1434.興味を失った者の目
※加筆修正を行いました。
妖魔退魔師の本部の『シゲン』の居る部屋では『交渉』を行ったイツキが、シゲンと再び交戦を始めていた。
「ば、化け物め……!」
しかし『金色の体現者』同士にして『瑠璃』と『金色』の二色の併用を行う者同士であっても『シゲン』と『イツキ』には、誰がどう見ても埋められない差というものが存在していたのであった――。
すでに戦闘によって全身がズタボロの状態の『イツキ』と、無傷のままで片膝をついているイツキを見下ろす『シゲン』。
「もういいだろう? お主が『仲間』に対して思う気持ちが本気だという事は伝わったが、我々は『ヒュウガ』殿をお主に殺させるつもりはない。そしてここまで戦った事で私はお主の『力量』というモノを完全に把握した。残念だが、今のお主ではこの私に勝つどころか本気を出させることも出来はしないだろう。もう諦めたらどうだ?」
シゲンはそう告げると刀に宿している『瑠璃』のオーラを『天色』のオーラに変えるのだった。
「ふんっ……! 冗談じゃない、諦めろだと? トウジの仇を討てるのが俺以外に誰が居るっていうんだ! ヒュウガは俺を誘い出す為に、アイツを利用した挙句に用が済んだらぼろ雑巾のように扱い殺しやがった! あ、あいつに『煌鴟梟』を託したのは俺だ。そしてその俺のせいでアイツは利用されて殺されたんだ……! ゆ、許せるはずがないだろうが!!」
自分以外にアイツの仇を討てる奴はいないと、そう啖呵を切って『イツキ』は両の腕に『魔力』を伴わせる。
――僧全捉術、『』。
それは『魔力』を波状に放出する『魔波空転』と呼ばれる『最上位妖魔召士』達が使う捉術に近いものであったが、当然『イツキ』はそんな『捉術』の存在を知らず、自分が思い描いた新術のようであった――。
当然シゲンも初めて見る『捉術』に僅かにそちらに意識を向けられたが、静かに『瑠璃』で纏わせた刀の切先を向けると、何やら静かに呟き始める。
次の瞬間、シゲンに向かっていった『イツキ』の捉術の魔力圧のようなモノが、そっくりそのままの速度で術者のイツキに向かっていくのであった。
「ま、またかよ!!」
すでにここまで何度もあらゆる攻撃をシゲンに向けて行っているイツキだったが、その全てが『遠距離』『中距離』のモノであろうが跳ね返されているのであった――。
「くっ、くそっ!!」
イツキが前転しながら自分の『捉術』の魔力圧のようなモノを回避してみせるが、身体を起こした目の前にはすでにシゲンが刀を持ってきていた。
「諦めろ。お前では俺には勝てぬ……」
「だ、誰が……っ!?」
イツキの目の前に居る『シゲン』を睨みつけようと目線を上げたイツキだったが、そのシゲンの目を見た瞬間にイツキは息を呑んで背筋を凍らせた。
イツキを見下ろす彼の目は、まるで興味を失った者に対する失望がありありと表れていた。
しかしこれ以上攻撃に踏み切ろうというのであれば、その時はもう容赦はしないと彼の冷酷な目を『イツキ』は感じ取ることが出来たのであった。
これまでイツキとて『煌鴟梟』のボスとして、そして『退魔組』の頭領補佐の立場で数多くの『退魔士』やあらゆる権力者に力を有する者たちをその目で見てきたが、この目の前に居るシゲンはその誰よりもどす黒い目をしていた。
あの『ソフィ』という化け物も恐ろしいと感じたイツキだが、このシゲンもまたその『化け物』に負けず劣らずの『化け物』だと感じ取ったようである。
「ふっ、まぁいい。どちらにせよ、ここまでのようだからな」
そういってシゲンが視線をイツキから部屋の入口の方を向けると、刀に纏わせていた『青』のオーラを消して腰鞘に戻すのであった。
イツキも釣られるように視線を入口に向けると、そこにはソフィやヌー、それに妖魔退魔師の副総長の『ミスズ』の姿があった。
「ば、馬鹿にするなよっ! 勝手に終わらせてんじゃねぇっ!!」
イツキはソフィ達に向けていた視線をシゲンに戻すと、再び『金色』を纏い始める――。
そして右手に『瑠璃』のオーラを纏わせると、可視化出来る程の『魔力』を込め始めるのだった。
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