1421.扱いに困る
※加筆修正を行いました。
「お、おい、何だよ? いきなり、そんな顔をしやがって……」
まさかサテツの口から『感謝の言葉』を聴ける事になるとは思ってもみなかったイツキは、流石に演技抜きで本当に驚いた顔を見せるのであった。
「あ、い、いえ……。そ、そりゃ、さ、流石に驚きますよ! 長い付き合いになりますが、私にお礼の言葉を下さったのは今回が初めてじゃないですか!」
「そうだったか? まぁ、なんだ……。今はお前しかいねぇから現実的な事を言うが、俺達はヒュウガ様が捕縛されちまった時点で終わりだ。本当なら『退魔組』の退魔士だけじゃなく、部屋住みだった連中の未来も摘まれるところだったのをお前が『交渉』とやらをシゲン殿と行ってくれた事であいつらは自由になれた。俺は頭領だっていうのに、結局何もアイツらの為にしてやれなかったからよ。お前が居てくれて本当によかったと思ってよ。だから最後に言っておこうと思っただけだ。ま、まぁいいじゃねぇか。気持ち悪いと思ったなら、お前もさっさと忘れやがれ!」
どうやら指摘されたことで今頃照れがきたのだろう。
どかりとその場で座りなおしたサテツは、そのままそっぽを向くのであった。
(何だよ。こっちが覚悟を決めてこの世を去ろうかって時に、余計な感情を与えてくれるなよ。決心が鈍りそうだぜ……)
実はイツキは自分が助かる算段があって『ユウゲ』達の身代わりになりに戻ってきたわけじゃなく、ある『目的』の為だけに戻ってきたのであった。
その『目的』の達成をする頃には、これまで彼が優先的に考えてきた『自由』は遠ざかる事になるだろうが、それでも彼は成し遂げなければならないと考えたのである。
…………
「――という事で『ソフィ』殿の『結界』は相当なモノのようで、この本部全域に『結界』を張るのは相当の危険性を伴う為に、一箇所に『ヒュウガ』殿達の一派を全員を集めてその『牢』に限定して『結界』を張る方がいいかもしれません」
イツキを『退魔組』の方の『牢』に案内し、牢に居た『ユウゲ』を含んだ『退魔組』の者達を『二組』の副組長『サシャ』に任せた後、ようやくシゲンに『結界』の事を伝えられたミスズであった。
報告を受けたシゲンは、その提案に対して眉を寄せて難色を示すのだった。
「お前は本気で『ヒュウガ』殿を含めた『妖魔召士』全員を一箇所に集めようというのか?」
魔瞳を使わせないように目隠しを行った上で手足を縛るとはいっても、あれだけの『魔力』を有する『妖魔召士』達を一箇所に集めれば、何かあった時に一斉に脱走を許してしまいかねない。
それだけ『最上位妖魔召士』というモノは侮れない存在である。
シゲンやミスズ達、それに『組長格』が全員揃っていれば、そんな脱走の心配をする必要はないが、彼らはこの後に『妖魔山』へ向かってしまう。
だからこそ当初の予定では本部全域に『結界』を張るつもりであったのだが、どうやらミスズの報告では、ソフィ殿の『結界』は非常に危険なもので『捉術』を使えなくするという程度ではなく、そのまま『魔力』を奪い下手をすれば『生命』すらも奪ってしまうものらしい。
流石に『妖魔退魔師』達も『瑠璃』や『天色』といったオーラを使うには多少の『魔力』は必要となる。
ヒュウガ一派達だけではなく、この『サカダイ』の本部に『妖魔団の乱』のような襲撃が起こるような、緊急事態があった場合に残っている『妖魔退魔師』達がオーラを纏えなくなる可能性を考えれば、ミスズの言う通りに一箇所に『妖魔召士』達を集めて居た方が、そういった異常事態に対する対応の面では最善であるといえるだろう。
しかし冒頭にも述べたが『ヒュウガ』を含めた一派全員を一箇所に集めるというのは、本当にソフィ殿の『結界』だけが頼りとなる。
もし『結界』を信用しすぎて彼らが『妖魔山』へ向かっている間に脱走が行われでもしたら『妖魔退魔師』組織の信用は地に落ちる事態となるだろう。
この問題は『ソフィ』の使う『死の結界』を何処まで信用するかという話であり、非常にこの『結界』の問題と『ヒュウガ』達の扱いに困ると考えるシゲンであった。
「総長。私はソフィ殿の『結界』に全幅の信頼をおいても構わないと考えています」
シゲンが思案を続けていると、目の前でミスズが真剣な表情を浮かべながらそう告げるのだった。
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