1441.妖魔召士チアキの現実逃避
※加筆修正を行いました。
『牢』から一つ部屋を挟んで外側の部屋に五人の妖魔退魔師衆が『監視』として詰めている。
この部屋の更に外側の廊下にも二人の妖魔退魔師の見張りが居るが、この五人の妖魔退魔師衆はヒュウガ一派達を捕らえているという事で、急遽『二の門』の見張りを行っていた者達がこの場に派遣されてきたのであった。
今この『牢』に入っているのは、これまでの捕らえてきた罪人達とは違い『妖魔召士』という事で『牢』の中にはいつものように見張りが控えているわけではなく、直ぐに向かえるように一つ部屋を挟んだ場所に五人の妖魔退魔師衆が居て、その外に従来の見張りが居る。
更に『牢』の中に居る者達は『猿轡』などはしてはいないが『旅籠町』の牢を参考にして『魔瞳』を対策する目隠しを行った上で手足を縛っている。
更にここからソフィの『死の結界』が施される予定という事もあり、このまま『組長格』や『総長』に『副総長』達は本部を離れて『妖魔山』へ向かう事になる。
ミスズやシゲンがソフィの『結界』を信用して『青信号』を出したが、これに逆らう隊士は『組長格』を含めて誰も居なかった。
どうやらミスズやシゲンだけではなく『スオウ』『ヒノエ』『キョウカ』の『組長』全員がソフィの実力を認めたことが大きかったのだろう。
『妖魔山』から戻るまで『シゲン』達が居なくなったとしても、むしろ『結界』が張られた『妖魔退魔師』の本部は逆に安全だろうという『ソフィ』をよく知る『妖魔退魔師』の隊士から言葉を出す者も居たくらいであった。
……
……
……
サカダイの『妖魔退魔師』本部の『牢』では、ヒュウガとその一派の『妖魔召士』達が目隠しをされた上で手足を拘束させられていたが、猿轡をしていない為に自由に話す事は出来ている。
そこで新たに入ってきた『テツヤ』と『タケル』が『ヒュウガ』に対して、このサカダイの町で入手した情報を余すことなく伝えていた。
「成程。妖魔山の管理権は『ゲンロク』の里に居る時から、ミスズ殿達の話を直接聞いて知ってはいましたが、まさか『コウヒョウ』に居るとかつての情報にあった『イダラマ』とその護衛の『予備群』達も同志を集めて『妖魔山』へ向かっているとは思いませんでした……」
「はい。どうやら『イダラマ』が今回の『妖魔山』の一件に関して、大きく絡んでいるとみられております。妖魔退魔師総長のシゲンに『妖魔山』の管理権をゲンロクから移すように話を持ち込んだのも『イダラマ』だと間諜の間ではすでに真実に近い噂として出回っておりますし、それも自分達が『妖魔山』へ入る為に、ワザと監視の目を逸らす為に『妖魔退魔師』組織を動かしたとも考えられます。更にはヒュウガ様が一派を引き連れて『妖魔召士』の組織と分断させるのを利用しようと模索したのも『イダラマ』だと……」
「それは違う！ 私がゲンロクの元を離れたのは私自身の意思からくるものだ！ イダラマに利用されたのでは決してないという事は断言しておく！ 以後口に気をつけたまえ！」
「こ、これは……、失礼致しました！！」
「失礼をいたしました！！」
「「……」」
ヒュウガの唐突な怒号によって報告を行っていた『二人』の妖魔召士は慌てて謝罪を行い、その周りに居たヒュウガ一派の者達もヒュウガが利用されたと疑われた事で、話を聴いていた者達の中には、腹立たしそうに食いしばっている者も居るのだった。
その中で『チアキ』と『キネツグ』だけは冷静に『ヒュウガ』と『テツヤ』達の話を聴いているのであった。
どうやら彼らはもう『ヒュウガ』に心酔して信者のようについて行こうという気はサラサラなくなっているようで、とくに『チアキ』の方は、もし許されるのであれば一派を抜けて田舎へ帰りたいと思っている程であった。
（うう……。ヒュウガ殿についてこなきゃよかった。あの時『旅籠町』で捕縛されなければ、いや、それどころか『煌鴟梟』とかいう奴らのアジトに行かなければ、あんな恐ろしい目に遭わなくて済んだのに！）
手足を拘束された状態ではあるが、チアキは『ヌー』の『実験』とやらに付き合わされた事を思い出して全身を震わせるのだった。
（田舎に帰りたいといえば、あの旅籠町に居た『予備群』の女は、もう田舎に帰ったかな……）
現実逃避を続けようとチアキは『旅籠町』でコウゾウに寄り添うように行動を共にしていた『予備群』の『シグレ』を思い返すのであった。
その『予備群』の『シグレ』が、彼女と同じ建物に居るという事を未だ知らずに――。
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