは一体……!」
「コウエン殿、ひとまずここを離れるぞ。この町も最近は『妖魔退魔師』組織所属の『予備群』達を警備として雇っている筈だ。これだけの惨状が起きれば裏通りの店で『結界』を張っているとはいえ、奴らは直ぐに駆けつけてくる」
「ちっ! お前達、場所を移すぞ!」
「わ、分かった! そうしたほうが良さそうだ」
イダラマ達も自分の護衛達に視線を送り、蹲っている『エヴィ』を連れて裏口から外へ出るのであった。
…………
店の裏口から外を出たイダラマ達だが、道行く人達の間で騒ぎなどは起きていなかった。
どうやら上手く『結界』が作用しているようだった。
「ねぇ、イダラマ。君達の『同志』とやらと合流が出来たんだったらさ、そろそろ『妖魔山』ってところへ行こうよ。用事を早く済ませて僕は元の世界に戻る『マジックアイテム』をもらいたいんだけど?」
「全く。お主のせいで少し計画が狂ったのだから、もう少し我慢してくれ麒麟児よ」
「ちぇっ、まぁいいけどさぁ、早くしてよ? そろそろ我慢の限界だよ僕はさぁ」
「ああ、分かっている。少し別の場所で話をしたら直ぐに向かうから、もう少しだけ大人しくしていてくれ」
「はいはい、分かったよ」
先程まで恐ろしい形相で暴れていた者と同一人物だとは思えない程に、冷静な姿のエヴィを見たイダラマは、苦笑いを浮かべるのだった。
「イダラマよ……。本当にそいつは何なのだ? 先程までワシに親の仇と見紛う程の殺意を向けてきよったが、今は全くワシに対して興味を示してはおらぬように見えるのだが……」
コウエンはまだ『エヴィ』に対して苛立ちを募らせてはいるが、逃亡中ということもあって先程までのように声を荒げることもなく、こちらも冷静になりつつ静かに隣を歩くイダラマに尋ねるのだった。
「先程のはコウエン殿のせいですよ。エヴィ殿の大事にしている『金色のメダル』というモノは、どうやら彼が崇拝に近い信奉の念を抱く存在から与えられたモノのようなのです。それを貴方があんな風にフザケ半分で奪おうとするから、ああなったのですよ……」
「いや、そうは言うがなイダラマよ……。まさか、ああなると誰が予想が出来るというのだ……?」
貴方のせいで被害者がでたと遠回しに言いたげな視線と言葉を受けたコウエンは、ばつが悪そうに視線を逸らすのだった。
「全く……。我々『妖魔召士』の本懐とは弱き者を妖魔達から助ける為だというのに、あのように死なせては元も子もありませんよ、コウエン殿」
「ふんっ! ワシ達はもう『はぐれ』なのだから『妖魔召士』の心得など持ち合わせてはおらぬ。そもそもあれは妖魔ではないだろうが」
どうやらコウエンも『エヴィ』に対して抱いていた殺意を潜めたようだが、それでも苛立ちまでは隠しきれなかったようで、窘めてくるイダラマに『エヴィ』は妖魔とは違うのだから、一緒にするなとばかりに嫌味を口にするのだった。
…………
そしてイダラマとコウエンは互いの『同志』と『護衛』を連れて、先程の居酒屋から遠く離れた、とある寂れた蔵屋敷の前に到着するのだった。
蔵屋敷の前を守るように立っていた役人数名は、イダラマの姿を見るとすぐに駆け寄ってくる。
「ここに来たという事はどうやら騒ぎを起こしたというのは『イダラマ』殿達のようですな……。すでに予備群達が数を集めておると情報がありましたよ」
溜息を吐きながらイダラマに情報を渡すコウヒョウの役人たちであった。
「やはりお主ら一般の者達でも知られているか」
「ええ。厳密には『予備群』達から通達があった事で我々も気づけた事ですが……。さぁ、ともかく中へお入りください。もうすぐ町中が騒がしくなりますので」
「すまないな。よしコウエン殿、それに『同志』の皆様方も。急いで中へ入りましょう」
「ああ……」
「かたじけない、イダラマ殿」
コウヒョウの役人の案内で先に『コウエン』達は屋敷の中へと入っていった。
「さて、我々も入るとしよう」
そう言ってイダラマも自分の護衛達に中へ入るように促すのであった。
……
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