1443.同志の元へ
※加筆修正を行いました。
「ふむ。やはり『退魔組』の中で最上位の退魔士達とはいってもこの程度だろうな。ヒュウガ様が『退魔組』の者達を呼び寄せて合流するためにわざわざ『加護の森』に出向いた理由は最後まで分からなかったが、所詮は数を増やす事が目的だっただけなのかもしれぬ」
ライゾウは独り言ちながら契約を交わしている『妖狐』を『式札』に戻すと、そこへもう一人の『妖魔召士』が姿を見せ始めるのであった。
「そちらも終わったようだな。この後はどうする? もうこのままコウヒョウへ向かうか?」
姿を見せたもう一人の人間とは『赤い狩衣』を着る『妖魔召士』の『フウギ』であった。
「待て『フウギ』。退魔組に属する『特別退魔士』はあと一人残っていた筈だぞ」
「ああ……。だが、探したが見つからなかったのだ」
「おかしいな……。確か『ユウゲ』とか名乗っていた『特別退魔士』は、サカダイの町周辺で何やら話をしていた様子だった筈だから、外には出てきている筈なのだが」
「もういいだろう。さっさと我らの同志である『テツヤ』達を助けるために『コウヒョウ』へ増援を頼みに向かうとしようではないか」
「ああ……。しかしそれもどうやら急がなねばならぬようだぞ? フウギ」
「ん? やれやれ……。サカダイからはだいぶ遠く離れた所を狙ったのだがな」
『ライゾウ』と『フウギ』を取り囲むように『サカダイ』の『妖魔退魔師衆』が、続々とこの場に集まってくるのを察知する『妖魔召士』達であった。
どうやら彼らは『退魔組』を監視していた『妖魔退魔師衆』だったようで、その数を見るに『ライゾウ』と『フウギ』を『妖魔召士』達を本気で取り押さえるつもりで多くの人数を集めてきたようであった。
「ちっ……! 流石に数が多すぎる。我々だけでは『式』を使役しても全滅させるのは難しい。さっさとここから離れて『コウヒョウ』へ向かうぞ? フウギ」
「心得た。同志に報告した後は、こいつら全員を葬ってやろうぜ」
「うむ。しかし最優先は『テツヤ』達の救出だという事を忘れるなよ」
「もちろんだとも」
二人はそう言うと同時に懐から『式』を取り出すと、その場で投げ捨てた。
式札はヒラリヒラリと宙を舞ったかと思うと、ボンッという音と共に『鳥』の妖魔が出現し始める。
「よし、では行くぞ!」
「応!」
こちらに向かって恐ろしい程の速度で向かってくる『妖魔退魔師衆』を尻目に、二人の妖魔召士は『妖魔』の背に乗って大空を飛んでいくのであった――。
…………
「ちっ! やはり『妖魔召士』を相手に隙を突くといった真似は出来ないか」
本部付けの妖魔退魔師衆の『ナキト』は、空を飛んで去っていく『フウギ』達の背を見ながら悔しそうにそう呟くのだった。
「ナキト! 奴らはあきらめろ。ひとまずこいつらを運ぶのを手伝ってくれよ」
仲間の妖魔退魔師衆達は『退魔組』の数多くの亡骸を運びながら『ナキト』に声を掛けるのだった。
「ああ……。それと『ミスズ』様達に報告もしなければな。奴らは『赤い狩衣』を着ていた。間違いなく捕らえた『ヒュウガ一派』と関係がある筈だ」
「『ヒュウガ一派』だって? だったら仲間であった筈の『退魔組』の者達に手を掛ける理由がないだろう?」
「馬鹿! 知らねぇのか? 『妖魔召士』だからって全員が仲間とは限らないんだぞ? そもそも『ヒュウガ』達と『ゲンロク』達は同じ『妖魔召士』だったのに敵対しているそうじゃないか。奴らの組織も複雑だってことだ」
「そ、そうなのか……。ま、難しい事は俺には分からねぇけどよ。ひとまずこいつらを運ぶの手伝えよ。どれだけの死人が転がっていると思ってんだ」
「ちっ! はいはい……。分かってるよ」
仲間に諭されたナキトは舌打ちをしながら『ヒイラギ』の焼け焦げた亡骸を木の枝と布で作った簡易な担架のようなモノに乗せて運んでいくのであった。
…………
そしてその様子を見届けている者達が居た――。
それは見張りであった『妖魔退魔師衆』と同じく、戦闘の余波や『魔力』を感じ取って『ケイノト』へ向かおうとしていた『ユウゲ』達であった。
彼らはヤエを加えた後にミヤジと共に『ケイノト』へと向かっていたが『妖狐』の『魔力』とその存在を感じ取り、直ぐに足を止めて現場へと向かった。
そして『ヒイラギ』達に襲い掛かるランク『5』に到達している『気狐』の妖魔を眼前に捉えた瞬間にこれまでも『魔力』を感じ取れない『結界』を張っていたが、戦う事が出来ぬ代わりにその『結界』をさらに強める事の出来る『捉術』を用いて、自分だけではなく『ミヤジ』と『ヤエ』も自分と共に『魔力』と『姿』を完全に悟られるように『結界』を強化してこの場で『ヒイラギ』『クキ』を含めた『退魔組』の者達の最期を見届けていたのであった――。
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