1427.退魔組の隊士と煌鴟梟の残党
※加筆修正を行いました。
「お主の話は『妖魔山』の調査を行う我々にとっては、非常に有意義な話であった。それは組織を預かる立場に居るこの私が保証しよう」
イツキがこの場に再び戻されてから『ソフィ』という魔族について『特異』であると判断された『力』の事や、実際に彼が直接手を合わせた時の感想。
更には目の前に居る『シゲン』とも戦った事で得られた『イツキ』にとっての比較の結果など。
直接本人の口から得られた情報は誰が何と言おうと『シゲン』にとってはとても貴重なモノであったらしく、非常に満足といった表情で頷きながらそう口にするのだった。
「こっちも先に『交渉』の一件で約束を守ってもらった立場だからな。役に立てたようで何よりだよ。それで今後の事なんだが……」
「分かっている。当面の間は『退魔組』の連中を入れていた部屋の『牢』に入ってもらうが、お主の我々に対する協力は非常に好意的であった事に加えて、実際に有益な情報を齎してくれた事を踏まえて、今回の調査が終わればお主も他の『退魔組』の者達と同様に条件付きではあるが釈放させるつもりだ」
シゲンの言葉を聴いたイツキは、目を丸くして動きを止めるのだった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! そ、そんな必要はないよ。俺も頭領の『サテツ』様と同じ処遇でいい。他の『妖魔召士』達の居る『牢』へ移してくれ!」
「……」
シゲンは訝しがるように椅子に座ったまま、姿勢を正して身体の前で手を組み始めた。
「何故?」
「そ、それは……」
それは当然の疑問であった。
イツキは直接『ヒュウガ』の一件には絡んでいないとはいっても『退魔組』の頭領補佐である為、本来であればイツキの言うように『ヒュウガ』達と同様の『牢』行きなのである。
しかしシゲンは『交渉』の件を含めてイツキの罪を軽くしてやろうと提案してくれたのである。
だが、その提案に対してイツキは喜ぶどころか焦ったように、他の捕縛している者達と同じ処遇に変えてくれと告げているのであった。
流石に何か裏があると考えるのは誰であっても考えるだろう。
当然の疑問を口にされたイツキは、口ごもるのであった。
だんまりを続けるイツキだが決して彼も馬鹿ではない。
ここまでシゲンに対して質問された言葉をほぼノータイムで反応を返していたというのに、今回はここまで長く歯切れ悪く、さらには口を閉ざしてしまっている。
下手に言い訳をしたところでこの総長シゲンには、余計に怪しまれるだけだろう。
彼は下げていた目線を上げて視線をシゲンに向けて口を開く事にするのであった。
…………
そしてシゲンの問いにイツキが答えようとした頃。
サシャの説明を受けている『退魔組』達の居る部屋では、結局『ユウゲ』が他の『特別退魔士』や、その護衛の『ヤエ』達の言葉に説得されて『牢』から出る事に決めるのであった。
(結局出る事を選んでしまったが、あのまま残っていたとしても『イツキ』様と同じ『牢』に入ることは出来なかったであろう。そう考えるならば一度『自由』を手にする身となった方が、イツキ様の元に戻れる可能性は高くなる。だからこれは仕方なく離れる事になっただけだ。ワシはイツキ様を裏切ろうとしたわけではない……!)
こうして『退魔組』からは残る事を希望する者は居なくなり、全員が『妖魔退魔師』の本部の施設から出る事となったのであった。
退魔組の者達は監視下に置かれる事になると理解していても一定の『自由』を得て外に出られると分かり、嬉しそうに本部の廊下を妖魔退魔師達に先導されて歩いていく。
当然その中には『ユウゲ』の姿もあった。
そしてその『ユウゲ』が外に出る寸前に、元『煌鴟梟』の『ミヤジ』の姿があった。
どうやら『牢』を出た後に『退魔組』の者達とは違う別の部屋で同様に説明を受けていたのだろう。
ミヤジの背後から妖魔退魔師の恰好をした女性がミヤジとサノスケを連れてこの場にやってきていた。
そしてミヤジは『ユウゲ』の姿を見ると、嬉しそうな表情を浮かべるのだった。
「な、なぁ? もう俺達は自由なんだろ? ユウゲ殿のところへ行ってもいいか?」
ミヤジがその背後に居る妖魔退魔師の女性に声を掛けると、その言葉にその妖魔退魔師は『ユウゲ』を見た後に軽く頷くのであった。
「ええ、構いませんよ。しかし先程も話をした通り、貴方がたには今後監視がつきますので、その点はご留意くださいね?」
「ああ! 分かってるって!」
そう言って『ミヤジ』は『ユウゲ』の元へと駆けて行った。
「貴方は一緒に行かないんですか?」
その女性の妖魔退魔師は『ミヤジ』の背中を見ていたが、やがて視線をもう一人の『煌鴟梟』に属していた幹部の男に声を掛けるのだった。
「ん? ああ……。もちろん自由の身にはしてもらうが、俺はちょっと事情があってな。ヒノエって組長さんと会う予定があるんだ。安心してくれよ? すでに約束は取り付けているからよ」
「……ヒノエ組長と約束? ほう? そうですか」
サノスケの話を聴いたその女性は、これまでとは目つきが変わって眼光を鋭くさせるのであった。
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