1446.コウヒョウの町
※加筆修正を行いました。
『ライゾウ』と『フウギ』が向かっている『コウヒョウ』の町は現在の『ノックス』の世界では珍しく、他の町にはない活気に溢れていた。
「お客さん! うちはいい品物が揃ってるよ! さぁさぁ見て行ってちょうだいよ!」
「うちだって負けてないよ! この櫛は先代の『妖魔召士』が討伐したランク『7』の妖魔の獣の骨から出来たとされる櫛でね! その高ランクの妖魔の『魔力』が今も宿っていて、この櫛を使って髪を梳かせばどんな剛毛でもサラサラになるって一品だ! これを贈り物にすれば喜ばれる事は間違いなし。手に入れるなら今しかないよ! さぁどうだどうだ!」
…………
コウヒョウの町は『ノックス』随一の『商人町』とされており、至る所から商人が集められて商売が行われていて、毎日が喧噪に包まれた賑やかな町である。
そんな『コウヒョウ』の町の裏通りにある酒屋を兼業している煮売りの店の奥の一角で『イダラマ』は待ち人を待ちながら酒を吞んでいた。
イダラマの傍には青い髪の『エヴィ』の姿や、その周囲にはイダラマの護衛である『アコウ』と『ウガマ』の姿もあった。
一見すれば席にはこの四人だけしか居ないように思われるが、彼の護衛はすでにこの店の至る場所に潜伏しており、イダラマの身に何かあれば直ぐに潜伏している護衛達が携えている刀を手に駆け寄ってくるだろう。
「なぁ、イダラマ。僕達は『妖魔山』を目指してここにきたんだよね?」
用意されている酒に手を付けずに不満気にそう口にするエヴィに、イダラマは笑みを浮かべながら自分の酒を呷る。
「だからここに居る『同志』と合流をする為に、ここに来たんじゃねぇか! 話をちゃんと聞いていたのかよお前!」
長いピアスを耳にしている護衛の男『アコウ』は、何度言っても『イダラマ』に対して態度を改めようとしない『エヴィ』に注意をする事はしなくなったが、それでも色々と突っ込みを入れるのを忘れずに行い続けていた。
「いちいち君は声が大きくて煩いなぁ! 外の商売人と一緒に声が枯れるまで叫んでおいでよ。ここで騒がれると僕は頭が痛いよ」
「な、なんだと!」
「落ち着けアコウ。ここは『コウヒョウ』だという事を忘れるな」
「ちっ……! そうだったな」
――『コウヒョウ』は『商売』を生業とする者達が集う町であるが、それ故に利権絡みの問題を多く抱えている。
『サカダイ』や『ケイノト』とも当然につながりを多く持っている為に『妖魔退魔師』や『妖魔召士』だけに留まらず『煌鴟梟』の人間も多く入り込んでいて、常に情報を集めては『商売』として売り買いされもしている。
下手にこの場で揉め事でも起こせば、一体何処から何処へとその情報が漏れ出ていくか分からない。
ニコニコと笑みを浮かべながらこの居酒屋で酒を酌み交わしている客の中でも、すでに『イダラマ』達の席に視線を向けていたりと、ある程度注目を集めている程である。
そんな中で『エヴィ』のような珍しい髪の色をした少年や、その近くに居る『赤い狩衣』を来ている『イダラマ』。
更には刀に目立つ程に大きな刀を背負っている元『サカダイ』の『予備群』である『アコウ』や『ウガマ』が騒ぎを起こせば、僅か数日でこの場所から遠く離れている『ゲンロク』の里や『サカダイ』の町まで、間諜の者達が情報を届ける事になるだろう。
やんわりとウガマがその事を説明すると、この世界の住人ではない『エヴィ』は口元に手を充てながら何やら物思いにふけるのだった。
「どうした? 麒麟児よ」
「いや……。この町がそんなに厄介な場所なんだったら、何でこの場所を選んだの? 君達の言う『同志』達に会うだけならば、これまでのような『洞穴』で十分だったんじゃないかな?」
「ああ、それはだな……」
エヴィの当然の疑問にイダラマが答えようとした矢先、複数の『赤い狩衣』を着た『妖魔召士』達が『イダラマ』達の前に姿を見せるのであった――。
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