1426.恵まれた機会
※加筆修正を行いました。
目の前で思案顔を続けているイツキを見ながら『シゲン』もまた、ソフィの『特異』について考えていた。彼がイツキに『交渉』を許す程にソフィの強さに執着するのには当然理由がある――。
――それは『妖魔山』の奥の化け物たちの棲家と呼べる『禁止区域』の調査を行う為である。
『禁止区域』に至るまでにも『黄雀』や『王連』といったランク『8』に至る妖魔は存在しており、過去の『妖魔召士』達も『妖魔山』全域の全貌を明らかにしようと試みた事はあったが、それでも『禁止区域』とされる場所以降はこれまで一度足りとも明らかにはなっていはいない。
ノックスの世界の歴史の中で一番『妖魔山』の『禁止区域』の幅を狭められたのが、前時代の『シギン』という妖魔召士が居た時代とされている。
この時代の『妖魔召士』組織は『シギン』以外にも『サイヨウ』『イッテツ』『コウエン』『ノマザル』と呼ばれる『最上位妖魔召士』が名を連ねていた。
この時代の『最上位妖魔召士』の魔力は全員が桁外れであり、今の『最上位妖魔召士』とされている『ゲンロク』や『ヒュウガ』に『エイジ』であっても前時代の『最上位妖魔召士』と比較すればやはり劣ってしまう。
(※但し当代の『最上位妖魔召士』の中で『イダラマ』だけは、独自に編み出している『新術』によって、その力量は計り知れないとされており『はぐれ』の『妖魔召士』とされてはいるが、ゲンロクもヒュウガも『イダラマ』だけは、前時代の『最上位妖魔召士』並に侮れないと判断していた)
今でもこの『妖魔召士』達が最前線で戦い続けていれば、先に挙げた当代の前線である『ゲンロク』達は『上位妖魔召士』クラスに一つ落とさねばならないだろう。
しかしそれは名を挙げた今の時代の『妖魔召士』達が不甲斐ないというワケではなく、過去の『ノックス』の世界の歴史を遡って考えても『前時代』の『妖魔召士』組織は特例といえる者達が集っていたのである。
そしてそんな最精鋭の『妖魔召士』達が揃っていた前時代でさえ『禁止区域』の全貌を明らかにする事は諦めたのである。
それも伝え聞いた話では、たった一体のランク『9』の妖狐を一目見ただけで『ゲンロク』は戦意を喪失して逃げるように『禁止区域』を去ったというのである。
この話は『コウエン』の護衛をしていた先代『妖魔退魔師』から『シゲン』が聞いた話であった。
後日『コウエン』が曰く、あんな化け物を目の当たりにしたならば、若かりし頃の『ゲンロク』では逃げ出したくなるのも理解が出来ると告げていたらしい。
つまり未だかつて明らかにされていない『妖魔山』の最奥の『禁止区域』では、ランク『9』クラスの妖狐が居る事は間違いないだろう。
それもそのランク『9』の妖狐が一体だけなのか、それとも他にもランク『9』の別の妖魔が居たのか、はたまたその上に居るとされる『10』に到達している『妖魔神』の存在も眉唾ではなく、本当に存在しているのかもしれない。
この『ノックス』の世界で『妖魔』が確認された最初の場所が『妖魔山』とされており、これだけ歴史が進んだ今となっても全貌が明らかになっていない以上、相当の存在が君臨し続けているのは間違いはないだろう。
どれだけ力量を有していたとしても機会がなければ『妖魔山』に入る事は許されない。
更にいえば人間の寿命が百と少しと言われている以上は、機会に恵まれたとしても動ける年齢でなければ意味がないのである。
――しかし、幸か不幸か当代の『妖魔退魔師』組織は、その『妖魔山』に入る事の出来る『管理権』を得る機会を手に入れた。
その要因となったのは『イダラマ』達の一声があったからに他ならないが、元々この計画が浮き上がってきたのは大魔王『エヴィ』という存在があったことで『イダラマ』が動き、結果『シゲン』の時代に『妖魔退魔師』組織が『管理権』を得る事になったといえるだろう。
『妖魔山』の『禁止区域』が定められてから数百年以上が経つが、この『妖魔山』の管理権を得た『妖魔退魔師』組織が歴代最強と呼び声高い『シゲン』総長が居る時代だった事は、運命の悪戯なのだろうか――。
この好機を得た『シゲン』が、この機を逃す手はないと判断して『ミスズ』『スオウ』『ヒノエ』『キョウカ』という妖魔退魔師組織の『副総長』と『組長格』を自らの揃えられる最高戦力で『妖魔山』に挑もうとするのは当然であるといえるだろう。
――そしてシゲンにとっては『金色の体現者』であるイツキにさえ『化け物』と言わしめた『魔族』である『ソフィ』の存在こそが、重要となるだろうと考えているのであった。
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